2002.7.27
金沢市情報公開審査会
多数の非公開文書の公開を答申
 95%の勝訴! だが問題点も多い!

 今回出された、情報公開審査会の答申を以下に掲載します。
 市長が昨年、非公開処分をした黒塗りの文書の多くが公開すべきとされたもの。
「95%の勝訴」といってもよい結果であるが、公開すべきとの理由には様々な問題点が含まれている。保護審査会が公開の基準を明確しなかったことによって、新しい問題の発生が懸念される。これは、昨年改正された現行の金沢市情報公開条例の持つ弱点でもあるが、今回の答申は、行政側の恣意的な情報公開事務への歯止めにはならないだろう。
 7〜8回開かれた審査会で、市の幹部への事情聴取はあっても、請求者である私へは一度もなかったことからも平等公正な審議が行われたのか?という疑念も起こる。
 公開理由の多くが、「6〜8年も経過したから公開しても支障がない」というものであるが、新しく入手した文書をみても、作られた時点で公開されても全く問題がない資料が多い。当時にすれば、いわゆる組織共用文書にあたるもので、事業推進する立場であったとしても積極的に公開すべきものが多い。

 この答申の結果、裁判に訴える道が唯一残されるのだが、市民にとって、行政にとって、情報公開制度の発展にとって、どうすべきなのか? 時間をかけ検討を進めていきたいと思う。

 以上、答申の評価について概略を記したが、詳しくは、記者クラブでの席上でおこない、後日内容を別ファイルで掲載します。評価のコメントはこちらへ
 (異議申立書市長弁明書反論書も参考のこと)
 

 では以下、情報公開審査会の答申全文。
   ――――――――――――――――――――――――――――――――――
                            情査答申第12号
                            平成14年7月8日
 金沢市長 山出 保 様
                            金沢市情報公開及び
                            個人情報保護審査会
                            会長 鴨野 幸雄(印)

    行政情報の―部公開決定に対する異議申立てについて(答申)

 平成13年4月17日付け発企第2号により諮問された諮問第11号について、下記のと
おり答申します。

                   記

1 審査会の結論
  本件異議申立ての対象とされた実施機関の決定のうち、別表に記載した部分を非公開と
 した決定は妥当であるが、その余の部分は公開すべきである。

2 公開を請求された行政情報等
 (1) 公開を請求された行政情報
   過去の金沢市と石川県との間で開かれた辰巳ダム問題の協議会内容の分かる資料

 (2) 公開された行政情報
  ア 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成4年11月10日)
  イ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成5年1月12日)
  ウ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成5年3月19日)
  エ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成5年11月10日)
  オ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成7年9月8日)
  カ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成8年3月8日)
  キ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成8年6月11日)
  ク 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成8年11月29日)
  ケ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成9年5月29日)
  コ 辰巳ダム連絡調整会議報告書(平成10年7月15日)

 (3) 非公開とされた部分
  ア 2(2)アの文書中「地元要望について」及び「意見交換」
  イ 2(2)エの文書中「工程」及び「上水道敷設の課題」
  ウ 2(2)オの文書中「県から進捗状況報告」、「上水道関連(企業局縁節改良課
   から報告)」及び「農村環境整備課報告」
  エ 2(2)カの文書中「上流4町(寺津町、駒帰町、熊走町、城力町)の地元要望に
   ついて」
  オ 2(2)ケの文書中「辰巳ダム建設事業関連地元要望事項」の―部
  カ 2(2)コの文書中「辰巳ダム建設事業関連地元要望事項」の―部

3 異議申立ての趣旨及び経過
 (1) 異議申立ての趣旨
   一部公開処分の取消を求める。

 (2) 異議申立ての経過
  ア 平成13年2月8日
   異議申立人から金沢市長に対し、金沢市情報公開及び個人情報保護に関する条例
   の―部を改正する条例(平成12年条例第63号。以下「改正条例」という。)に
   よる改正前の金沢市情報公開及び個人情報保護に関する条例(平成3年条例第2
   号。以下「旧条例」という。)第7条第1項の規定により、情報公開請求があっ
   た。

