市民活動が始まる前の議会質疑(1992年当時)



河北潟について、当時議論されていた主なテーマは、河北潟周辺の排水対策、畜産振興策などであった。環境保全や水質問題などは一切テーマとなっていないことがよくわかる。


●平成4(1992)年6月議会 6/23
長井賢誓議員質問―――――――――――――――――――――

 次に、河北潟周辺地排水対策についてであります。
 知事並びに関係者各位に特段の御配慮を賜っていることに感謝申し上げる次第であります。何分にも河北潟周辺地一市三町、金沢、津幡、宇ノ気、内灘では河北潟周辺地の排水の重要性にかんがみ、排水対策促進期成同盟会を結成し、最重要諸対策の推進を課題として取り組んでおり、予算化についてもできるだけの努力をしているのであります。このほど平成四年度には、木越、大浦地区が採択された模様であり、初年度に予算実現の見通しがあって感謝をいたしているところであります。今後引き続き、八田、潟端機場、津幡、宇ノ気と予算化の実現に対して要望するものであります。どうかこれが実現のため知事、農林水産部長におかれましても特段の御配慮を願いたいのであります。

中西知事答弁―――――――――――――――――――――
 河北潟周辺の地域の排水は、言うまでもなく周辺の都市化の伸展によりまして水の流出構造の変化をしていること、また潟周辺の水田の沈下等がございまして、新たな排水対策を必要といたしております。御承知のように、平成二年、三年、全域の調査を実施いたしました。大浦、木越地区が湛水防除事業に採択されたのでありますが、今後、他の地域も順次採択に向けて努力をいたしたいと思います。


●平成4(1992)年9月議会 10/2
藤井肇議員質問―――――――――――――――――――――

 次に、農林水産部関係についてであります。農業植物園の整備に関しましては、本会議においても種々論議をされたところでありますが、構想具体化までの経過、構想の内容について不透明感も否めないことから、再度説明を求めたのであります。これに対し、当初予算で河北潟周辺整備構想策定調査費を計上しており、そのアイデアの一つとして、河北潟の中に生産者向け触れ合いの広場の整備や、農業試験場に隣接して農業植物園のようなものをつくることでスタートをしたが、その中から今回の農業植物園整備構想が出てきたものである。細部については検討委員会で詰めていくことになるが、県有地とする農作物に手ざわりでできる広場、農耕文化の広場のほか、近代的水田農耕のモデル圃場を組み入れることを考えている。なお、河北潟周辺は都市近郊の平地で大規模農業ができる位置づけであり、周辺は圃場整備の機運もあり、大区画の形態モデルにするものであり、二十一世紀へのビジョン、国の方向にも沿うものであるとの説明がなされたのであります


●平成4(1992)年9月議会 9/25
八十出泰成議員質問―――――――――――――――――――――

 次に、河北潟干拓地畜産農家の環境対策についてお尋ねいたします。
 昨年度当初予算に河北潟酪農団地の入植者の希望で肉用牛を子牛の育成から飼育までの一貫生産を目的に、常時五百頭規模の施設を整備するための六千三百万余の予算化をしたのですが、それを受け入れる地元内灘町は、ふん尿処理に対する環境対策が今なお不十分で、住民に説得できないとしてこの事業は流れてしまい、せっかくの酪農家の意欲が生かされなかったのであります。河北潟干拓地における酪農団地の畜産は、当初からふん尿処理、環境対策が大きな課題であり、住居の近い内灘町では、その悪臭に対する苦情が絶えない中で、環境対策を県や酪農団地入植者の人たちに求めてきたところであります。風向きに注意をしながらふん尿散布や微生物の投入、堆肥の発酵促進を励行するなど、さまざま試みているようですが、さしたる効果がなかったのであります。

 さらに、今年度から二カ年かけて酪農団地内の畜産環境美化促進事業を行うための予算化をしてきたところでありますが、いずれも抜本的な環境対策にならないのであります。要はふん尿を脱臭する堆肥化施設の建設以外に解決の道はないのですが、何分にも千三百万余の多額の費用負担を要するこの施設の建設費用を、現在の酪農家に求めることは非常に困難であります。河北潟干拓の酪農家は、酪農経営に夢を抱いて河北潟酪農団地に入植してはや十年超えます。生乳生産量は実に県内の二八%を占め、今や消費者の安定供給に欠かせない存在までなりました。しかし、当初順調だった乳価が大幅に下落したり、最近の牛肉の輸入自由化の影響で酪農経営は逼迫し、加えてことし平成四年、七百六十万、来年平成五年には九百六十万という事業負担の年間償還金がさらに追い討ちをかけ、とても施設の負担どころではないのが実態であります。にもかかわらず畜産物のPR等、酪農団地の存在価値に効果をもたらそうと、地元の人たちと交流を目指したモーモフェスタの定着や、カントリーパパという低カロリー牛乳の販売、新鮮な牛肉の宅配サービスなどの新規事業も手がけて、酪農経営の立て直しと必死に格闘しているのであります。

 乳牛飼養と肉用牛の一貫生産を取り入れ、かつ地元の内灘町がふん尿汚染に心配なくこの事業に協力できるようにするために、一日も早く堆肥化施設の建設に県当局は本腰を入れ、検討していただくよう強く要請するものであります。

