質問と要望で河川課を訪問(2002.5.27)


辰巳用水は慣行水利権であり、許可は間違い。
「許可」なら兼六園の水使用は違法になる。
潅漑面積は激減。水使用の見直しが必要だ。
辰巳用水の所有権は誰にあるか?


 5月23日(木)、辰巳用水と兼六園の水問題にしぼって質問と要望にまとめ、県の河川課をたずね、手渡しました。

 河川課の竹内参事、水野参事に対応いただき、水政担当職員や他の関係部局の職員5名も同席されました。ナギの会側には、辰巳の会の碇山事務局長、技術士の中登史紀さんに立ち会っていただきました。

 私から、この質問にいたる経過と、質問と要望、添付資料内容を説明、早急な回答(1カ月)を要請しました。
 竹内参事は「質問内容が多岐にわたり、他部署に関連することもあり、なるべく早く統一見解を出したい」と述べました。また、水政担当者は「ナギの会のホームページも見せていただき、情報の収集も行っている。『違法だ』と言われていることでもあり、他部局とも調整し回答をまとめたい」と述べました。

 その後、若干の意見交換があり、私から「辰巳用水の当事者である土地改良区から事情は聞いているか? 事実関係として、この場で説明できることは多いはず」と質問。中さんは「農業用水は既得権として保護され、潅漑面積が少なくっていても昔のまま流されている。新しい水を開発することより、農業用水の見直しが絶対に必要だ」と問題提起。碇山さんは「辰巳用水の所有権など、これから統一見解をまとめるというものではなく、即答できるはずではないか」などと説明を求めました。

 水政担当者からは、「土地改良区には個人的な意見として聞いている。これから他部局から意見を聞き、1カ月と期限は切れないが、早急にまとめたい」と述べるだけでした。

 この日、新聞各社、テレビが取材に来ていました。確認出来たのは、北陸朝日が夕方のニュースで放送。翌朝の新聞は、朝日新聞(かなり正確に)、北陸中日新聞(要望を中心に)、北国新聞(短信的に小さく)、に掲載されました。(渡辺 寛@ナギの会)


石川県知事 谷本正憲 様           2002年5月23日
            ナギの会用水研究部会代表 渡辺寛

辰巳用水と兼六園の水使用について
質 問 と 要 望

 昨年3月、犀川の水利につき、8項目の質問させていただきました。これらの質問は、県が保管する資料をもとに検証し、県の水利行政に大きな問題のあることを指摘したものでした。これに対する県からの回答は、具体的に答えることなく、すべて適正・妥当に処理しているとの趣旨で、誠意ある回答とはほど遠いもので、本会は直後に、コメントを作成し、厳しく批判したところであります。
 私どもは、その後も資料収集や調査活動をすすめ、新しい事実や問題の発見を得たので、再度質問をいたします。
 なお、犀川の水利に関する問題は多岐にわたっているため、今回は、辰巳用水と兼六園の水使用に限定し、他の問題については、後日改めて質問させていただきます。

質問1 辰巳用水の水利権は慣行水利権ではないのか?
 辰巳用水は県民の共有財産として、歴史的・文化的に大きな役割を果たし、その流水は、農業潅漑用水、兼六園の曲水、市街の景観、融雪などさまざまに利用されており、観光の上でも重要な要素です。
 この辰巳用水を管理する辰巳用水土地改良区は、昭和42年3月30日、河川法88条等にもとづき、歴史的習慣的な水使用である慣行をもとに、慣行水利権の届出書を提出しています。記載された目的には「潅漑及び兼六園引用」とあり、これは法と道理にそったもので、県民すべての人が納得するものです。この問題については、辰巳用水土地改良区の責任ある方からも「辰巳用水は慣行水利権である」との説明を受けています。
 県は、辰巳用水を許可水利権としていますが、様々な資料から検討すると、許可水利権ではあり得ません。水利権という物権にかかわる権利の問題でもあり、河川管理者として明快なご説明をお願いします。