  イ 平成13年2月22日
   上記の請求に対し、一部公開を決定した。

  ウ 平成13年4月3日
   異議申立人から上記の決定に対して異議申立てがあった。

4 異議申立人の主張の要旨
  異議申立人の主張の要旨は、次のとおりである。
 (1) 非公開の理由について、旧条例第6条第1項第4号ア(事業執行情報)及びウ(国
  等協力関係情報)の規定をあげているが、旧条例は、その目的に@市民への市政参
  加推進A市政に対する市民の理解と信頼の増進などをあげており、この処分は、こ
  うした旧条例の趣旨を逸脱している。
   これらの非公開処分は、辰巳ダム建設に対する恣意的な情報隠しであり、アカウ
  ンタビリテイーを放棄するものである。

 (2) 非公開の理由の付記について
   公開による社会的公益性と行政機関が受ける不利益性の均衡が重要であるから、
  実施機関側の一方的恣意的な措置によって、情報公開請求者の権利が侵害されない
  ため、非公開処分には、慎重かつ客観的な理由が必要である。
   ―般に、非公開理由を明確にするごとは「非公開の理由を情報公開請求者に知ら
  せることによって不服申立てに便宜を与えるところにある」とされているものであ
  る。この趣旨からすれば、非公開の理由に根拠条項及びその名称を示すだけでは、
  情報公開請求者にとって、非公開処分がどういう理由によってなされたかを知り得
  ないから、違法である。
   弁明書においても、非公開についての説明は単なる言葉の言い換えであり、個々
  具体的に理由を説明していない。

 (3)「旧条例の該当性の前提事項」への反論
   金沢市の辰巳ダム建設計画への協力について合理的、妥当な説明のないまま石川
  県との協議に応じ、その内容を示す資料をも非公開とするのは、旧条例の趣旨にも
  違反し違法である。
   また、石川県のダム建設の目的(治水)を考えると、ダム建設地域の住民の理解を
  得ることより以上に、下流地域=金沢市内全体の市民への説明責任が不可欠であり、
  ことさら「地元の協力」を強調することは、地方自治の本旨である「民主的、能率
  的、自治体の健全なる発達の保障」を阻害することになり違法である。
   事業を進める石川県への批判点について、この事業へ金沢市が協力を明らかにす
  る以上、説明責任を果たす必要があり、これを怠った非公開処分は違法である。

 (4)「地元要望について」及び「辰巳ダム建設事業関連地元要望事項」について(2(2)
  ア、ケ及びコの文書)
   地元要望事項の具体的内容を公開しないと、全国で広く問題となっているように、
  関連事業と称して行われる事業本来の目的と合致しない不要不急の支出が際限なく
  行われることになる。
   辰巳ダム建設関連で行われている「地元要望事項」を具体的に明らかにし、金沢
  市の協力内容を公開することは、「ダム建設を推進する石川県に協力する」との金
  沢市の行政執行上も必要不可欠である。
   地元の要望については、情報公開請求によって過去に公開を受け入手済みであり、
  今回非公開とする理由はない。

 (5)「意見交換」について(2(2)アの文書)
   県及び市の意見交換の内容を知ることは、条例の目的に沿ったものであり、非公
  開と考える理由は全くない。
   会議の前段で、市道の整備について石川県からの要請や課題で協議を行っており、
  その中で出された担当職員間の意見交換は、何ら隠されることではなく、逆に公開
  を行うことによって、事業執行が円滑に達するのであって、何ら非公開とする理由
  は見当たらない。

 (6)「工程」及ぴ「上水道敷設の課題」について(2(2)エの文書)
   金沢市としての辰巳ダム建設との関係を説明するために必要不可欠のものである。
  「工程」及び「上水道敷設の課題」は、意思形成過程情報として非公開となってい
  る。これらの事項は、行政執行上の初歩的情報であり、何ら非公開とするべき理由
  とはならない。逆に、金沢市民あるいは地元住民に説明し、協力を要請すべき事項
  である。 

 (7)「県からの進捗状況報告」について(2(2)オの文書)
   報告者も会議参加者もすべて行政職員であり、すべて職務上なされた公的なもの
  であり、非公開の対象になり得ない。
   辰巳ダム事業の進捗状況は、県から常に報道各社あるいは地元町内会などに説明
  され、新聞等で知ることができる。こうした県からの職務上行っている進捗状況説
  明を、職務上参加してまとめた担当者の記録を非公開とする理由は見当たらない。

