わが家のツバメの話をしよう




2002.4.4


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ツバメの話の前に、まずわが家の話を。

20年前、現在の住居・北間町に引っ越してきた。その前は、JR金沢駅近くの古道町(中橋)にいた。子どもたちも小さかった。

家の前と後ろに二つの用水・大野庄用水と鞍月用水が流れていた。次女が3歳になったばかりの5月、裏の鞍月用水に流された。たまたま私が家にいて、一緒に遊んでいた長女の泣く声で飛んでいった。
50mほど下流の溜まりに浮いていた。
息はなく、心臓も止まっている。血の気なく真っ白な顔をしていた。水を吐かせ、マウスツーマウスなる人工呼吸をした。「ウーン」と小さな声を出すと同時に顔に血が戻り、無事生還。

妻と相談をした。ここで子どもを育てられない。危険が多すぎる。郊外に家を探した。たまたま親戚の方から北間町に1軒の空き家を紹介された。昔の農家づくり。がらんとした家にはツバメが出入りしていた。ツバメが気に入って、この家に引っ越した。

子どもたちは、学校から帰ると田んぼへ遊びに出かけ、暗くなるまで帰ってこない。以前は「危ないから外へ出てダメ」が口癖だったから、本来の子どもらしい姿になった訳だ。


さて、ツバメの話をしよう。

毎年、3月末〜4月2日の間にはツバメがやってくる。かなり正確にやってくる。3月中旬になると空が気になる。ツバメが飛んでいないか、と。

ツバメの巣が、わが家には全部で12,3個ある。毎年決まって使う巣もあれば、使わないものもある。立派な巣があるのに、わざわざ隣に巣を作って子育てするのもいる。例年で5つほどの巣が使われる。多い年で30羽、少ない年でも10羽が新しく巣立つ。巣から落ちて死ぬのも、毎年数羽はいる。



ある時、これらの巣を見ていて、疑問がわいた。毎年やってくるツバメは前年と同じツバメなのか?
それとも育った子どもなのか?
特定の巣に来るツバメは、前年のツバメとはどんな関係なのか。同じツバメか?
別のツバメか? 育った子どもか?

鳥の専門の方に聞いた。
「面白いね。足輪をつけて来年を待とう」

その方が、簡易的にアルミ缶で色別の小さな足輪を作った。いつも来る巣にいたツバメで実験だ。親には黄色、子どもに赤色の足輪をつけた。1997年のことである。※注

8月中旬、2度目の巣立ちを終えてツバメ達は消えた。河北潟の葦原のねぐらで集団訓練を経て、8月末南方へ旅立つ。次の年を待った。

翌年、この巣にツバメがやってきた。黄色の足輪を付けている。親ツバメだったのだ。それを確認したときは、感動的であった。二羽が巣におさまったが、一羽だけが足輪をつけている。どうも相方は替わっているようだ。この黄色足輪は毎年やってきた。

 


写真のツバメは翌年、1998年3月30日に来たのを撮ったものである。雄か雌かわからない。このツバメは2000年までやってきた。1997年以前2年は同じ巣に来ていたから、同じツバメだとすると、1995年〜2000年の6年、わが家へやってきたことになる。

ここで、疑問が一つわく。赤い足輪の子ども達はどうなったか? 赤い足輪のツバメは、全くわが家周辺で見かけない。

鳥の専門家に聞いた。
「ツバメにかぎらず、野生の鳥は、近親交配を避けるため、子どもを生まれた巣の近くに寄せない」と。
なるほど、合理的な話である。もう一つ、大きな理由がある。
「野生の鳥は、子どもが巣立つと同時に、エサを奪い合う敵となる。追い払う」
壮絶な話だ。わが家の小さな、かわいいツバメから「野生」を教えられる。

赤い足輪のツバメを見かけたら連絡お願い!
わが家から巣立った、ツバメを捜しています。

金沢市からだんだんツバメが少なくなっている。日常的に玄関を開ける家が少なくなって、巣を作る場所がない。カラスが増え、生息環境が厳しくなっている。
わが家で巣立ったツバメはどうなっているか。赤い足輪をつけたツバメは5羽いる。ツバメを見たら足を見て欲しい。

ツバメが少なくなっている議論で、見逃されている論点が一つある。ツバメは、日本では夏鳥だが、南方のフィリピンやインドネシアでは、冬鳥で森林の鳥だ。
近年、日本などの資金によって森林の消滅が激しく、ツバメの棲息に影響を与えている。こうした点もきちんと考えておきたい。

※注
鳥などを捕獲するのは、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」によって禁止されています。
今回の「ツバメ帰巣調査」の足輪などは、「学術研究など特別の事由」として適用除外の許可を受けなければなりません(法12条)。
この件について、アドバイスもいただき、知識も蓄えました。
ところでこの法律、保護と狩猟が一緒になっているんですね。鉄砲で鳥を撃つのは、この法律で規定されていて、「狩猟免許」というのがいる。発行は知事。甲乙丙(銃器〜空気銃)の3種類がある。
大正7年に出来た法律でカタカナ文。読んでもスッと頭に入りません。自然環境保全、野生動物保護など、一般民間人が係るのだから、現代文に訂正してほしいですね。民法などもそうですが、昔々の法律が昔の表現のままというのはどうも納得できない。法曹界の保守性っていうのでしょうね。昔からよく話題になっていますが進んだというのは聞いたことがない。


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