選挙・議会・議員・調査権……などを考える


2003.3.27 掲載

 候補者にも、議会関係者にも注文がある。
 議会のあり方と議員についての考察を示して欲しいと思うのだ。長年、市民活動に関わり、行政へも様々な注文をつけてきた。その中で考えてきたことがある。

その1――――――――――――
議員と一市民には本質的な違いはない! 議決権の有無だけ!


 議会で質疑がある。代表質問や一般質問が行われ執行部が回答する。これらは議員だけの特権なのか? 議会質疑は、議事録として公開されているが、これをよく見ると、質問者も単に思いを語り、答弁もその場しのぎのおしゃべりばかりである。実に低レベルの応答が多い。実はこの質疑応答は、一般市民が役所へ行き、担当者に聞き、説明されることと本質的な違いはない。厳密にしようとするときは、公開質問状を用意し、文書回答をもらう。これも同じである。
 一市民への説明と議員に対する説明が違えば、それこそ問題である。だから質問権は議員だけの特権ではない。
 唯一、市民が出来ないことがある。予算や条例などを決める時の議決行為である。

その2――――――――――――
議会や議員は、行政を監視していない!


「議会は行政を監視する」と一般に思われている。監視は議会の重要な仕事であるが、実は議員だけの特権ではない。一市民も十分可能である。オンブズマンが各地で活躍し、それを証明している。実際のところ、議員や議会よりオンブズマンの活動の方が、監視役をこなしている。40人のオンブズマンがそれぞれ持ち前の知識と活力でテーマを持ち、問題を提起する方がよほど威力がある。
 実際のところ、与党の立場の議員や会派は、まず監視は不可能。議員個人は、あれこれの問題意識を持っていても、会派の縛りがあって追及できないのだ。だから質問もあたりさわりのない表現で終わる。
 野党の立場ではどうか? 重要案件で厳しい質問をしても、かんじんの答弁がのらりくらりだから質疑が成り立たない。ほとんどそれで終わる。執行部の説明責任より質問した自己責任を果たす事後の活動がない。議会報告などで質問・答弁の内容を印刷して、支援者などへ配布するだけである。

その3――――――――――――
議員に調査権はない!


 実は議員個人に調査権はない。議会開会中の質問権はあるのだが、調査権は議員個人にない。唯一、議会の決議でつくられる特別委員会には調査権はある。地方自治法100条に定められている。俗に100条委員会というものだ。
 この委員会で決まればある種の強制的調査権により捜索なども可能なのだが、100条委員会が設置されるのは、極めて特殊な場合である。議員や職員の不正が発覚し、その解明などで設置されるのだが、実際のところ、事件を放置すれば議員への責任転嫁として跳ね返ってくるため、いやいや設置するのだ。次の選挙で点数を稼ぎたいがための党利党略で設置されることが多い。しかしよほどの事がない限り、議会の多数派を構成する会派によって葬られることが多い。このように、多くの人が錯覚しているのが、この「調査権」である。

その4――――――――――――
議会は低俗な素人審議会と化している!


 与党であれ、野党であれ、議会での質疑が低レベルだから、執行部は議案を通すため、のらりくらりに徹する。ようするに議決という手続きを経るためのものだから、ご意見頂戴の審議会と化しているのだ。通常設置される審議会よりも低レベルである。議員といえど個々の問題には全くの素人。通常の審議会は、それぞれの専門家や有識者なる人たちの集団だから、御用機関とよく批判されるが、それなりに知識集団であり、審議会の体を成すものの、議会は審議会よりワケが悪い。本質的議論より、裏の政治的駆け引きが優先しているからだ。この駆け引きに袖の下が絡むと事件になる。事件にならないまでも巷でこうした話はよく聞く。事件にならないのは証拠がないからである。

その5――――――――――――
議員は特権的に行政情報を入手出来ない!