 (8)「上水道関連(企業局建設改良課から報告)」及び「農村環境整備課報告」について
   (2(2)オの文書)
   報告者も会議参加者もすべて行政職員であり、すべて職務上なされた公的なもの
  であり、何ら非公開とする理由は見当たらない。

 (9)「上流4町(寺津町、駒帰町、熊走町、城力町)の地元要望について」について(2
   (2)カの文書)
  (4)に述べたことと同様に、何ら非公開とする理由は見当たらない。

(10) 今回、異議申立てした6件の一部非公開文書と同時に公開された4件の文書は、
  いずれも取扱区分で「非公開文書」とされ、非公開理由は「意思形成過程」あるい
  は「国等協力関係」としているが、各々の文書には非公開とする客観的な根拠は見
  い出せない。
   こうした事実から、今回の非公開処分を受けた6件は、いずれも客観的な根拠が
  なく、金沢市の場当たり的で、事務担当者の感覚的な公開事務を示している。

(11) 平成11年11月12日に公開決定された文書と比較すると、非公開部分に著し
  い相違が見られる。これらの事実は、公開処分そのもののずさんさを示しており、
  請求者の権利を著しく侵害しており、違法である。
   また、今回公開された文書は、いずれも取扱区分で「非公開文書」とされた文
  書である。本来「非公開文書」を公開するには、「取扱区分」を「公開文書」ある
  いは「―部非公開文書」と取扱いを変更する必要のあるもので、こうした区分の変
  更もなしに公開することは、旧条例、公文書の管理を定める文書取扱規程及び職員
  の職務を定めた分掌事務規則、ひいては地方公務員法及び地方自治法に違反の疑い
  すら濃厚なものである。

(12) 結論
   今回の資料請求に対して金沢市長が行った非公開処分及ぴ弁明書での説明は、情
  報公開請求者を納得させるものではない。旧条例、地方公務員法、地方自治法、金
  沢市文書取扱規程及び金沢市補助組織及び分掌事務規則の趣旨に違反しており違法
  である。よって、全面的に公開を求めるものである。
   また、これらの法令等の趣旨に従った厳正公正な文書管理と公開事務を求めるも
  のである。

5 実施機関の主張の要旨
  実施機関の主張の要旨は、次のとおりである。
 (1) 行政情報の特定について
   平成4年11月10日から平成10年7月15日までの辰巳ダム連絡調整会議報
  告書。なお、附属資料があるものは当該資料も対象とした。

 (2) 非公開決定の理由
   これらの文書に記載された内容のうち、2(3)の非公開とされた部分は、旧条例
  第6条第1項第4号ア(事業執行情報)又は同号ウ(国等協力関係情報)の規定に該当
  するものとして非公開とした。

 (3) 旧条例の該当性
  ア前提事項
   (ア)辰巳ダム建設事業の事業主体は石川県であり、事業の推進について本市が協
    力している。
     本件文書に関する連絡調整会議については、辰巳ダム建設事業の円滑な推進
    を図るため石川県の要請により開催した事務担当者レべルの会議である。
   (イ)一般的にダム建設には、多くの水没地域が生ずること、また、建設に伴う工
    事車両の通過など建設地周辺地域の住民(地元住民)の生活に非常に大きな影響
    を与えるため、その事業実施に当たっては、地元住民の理解と協力を得ること
    が極めて重要であり、また難しい課題である。
     また、地元住民からはダム建設に当たって、様々な要望が出されており、事
    業の推進には地元住民との多くの交渉が必要である。ダム建設が事業途上であ
    る現在、この交渉も継続中であると考えねばならない。

