昭和47年作成の犀川の流下能力
「辰巳ダムなし」も想定した河川改修計画


2003.7.19 掲載



【ちょっと解説】
 河川の流下能力の計算は、様々に変化している河川の特徴を反映している地点をいくつか決め、それぞれの地点の堤防、河床、川幅を測量し、計算して求める。様々な計算式がある。
 計画高水(想定洪水)が流れたときの水位と、堤防の高さをグラフ化し、堤防を越えるところから氾濫が起きる。そのため、河床掘削や堤防嵩上げ、川幅拡大などの工事を行い、流下能力を高める。

 この図で分かるのは、これまで言われてきた、「犀川大橋地点は川幅が狭いので、流下能力が低く、ここから洪水が発生する」ということが間違いであることである。犀川大橋地点の流下能力はこの昭和47年の犀川中小河川改修工事によって高くなっている。この計画どおりに工事が完成していれば、の話。

図の説明。
@グラフの上の赤い部分が、左岸と右岸の堤防の高さ。
A赤線の下のダイダイ色は改修後の堤防高。
Bその間のグリーンの線が、計画高水が流れる線。
C一番下の赤くなぞった階段状の線は、完成後の河床高。
  (黒いデコボコ線は、当時の河床高。塗りつぶしは掘削計画)
D図の真ん中あたりに飛び出ている山のトンガリが、犀川大橋地点。
 当時は、河床もトンガリ状態で、堤防も高い。
Eグラフ右方に、堤防が基本高水の線より落ちこんでいるのが最大の危険個所。下菊橋付近。
F犀川大橋地点で、計画高水は1250t/sec。

 この時点で、辰巳ダム計画も入っている。辰巳用水破壊という大問題があるので、「辰巳ダム築造不能の場合」の次善の策も用意している。図面の左上の枠に、次のように記載。

流量表(単位 m3/s)
流量区分
ケース Qa
港橋
Qb
三ツ寺橋
Qc
示野橋
Qd
犀川大橋
1 1/2確率高水量 720 630 610 420
2 計画高水量 2420 2140 2070 1250
3 辰巳ダム築造不能の場合の基本高水量 2760 2660 2360 1630

堤防とは―― (次のような定義がある)
 堤防とは、流水を一定の流域内に限定して流下させ、その区域外にはんらんさせない目的のために土砂などで築造した、最も重要な河川工作物である。その築造位置や形状により、本堤、副堤、霞堤、輪中堤、瀬割堤、横堤、羽衣堤、越流堤、導流堤、締切堤、逆流堤、といった分類がある。(「図解 河川・ダム砂防 用語辞典」)

これは何?
 犀川や浅野川に沿って、道路があるが、道路の脇に、立っているコンクリートの壁は、堤防と言わない。これは「パラペット」とよび、堤防の高さに含めないのだそうだ。

パラペットとは――
 parapet wall 河川の堤防上にパラペット構造をもったものがある。このような堤防は特殊堤と呼ばれるものの一つであり、市街地など堤防の敷幅が十分に得られないような場合にやむを得ず用いられる。この場合、計画高水位までは盛土を行い、その上に余裕高部分がパラペット構造となるように河川管理施設等構造令で定められている。(「図解 河川・ダム砂防 用語辞典」)

犀川のパラペット
 犀川の脇の道路にあるパラペットは、かなり昔からあった。昭和47年以前からあったようだ。となると、流下能力を検討したS47年当時、このパラペットをどう扱ったのか、この図面ではよく分からない。
 犀川の景観にも影響している、このパラペットを、犀川水系河川整備検討委員会は、どう考えるのだろうか?