鞍月用水土地改良区の姿


2003.10.8 掲載

 この資料は、戦後すぐに、土地改良法が成立した後、それまでの普通水利組合を土地改良区に改組したときの、組織変更届けに付けられた用水や農地の管理計画書(抜粋)である。
 土地改良法や歴史などは、こちらを参考下さい。
  【法整備の歴史と辰巳用水
  【河川法と水利権の基礎知識


鞍月用水土地改良区 土地改良(維持管理)計画書【抜粋】
(昭和27年3月)

目次
 第1章 地域及地積
 第2章 地域の現況
   第1節 地形
   第2節 気象
   第3節 水利状況
   第4節 耕地面積
 第3章 維持管理計画
   第1節 目的
   第2節 潅漑施設関係
   第3節 排水施設関係
   第4節 他の事業との関係
 第4章 効用
 第5章 事業費
   第1節 事業費細目及びその負担区分
   第2節 資金計画
   第3節 資材及び労務


土地改良区維持管理計画書


第1章 地域及び地積
 本土地改良区の地域は金沢市戸板地区弓取地区の一部及び鞍月地区の大部で、その潅がい面積は下記の通りである。

 地域名 潅漑農地面積
全 地 域 4234反302歩
戸板地区  938 520
弓取地区  708 403
鞍月地区 2587 309

第2章 地域の現況
 第1節 地形
 地形は一般に平坦で、標高は1米乃至5米 金沢市街の北方に位し、北面1/1000内外の自然傾斜で、大野庄用水土地改良区 北は大野川 東は浅野川を以て界とし、市街地を要とする扇状形をなしてゐる。

 第2節 気象
 この土地改良区の地域は、別段特殊な気象上の影響はないが、戦時中犀川上流地域山林の濫伐で夏季早天時は急激に減水し、下流用水との関係で番水を行うことがある。
 一般気象及び特殊気象は別表の通りである。

 第3節 水利状況
 本地区用水の水源は犀川上菊橋上流約1キロに木工沈床を設置して右岸堤防に水閘を設けて取水し用水は金澤市の都心地域を約4キロに亘って流下し、金沢駅の裏で長田分岐と北安江分水とに水路を分ち、本川は廣岡町を経て西念町以北の潅漑水を配給しつつ、下流近岡町、御供田町に至ってゐる。

 第4節 耕地面積
 (1)各地域別田畑一戸当耕作反別

地域名 農家戸数 一戸当耕作反別 備考
全 地 域 4223反018  11反214 501戸 8反407歩 7歩
戸板地区 936 323   2 127 124   7  515   5 
弓取地区 701 723   6 610 85   8  217   23 
鞍月地区 2583 902   2 407 292   8  816   3 


 (2)各地域の一毛作地二毛作地の面積

地域名 水田面積 一毛作田 百分比 二毛作田 百分比 備考
全 地 域 4468反914歩
4223 618
4223反018歩
3777 122 
89% 445反826歩 11%
戸板地区 1001 906
936 323
936 323 
870 811 
93  65 512  7 
弓取地区 771 910
701 723
701 723 
631 606 
90  70 117  10 
鞍月地区 2895 029
2584 902
2584 902 
2274 705 
88   310 127   12 


第3章 維持管理計画
 第1節 目 的
 この土地改良区は定められた改良区の定款及び規約に基いて、犀川取水口より各終点に至る認定水路及び取水用木工沈床を始め、取水口水門並びに管理水路に附随する各施設の維持管理と土地内に於ける潅漑水使用水の公平な分配とをして農業経営を合理化し農業生産力を発展せしめ食糧増産に寄与するを目的とする又前記事業を害しない範囲内に於て、当施設を他の目的に使用させることが出来る。

 第2節 かんがい施設関係(図面別紙添付)
(1)農水取入施設の位置
  本地区の水源は犀川左岸法島町同右岸角場川岸町間に長約150米 巾11米三段式木工沈床を設け、右岸に二枚扉の水閘を設けて取水している。

(2)主なる施設の種類規模及び構造

種類 位置 構造 備考
犀川沈床 法島町角場川岸町間 木造三段式
取水口水閘 角場川岸町 石積扉上降機付
長様用水堰 宗叔町二番丁 木造
 (玉川町水路入り口) 
六枚町堰 古道六枚町  コンクリート造
長田分岐堰 柳町 同上
山王堰 廣岡町 同上


(3)配水の時期及び方法
  犀川取水口よりの取水れは豪雨時と水路浚渫時とを除き、年中とし、最も取水量の多い配水時期は4月15日から8月下旬頃までとしている。その日時は総会の委任を受け、役員会で定める。

(4)干ばつの処置
  干天が続き水不足を来たしたときは分水で潤節し、尚配水困難な時は番水をして時間制の配水計画を実施する。
  
(5)他の農業団体との関係
  地区内各町の農業生産協同組合と連絡を取り配水上遺憾の点がないようにつとめる。

(6)制裁規定
  設けてない

第3節 排水施設関係
(1)排水施設
  この改良区の本流は潅漑期の外、古道で木曳川へ配水し、支流は諸江川 弓取川 近岡川へ各自然排水するので、別段の施設はない。

(2)排水の時期及び方法
  豪雨の時は番人をして取水口を閉鎖せしめ市内の雨水は木曳川へ排水する。

第4節 他の事業との関係
 犀川水系には、同じ目的の土地改良区があって各々潅漑水を本川に仰いでいるので夏季減水時には相当困難な配水計画をせねばならない。従って各土地改良区の代表からなる委員会に依って分水し其の甚しい期間は番水などして水系全体の公平な配水に努める。

 第4章 事業費
  (別紙の通) 1,060,714円也

 第5章 効用
 本改良区の地域は水稲単作地帯で米作を主とする専業農家であるため用水は生活の根元で、水不足については最大の関心を払っている事は云うまでもない。其の増産効用は計算することが出来ないものであるが、水稲のみについて計算すれば、4223反に対し、反当3斗の減産防止とすれば、1,266石9斗の効果が挙げられる。

(後略)