  イ 非公開部分の個別非公開理由
   (ア)地元要望について(2(2)アの文書)
     文書の見出しは「地元要望について」となっているがt市政執行に関する情
    報である。石川県が試算した地元要望の試算値が含まれており、この情報の公
    開は、不確定な情報を市民に伝えることになる。また、当会議において石川県
    から取得した情報が含まれている。よって、この情報の公開は事業執行に支障
    を生じ、石川県と本市との協力関係又は信頼関係を損なうおそれがあるので、
    旧条例第6条第1項第4号ア及びウの規定に該当する。
   (イ)意見交換(2(2)アの文書)
     本市職員と石川県職員の意見が個人名で記載され、内容は議論の途中の段階
    の市政執行に関する情報である。この情報の公開は、不確定な情報を市民に伝
    えることになる。また、当会議において石川県から取得した情報が含まれてい
    る。よって、この情報の公開は事業執行に支障を生じ、石川県と本市との協力
    関係又は信頼関係を損なうおそれがあるので、旧条例第6条第1項第4号ア及び
    ウの規定に該当する。
   (ウ)工程(2(2)エの文書)
     ダム建設工程に係る情報が記載されており、石川県から取得した事務レべル
    案の段階の情報である。この情報の公開は、平成6年度以降の執行がなされて
    いない継続中の情報があるので、不確定な情報を市民に伝えることになる。よ
    って、この情報の公開は石川県と本市との協力関係又は信頼関係を損なうおそ
    れがあるので、旧条例第6条第1項第4号ウの規定に該当する。
   (エ)上水道敷設の課題(2(2)エの文書)
     ダム建設地地域に対する上水道敷設に関する内部の検討事項が記載されてお
    り、企業局の見解として事務担当者の判断が入っている。この情報の公開は不
    確定な情報を市民に伝えることになり地元関係者との信頼関係が損なわれるお
    それがあるので、旧条例第6条第1項第4号アの規定に該当する。
   (オ)県から進捗状況報告(2(2)オの文書)
     辰巳ダム建設事業について、石川県の進捗状況報告と情勢分析及び今後の方
    針が含まれており、県の事務担当者の見解が含まれている。
     当会議において石川県から取得した情報であり、この情報の公開は事業執行
    に支障を生じ、石川県と本市との協力関係又は信頼関係を損なうおそれがある
    ので、旧条例第6条第1項第4号ウの規定に該当する。
   (カ)上水道関連(企業局建設改良課から報告)(2(2)オの文書)
     本市の上水道整備事業についての記載であるが、整備計画は地元等に正式に
    発表されたものではなく、事務担当者会議での内部の検討事項であり、不確定
    な情報である。この情報の公開は地元関係者の誤解等を生み出し、信頼関係が
    損なわれ、事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずるおそれがあり、旧条例
    第5条第1項第4号アの規定に該当する。
   (キ)農村環境整備課報告(2(2)オの文書)
     地元地域での農村集落排水事業についての本市の内部検討結呆等が記載され
    ているが、いずれの事項も本市として地元に正式に発表した情報ではなく、事
    務担当者会議での内部の検討事項であり、不確定な情報である。この情報の公
    開は地元関係者との信頼関係を損なうおそれがあり、旧条例第6条第1項第4
    号アの規定に該当する。
   (ク)上流4町(寺津町、駒帰町、熊走町、城力町)の地元要望について(2(2)カ
    の文書)
     地元要望事項は、個別に各町がダム建設事業に関連して石川県及び本市に対
    し要望した事項であり、市政執行に関する情報であって交渉に関する情報であ
    る。この情報の公開は、地元住民の県、市に対する要望事項の取扱いについて、
    不信や誤解を招き、適切な理解・協力が得にくくなるおそれがある。よって、
    関係当事者間の信頼関係を損なうおそれがあり、旧条例第6条第1項第4号ア
    の規定に該当する。
   (ケ)辰巳ダム建設事業関連地元要望事項(2(2)ケ及びコの文書)
     (ク)に同じ。

  ウ 結び
    辰巳ダム建設事業は、石川県が所管する現在継続中の事業であり、辰巳ダム連
   絡調整会議報告書に記載された情報には、公開することにより、事業の公正かつ
   適正な執行に支障を及ぼすと同時に石川県との協力関係又は信頼関係が損なわれ
   るおそれがあるものがある。
    本件において、非公開とした情報については、すべてこのような情報に該当す
   るものと考える。

6 審査会の判断
   当審査会の判断は以下のとおりである。なお、本件は、改正条例附則第3項の規
  定により、旧条例の適用を受ける事案である。

 (1) 本件行政情報について
    本件公開された行政情報は、辰巳ダム建設事業の円滑な推進を図るため当該事
   業の事業主体である石川県と事業協力者の金沢市との間で開催された事務担当者
   レべルの連絡調整会議の報告書である。