質問2 辰巳用水が許可水利権ならば、兼六園の水使用は違法にならないのか?
 辰巳用水が慣行水利権であるのは明らかなのですが、県が今後も許可水利権として河川行政にあたるならば、「潅漑期以外は兼六園へ取水する」という「許可水利権」の条件からみて、潅漑期である現在、兼六園の水使用はこれに抵触し不当に水を取水していることになります。
 水利権は「書面主義」といわれ、記載内容がすべてです。「以上」も「以下」もないと解釈されています。ならばこの「潅漑期以外は兼六園へ取水する」という文面からいくと不当な水使用は違法になるのではないかと思われます。明快なご説明をお願いします。

質問3 潅漑面積激減と水使用の調査、水管理の見直しが必要ではないか?
 昭和26年、辰巳用水普通水利組合が土地改良区へ組織変更した際の申請書一式を検討しました。この中の維持管理計画書には、潅漑面積は84町歩(約83.5ha)、必要水量は「拾立方尺/秒」(約0.27t/秒)と記載されています。
 当時から50年以上経過し、辰巳用水の潅漑面積の大部分は宅地化されています。水の必要量と潅漑面積の減少は必ずしも比例しないものの、辰巳用水には、0.7t/秒の水が取水され、潅漑用の必要流量以外は、書面で見る限り兼六園へ取水されるものとなっています。
 兼六園に必要流量は 0.06〜0.08m3/秒程度(兼六園管理事務所説明)であり、辰巳用水に取水される約半分がその他に流されていることになります。潅漑面積が激減していることを考慮すると、辰巳用水の流水の6〜7割が、水利権書面に触れられていない「水」です。
 現在、水利権実務上こうした「水」をどう扱っているのかお聞きします。また辰巳用水に限らず各地の潅漑面積が激減しており、水管理の見直しが必要であると思われますが、ご説明をお願いします。

質問4 辰巳用水の所有権は誰にあるのか?
 辰巳用水という水路全体が水利用のための施設です。この辰巳用水という施設の所有権は誰にあるのでしょうか、おたずねします。辰巳用水の管理者は土地改良区ですが、管理権と所有権は別のものです。現在、この辰巳用水の移設や破壊が問題になっており、所有者を明確にしないでこうした議論が進められるのに疑義を感じています。明快に説明をいただきたいと思います。
                          以 上


要 望 事 項

1、辰巳用水の現状調査をすすめ、水利権実務を根本から見直していただきたい。
 河川管理は水の管理につきます。治水と利水のため、海に至る末端までの状況把握が必要です。多くの用水で更新時に必要な調査はほとんどなされていないのが公文書からわかる現状です。辰巳用水でも必要な調査の上、混乱している水利権実務の是正を要望します。

2、辰巳用水を慣行水利権として水利台帳に記載を求めます。
 辰巳用水は県民の共有財産ですが、管理者の土地改良区の負担は物心両面で深刻です。台帳への記載で県民がその意識を共有することができます。過去の実務実績にとらわれることなく、水利台帳への記載を要望します。

3、河川部局と農林部局との合議で、新しい水利行政を要望します。
 河川管理からする水利権許認可事務と農林行政からする土地改良区への監査監督業務は、一体のものとして為されるべきですが、資料を見る限り合議するルールがありません。農地激減の現状をふまえ、合議の仕組みが必要です。

4、辰巳用水を県の文化財指定に。国の文化財指定へ申請を。
 金沢城、兼六園、辰巳用水は三位一体の歴史的文化財です。昭和55年9月議会で、奥名教育長は「近く文化財指定のために文化財保護審議会に諮問する」と表明していますが、20年以上も放置されています。ダム建設と混同してはならず、早急なる指定への動きを要望します。
                                以 上


添付資料:
 @辰巳用水土地改良区の慣行水利権届出書
 A土地改良区の平成12年4月「更新書類」
 B辰巳用水潅漑面積の変遷地図