 次に、今定例会に提案され、さきの代表質問でも、昨日の一般質問でも取り上げられた農業植物園について、幾つか疑問点をお尋ねをいたします。質問によっては重複することもあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 今年度の当初予算で、調査費一千万をつけた事業計画が、たった半年後の今回の九月の補正で、いかに国の指導とはいえ用地取得費二十億円が計上されるという、かつて例のないような超スピードでの事業計画の進行に、正直言って驚いている者の一人であります。しかし、内容をお聞きしても、どれもあいまいな点が多く、部内外からの意見をもっと広く求め、計画地も含めてまだまだ検討しなければならない事業だと思うのが正直な感想であります。今のままでは用地取得だけが先行、一人歩きをし、初めから計画地の用地取得ありきの計画に思えるのは、私だけではないはずであります。

 以下、具体的にお尋ねいたします。
 一つは、河北潟干拓地との関係であります。水空間二十五ヘクタール、農業手ざわり広場十五ヘクタール、農耕文化十四ヘクタール、計五十四ヘクタールの農業植物園面積は、何も二十億の周辺農地を買収しなくても、河北潟干拓地に約二百十八ヘクタールの未配分地が残っているのであります。それを利用することは、計画でいう干拓農地のイメージアップを図るというのなら、まさに干拓農地こそ適地ではないでしょうか。昨日の答弁で、干拓地での農振除外は難しいと言われましたが、努力せずに時間をかけずに結論を出すのは早過ぎるのではないでしょうか。また、計画でいう農業手ざわり広場と、干拓地でのふれあい農園とは、一体どこでどんな区別がされるのでしょう。どうしてもわかりません。どちらも共通点が多く、河北潟干拓農地だけで十分可能なのではないでしょうか。

 二つ目は、水辺空間での大区画水田についてですが、農業植物園内の稲作大型圃場は、周辺の稲作農業の先導的な役割を担うものだとお聞きしましたが、その場合は周辺農地の土地基盤整備のやり直しが伴わなければ実効が上がらないのではないでしょうか。また、国庫補助事業のシステムでは二重投資のように思われますが、果たしてそのような事業が可能なのでしょうか。具体的な御説明をいただきたいと思います。

 三つ目、なぜ農業植物園が今必要なのかであります。どうしてもこれをやらなければ周辺農業の近代化ができないのでしょうか。聞くところでは、周辺農家のほとんどがいわゆる兼業農家で、生産意欲が余りなく、機会があれば稲作をやめたい人が多いと言われていますし、もし大区画化しても自分たちで耕作せずに委託するとも伺っているのであります。また、日本農業、農耕文化の原点として、手づくりの稲作を誇る観光地輪島の千枚田ならいざ知らず、金沢近郊でしかも大区画化され機械化された稲作や、昨日知事のおっしゃるニンジンや大根の作付を、だれがわざわざ見に来る人がいるのでしょうか。疑問でなりません。失礼ですが、こんな事業に県民の貴重な税金をつぎ込むことよりも、厳しい農業環境にあって、二十一世紀の農業に夢と意欲を持つ人たちに勇気づけるような現実の事業につぎ込む方がより効果的だと思いますが、いかがでしょう。

 四つ目、今般、計画地の用地買収にかかわる周辺農地は、かつて木越町と並んで住宅開発の候補地として話題があった土地でもあります。周辺住民の話からも、この農業植物園の計画は、この周辺土地での住宅開発のなくなったときから既にこの計画が浮上したと聞きますが、過去の住宅開発と、この農業植物園との因果関係を知事、農水部長からお聞かせいただきたいと思います。

知事答弁―――――――――――――――――――――
 次に、河北潟干拓地の畜産農家の営農と地域の環境対策であります。
 特に、内灘町では干拓地の臭気が町の方に風の方向によってはかなり被害があるというふうな、そういう訴えもございます。県としては、堆積処理施設の増設、あるいは廃棄物の有効利用のための有機農業の推進などを図っておりますが、町の方向に向けて若干木を植えましたけど、余り効果が上がってない。これは残念であります。当時、ユーカリ等植えれば臭いは消えるという話だったのでありますが、まだまだ十分ではございません。このこととも承知いたしておきます。
 ただ、酪農家にとってみますと、殊に最近肉牛占めた経営になってまいりました。そうすると、ふん尿が大変ふえてまいりますので、これをどう処理するか、県の予算の重点項目でもあろうかと、こういうふうに考えております。
 次に、植物園の、農業植物園問題でありますが、先日来お答えいたしておりますように、優良農地を持つ金沢北部のスプロール化を防ぐために、この植物園方式は必要だというふうに考えております。ただ、お話にございましたが、機械化された稲作、野菜の作付等について、大区画の農地はどうするのかということであろうかと思いますが、これはもちろん植物園の中ではございません。外のものとしてやっていきたいと思います。農業植物園、我々の命のもとである農業について、もっと一般の人が知り得るように、また気持ちの休まる植物園、時間短縮、労働時間短縮等の受け皿としての植物園、こういうことを考える次第でございまして、単に住宅団地の取り合いの結果じゃないということを申し上げておきたいのであります。