 (2) 条例の考え方
  ア 旧条例第6条第1項第2号(個人情報)について
   個人のプライバシーは、基本的人権として最大限に尊重されるべきであり、公開
   を原則とする情報公開制度においても最大限に保護されなければならない。しか
   し、個人のプライバシーの概念は必ずしも明確でなく、これを―律に規定するこ
   とは困難であるため、本条例では個人に関する情報を原則的に非公開とする立場
   を取っている。
    ただし、法令等の規定により何人でも閲覧できる個人情報や、実施機関が公表
   することを目的として作成し、又は取得した個人情報はその例外とされ、また、
   法令等の規定に基づく許可、免許、届出等の際に実施機関が作成し、又は取得し
   た情報であって公益上公開する必要があると認められるものについても個人情報
   の例外として公開される。
    従って、特定の行政情報が個人情報として非公開とされるためには、旧条例第
   6条第1項第2号本文の規定に該当し、かつ、同号ただし書のいずれの規定にも
   該当しないことが要件となる。

  イ 旧条例第6条第1項第4号ア(事業執行情報)について
    市政執行に関する情報のうち、監査、検査、試験、入#L、交渉、渉外、訴訟等
   の実施機関が行う事務事業に関する情報であって、公開することにより当該事務
   事業の実施の目的が失われるおそれがあるもの、関係当事者間の信頼関係が損な
   われるおそれがあるもの又は当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正
   かつ適正な執行に著しい支障が生ずるおそれがあるものは、公開しないことがで
   きると規定されている。
    この規定の趣旨は、事務事業の目的を達成し、公正かつ適切な執行あるいは円
   滑な行政運営を確保する観点から、公開原則の適用除外事項として定めたもので
   ある。
    この規定中「当該事務事業の実施の目的が失われるおそれがあるもの」とは、
   公開することによって、事務事業を実施しても所期の成果が得られなくなり、実
   施する意味を失うこととなる情報をいう。
    また、「関係当事者間の信頼関係が損なわれるおそれがあるもの」とは、第三
   者と共同して実施する事務事業に関する情報であって、公開することにより、本
   市と第三者との信頼関係が損なわれるおそれがある情報などが該当する。
    さらに、「当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正かつ適正な執行
   に著しい支障が生ずるおそれがあるもの」とは、@特定の者に利益を与えたり、
   不公平を生じる情報A経費が著しく増大したり、事務事業の実施の時期が大幅に
   遅れて、行政の質の低下を来す情報B事務事業実施のために必要な関係者の理解、
   協力が得にくくなったり、市の経済的利益等を損なうおそれがある情報などが該
   当する。

  ウ 旧条例第6条第1項第4号ウ(国等協力関係情報)について
    市政執行に関する情報であって、国又は他の地方公共団体(以下「国等」とい
   う。)との間における協議、協力、依頼等に基づいて作成し、又は取得した情報で
   あって、公開することにより国等との協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれ
   があるものは、公開しないことができると規定されている。
    この規定の趣旨は、国等との協力関係又は信頼関係を確保するため、公開原則
   の適用除外事項として定めたもので、市の行政は、市独自で完結するものだけで
   はなく、国等との連携のもとに進められているものがある。そして、これら国等
   との協議、依頼等に基づいて作成し、又は取得した情報を一方的に公開した場合
   には、国等との協力関係又は信頼関係を損なうことがあるため、これを防止しよ
   うとするものである。
    この規定中「協力関係又は信頼関係」とは、当面の事業が相互の協力のもとに
   円滑に執行されること又は将来にわたって相互の円滑な関係が維持されることに
   着目したものである。
    この規定により非公開となる情報としては、国等の施策に関して、市に協議が
   求められている事項に係る情報で国等においても公表していないものなどがある。

