辰巳用水土地改良区の慣行水利権届出書
以下のものは、辰巳用水土地改良区が、昭和４２年に届け出た「慣行水利権の届出
書」である。
辰巳用水は許可水利権なのか、慣行水利権なのかの基本に関わる基本資料である。
土地改良区のこの届出書により、辰巳用水は慣行水利権であることは法的に確定して
いるはずなのだ。（県は辰巳用水は許可水利権としているが、この混乱は別ファイル
で解説する。）
昭和４０年４月に施行された河川法は、第８８条で、慣行的な水利用を許可水利権
と同等な権利（みなし水利権）とし、建設省の通達で法の施行後、２年以内に届け出
るよう指導していた。
しかし、届け出がなくとも、実態として慣行的な水使用がある場合は、慣行水利権
と認められ、裁判などでも判例として定着している。
なお、金沢市の中心部から取水されている「大野庄用水」は、届出書がないにもか
かわらず、県の水利台帳には慣行水利権として記載されている。
郊外の山村には、河川の小さな支流から水田や畑作に使っている例は多い。これが
長期間使われ、社会的に認知されていれば慣行水利権として成立する。日本中に届け
出のない、慣行水利権が実にたくさん存在するのである。
以下は、届出書の内容である。（原文コピーはこちら）
------------------------------------------------------------------------
届 出 書
昭和４２年３月３０日
石川県知事 中西陽一 殿
届出人 住所 石川県金沢市小立野3丁目4番23号
氏名 辰巳用水土地改良区 武田與一郎
河川法第８８条 河川法施行法第２０条第２項の規定により次のとおり届け出ま
す。
事業の沿革
本用水は、寛永９年（今から約３４０年前）前田利常の時代に石川郡犀川村上辰
巳地内雉というところより取水してゐたが、後犀川の川底が自然低下し、取水が困
難となりたるため約１１０年前に現在の東岩へ付替したもので開さく当時より辰巳
用水と称して金沢城に水を引入れてゐたが、明治４年廃藩置県と同時に民間に開放
され、旧崎浦村の大半と犀川村の一部の耕地に引水し、一部は兼六園に引用され、
又金沢市の防火用水として重要な役割を果たしてゐる。又明治３６年辰巳用水普通
水利組合を設立したが、当時のかんがい面積は明らかでないが、１２０町歩と聞い
てゐる。昭和２７年４月土地改良区の設立認可を受け、辰巳用水土地改良区と改組
した。昭和３０年頃より流域の宅地化が進み、現在では、かんがい面積は約６０ヘ
クタール、関係農家は１９９戸である。
尚用水の取水は自然流入であるが、近年急げきに才川の川底が下がり自然流入が
困難となったので取入口下流に蛇かごを以って堰を造りかろうじて取入をしていゐ
る。
事業の現況
本組合は、金沢市の上辰巳町、辰巳町、末町、大道割、涌波町、三口新町、上野
本町、笠舞町をかんがい区域とする土地改良区であり、そのかんがい面積は約６０
ヘクタールである。主として表作は稲作であるが、裏作として、そさい類を栽培し
てゐる。かんがい期は４月１０日から９月１０日までであるが、その内しろかき期
は、４月２５日から２０日間である。毎年ではないが、小雨の年には水が不足する
事があるので才川水系用水と番水を行うことがある。
かんがいの方法としては、才川より取水した水を幹線水路より各部落管理の支線
に送り、各田に供給し、かんがいを行ってゐる。残水は各排水路より才川に自然排
水してゐるが、幹線水路の残水は金沢市内を縦断して堀川町より浅ノ川に自然排水
していゐる。本用水は非かんがい期でも兼六園及び防火用水として平常通り水を流
してゐる。
施設名
辰巳用水
流水占用の目的
かんがい及兼六園引用
取水口等
名種又は種類 辰巳用水取入口
河川名 犀川右岸
位 置 石川県金沢市上辰巳町１２の２７番地先
取水量等
通常は、自然流込みにより取水するが、渇水によって取水が困難となれば取入口
に附近の川石を並べてむしろをあて取水をする。
渇水が甚だしく上記によっても取水が困難となれば、上流の寺津用水と協議をし
て寺津用水のゲートを下げ、才川へ水を流し、その水を取入口より取水する。
通常水量は、０.７０ｍ3(毎秒)である。
工作物及び土地の占用
名称又は種類 辰巳用水水門
工作物の位置又は占用の場所 犀川右岸 石川県金沢市上辰巳町12の27番地先
工作物の構造又は能力
材質＝コンクリート造
断面の形状＝長方形
ゲート＝スルースゲート２門鉄製
２ｍ×０.８ｍベベルギアー手動捲上機付
---------------------------------------------------------------------
トップにもどる ｜ 辰巳用水にもどる