 昨今は、どこの自治体でも情報公開条例を持ち、すべての行政情報もこの条例の手続きに従っている。議員でも例外ではない。昔こうした条例がなかった頃は、確かに議員の立場でしか公文書は入手できなかった。だから必要な情報を入手するため「議員にお願い」という場面がよく登場した。しかし情報公開条例が施行されてから、一市民もあらゆる公文書が入手可能となった。このレベルは議員とて同じである。
 ある議員の声。「最近は要請してもなかなか出てこない。条例をタテに断られるのだ」と。
 情報入手に関しては、議員の特権的立場はなくなったのだ。しかしこの時代の趨勢を知らない議員は多い。圧倒的である。さも自分しか情報をとれないと有権者に錯覚させ、支持者のつなぎ止めと見返りを要求するのだ。これは与野党を含め、ごく普通の議員の姿であり、有権者も議員を特権的な立場の人間として錯覚している大きな要因である。
 また、議員は情報公開について極めて鈍感である。通常、担当職員へ電話一本で資料が出てくるから、一市民が手間と時間、金銭負担をして情報公開を受けることの様々な限界についてしろうとしない。知っても感覚で分からない。多くの議員は情報公開制度を利用して公文書をもらったことなど、恐らくないだろうと思う。

その6――――――――――――
議会・議員不要の流れが加速している!


 各種施策を決定するために議会で議論をし、そのために議員は一般市民の所得以上の報酬を受け、これに足らずに政務調査費と称して「裏歳費」なる報酬も得ている。これに見合った議員活動をやっていない、という市民からの批判は強い。
 欧州やアメリカの州では、「議員はボランティア活動の一環」であるとして、報酬も低額で議会も夜開かれているところもある。日本でも最近、NGOやNPOとの共同作業、各種審議会へも一般市民参加も広がっている。石川県や金沢市でも何かにつけ、NGO・NPOが登場する。
 これは「市民の政治参加」という名目は掲げられているが、本質は「行政執行部にとって、議会や議員を必要としていない」ということである。予算を通すためには議決が必要なため、議会は開かれ議決をしてもらうが、実体はセレモニーである。こうしたことについて議会関係者からの声は皆無である。
 ついでに信用度最低を加速した話を付け加えておこう。議員のレベルは「素人」であるから、議会で質問するとき、どうするのか。自前の政策スタッフを抱え、地道に問題を調査研究をする議員はいる。これが正常な姿がなのだが、どうもそうでない議員も多いらしい。
 飲屋街で酒の肴にされる話を紹介しよう。
「あの先生、この前の質問って○○の××さんに書いてもらったんだって。××さん、上へ言ってもなかなか取り上げてもらえないから、議員を利用するんだって。自分で質問書いて、答弁も自分で書いて――。○○さんって清濁あわせて飲むくらいの器でないとダメなんだって。お互い点数が稼げるからいいんだね。メデタシ、メデタシ」
 ××は個人名。○○は役職名。
 こうして話に花が咲き、たくさんの先生が登場する。酒の注文も進む。店もこれで繁盛。確認しようがないが、怖い話である。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 以上のように、時代の流れと主権者からの問題提起・不満・要望に対し、議会人から本質的な答えや改善努力がなかったため、今や政治家なるものへの社会的評価は最悪である。昨年の朝日新聞による国民世論調査による「政治家の信用度」は、「占い」よりも低い、15%という数字で、最低であった。
 議員や候補者からのご意見を頂戴したいものである。

 以下、参考になるホームページを紹介。

◆ネットジャーナル「Q」
「政治家に愛想を尽かした国民」

 http://www2u.biglobe.ne.jp/~akiyama/no78.htm

◆「地域から政治を変える」戦略の可能性と壁
 http://www.jca.apc.org/ppsg/News/3-5/F03-5-06.htm

◆世田谷区議会会議録 2002年10月18日
議員定数削減条例案への木下議員の反対討論

http://www.ne.jp/asahi/setagaya-kugikai/mutouha-shimin/giji021018_3.htm

◆奈良市の女性市議候補・酒井たかえ氏のホームページ
「虹と緑の500人リスト」メンバー。ホームページも超充実。

 http://www1.kcn.ne.jp/~sakai-ta/

◆下野新聞ホームページ
 特集「地方議員 03統一戦を前に」

 http://www.shimotsuke.co.jp/hensyu/kikaku03/giin/index.html