 (3)「地元要望について」について(2(2)アの文書)
   この部分には、関係9町からの要望を集計した試算値などの情報が記載されて
  いる。
   この文書が作成されて9年以上が経過した現時点で、この内容を検討するに、こ
  の部分は、公開されたとしても、辰巳ダム建設事業の実施の目的が失われるおそれ
  があるもの、地元の当事者との信頼関係が損なわれるおそれがあるもの又は当該事
  業若しくは将来同種の事務事業の公正かつ適正な執行に著しい支障が生ずるおそれ
  があるものとは認められず、旧条例第6条第1項第4号アの規定には該当しないと判
  断される。
   また、この部分には、石川県から取得した情報が含まれているが、前述のとおり
  辰巳ダム建設事業の実施の目的が失われるおそれがあるもの等とは認められない以
  上、石川県との協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれがあるものとは認められ
  ず、同号ウの規定には該当しないと判断される。
   よって、この部分は、公開すべきである。

 (4)「意見交換」について(2(2)アの文書)
   この部分には、会議出席者の意見交換が会議録的に記載されている。ここでは、
  会議出席者が住民の要望などについて意見を交わしていることがうかがえる。その
  内容を検討するに、この部分は、記述に連続性がないことから報告者のメモ的に作
  成されたものであり、各出席者の発言は断片的に、かつ、圧縮省略して記録されて
  いると認められる。
   そして、そのために、不明確で発言者の真意を読みとれない部分又は読んだ者に
  よって解釈が相当異なる部分もあり、当該意見交換の内容を正確に記録したものと
  は認められない状態である。
   また、辰巳ダム建設事業が継続中であることも考慮に入れたときに、この部分の
  公開は、関係当事者のみならず市民を不当に混乱させるおそれがあると認められ、
  また、将来同種の事務事業において自由な意見交換を妨げるおそれがあると認めら
  れる。そこで、この部分は、関係当事者間の信頼関係が損なわれるおそれがあるも
  の又は辰巳ダム建設事業若しくは将来同種の事務事業の公正かつ適正な執行に著し
  い支障が生ずるおそれがあるものと認められ、旧条例第6条第1項第4号アの規定
  に該当すると判断される。
   さらに、この部分は、石川県との会議において取得した情報であり、公開すると、
  前述のとおり関係当事者間の信頼関係が損なわれるおそれがあるもの等と認められ
  る以上、石川県との協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれがあるものと認めら
  れ、同号ウの規定に該当すると判断される。
   よって、この部分(別表の番号1に記載した部分)は、非公開が相当である。

 (5)「工程」について(2(2)エの文書)
   この部分には、平成5年時点の執行状況及ぴ今後の執行見込みが記載されている。
  この部分は、石川県から取得した情報であり、現在においては、8年以上前の時点
  での状況と将来の予測である。その内容を検討するに、この部分は、現時点におい
  て公開されたとしても、石川県との協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれがあ
  るものとは認められず、旧条例第6条第1項第4号ウの規定には該当しないと判断
  される。
   よって、この部分は、公開すべきである。

 (6)「上水道敷設の課題」について(2(2)エの文書)
   この部分には、調査結呆による評価及び企業局の見解が含まれた企業局の立場、
  県の状況及び企業局の見解が含まれた県の要望が記載されている。調査結果による
  評価を含んだ過去の記録である。その内容を検討するに、この文書が作成されて8
  年以上が経過したこともあり、当時の企業局の立場などが公開されたとしても、特
  に誤解を生じたり、地元の当事者との信頼関係を損なうことがないと思料される。
   そこで、この部分は、公開されたとしても、山間地末普及地解消事業の実施の目
  的が失われるおそれがあるもの、地元の当事者との信頼関係が損なわれるおそれが
  あるもの又は当該事業若しくは将来同種の事務事業の公正かつ適正な執行に著しい
  支障が生ずるおそれがあるものとは認められず、旧条例第6条第1項第4号アの規
  定には該当しないと判断される。
   よって、この部分は、公開すべきである。

 (7)「県から進捗状況報告」について(2(2)オの文書)
   この部分には、用地買収及び道路整備についての情報が記載されている。
   このうち別表の番号2に記載した部分には、特定の個人についての情報が記載さ
  れている。
   旧条例第6条第1項第2号本文にいう個人情報とは、「個人に関する情報(事業
  を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、
  又は識別され得るものをいう。」と定義されている。
   この「特定の個人が識別される」情報とは、当該情報だけで特定の個人が判別さ
  れることをいい、「特定の個人が識別され得る」情報とは、他の情報と照らし合わ
  せることによって特定の個人に関する情報と了知し得ることをいうと解される。
   別表の番号2に記載した部分は、その内容から、特定の個人が識別される又は識
  別され得る情報であり、同号本文に規定する個人情報であると認められる。
   次に、別表の番号2に記載した部分が、同号ただし書の規定に該当するか検討す
  るに、「法令等の規定により何人でも閲覧することができるとされている情報」、
  「実施機関が公表することを目的として作成し、又は取得した情報」及び「法令等
  の規定に基づく許可、免許、届出その他これらに類する行為の際に実施機関が作成
  し、又は取得した情報であって、公益上公開する必要があると認められるもの」の
  いずれにも該当しないことは明らかである。
   よって、別表の番号2に記載した部分は、同号の規定により、非公開とすること
  が相当である。
   しかし、その余の部分については、石川県から取得した情報で、過去の事実及び
  6年以上前の時点での今後の方針である。その内容を検討するに、この部分は、現
  時点において公開されたとしても、石川県との協力関係又は信頼関係が損なわれる
  おそれがあるものとは認められず、同項第4号ウの規定には該当しないと判断され
  る。
   よって、その余の部分は、公開すべきである。

 (8)「上水道関連(企業局建設改良課から報告)」について(2(2)オの文書)
   この部分には、山間地上水道末普及地域解消事業の予定、負担のルール、引込工
  事費、事業推進の条件及び検討が記載されている。
   しかし、その内容を検討するに、この文書が作成されて6年以上が経過している
  こともあり、ごの部分は、公開されたとしても、山問地末普及地解消事業の実施の
  目的が失われるおそれがあるもの、地元の当事者との信頼関係が損なわれるおそれ
  があるもの又は当該事業若しくは将来同種の事務事業の公正かつ適正な執行に著し
  い支障が生ずるおそれがあるものとは認められず、旧条例第6条第1項第4号アの規定
  には該当しないと判断される。
   よって、この部分は、公開すべきである。

 (9)「農村環境整備課報告」について(2(2)オの文書)
   この部分には、農村集落排水事業についての一般的な事項、事業化の要件、現況、
  犀川地区の事業化計画、地元負担額、市の融資制度の有無、地元負担金のルール及
  び引込工事費が記載されている。
   その内容を検討するに、この文書が作成されて6年以上が経過していることもあ
  り、この部分は、公開されたとしても、犀川地区の農村集落排水事業の実施の目的
  が失われるおそれがあるもの、地元の当事者との信頼関係が損なわれるおそれがあ
  るもの又は当該事業若しくは将来同種の事務事業の公正かつ適正な執行に著しい支
  障が生ずるおそれがあるものとは認められず、旧条例第6条第1項第4号アの規定
  には該当しないと判断される。
   よって、この部分は、公開すべきである。

(10)「上流4町(寺津町、駒帰町、熊走町、城力町)の地元要望について」について(2
 (2)カの文書)
   この部分には、町からの要望事項及び市の現行制度が記載されている。
   このうち別表の番号3に記載した部分には、特定の個人が識別される情報及び特
  定の個人が識別され得る情報が記載されており、旧条例第6条第1項第2号本文に
  規定する個人情報であると認められる。
   次に、別表の番号3に記載した部分が、同号ただし書の規定に該当するか検討す
  るに、「法令等の規定により何人でも閲覧することができるとされている情報」、
  「実施機関が公表することを目的として作成し、又は取得した情報」及び「法令等
  の規定に基づく許可、免許、届出その他これらに類する行為の際に実施機関が作成
  し、又は取得した情報であって、公益上公開する必要があると認められるもの」の
  いずれにも該当しないことは明らかである。
   よって、別表の番3に記載した部分は、同号の規定により、非公開とすることが
  相当である。
   しかし、その余の部分について、町からの要望事項は、町としての要望であり、
  公開されたとしても、当該町及び住民の不利益になるとは認められない。また、市
  の現行制度は、その当時の一般的な事実である。
   そこで、その余の部分は、公開されたとしても、辰巳ダム建設事業の実施の目的
  が失われるおそれがあるもの、地元の当事者との信頼関係が損なわれるおそれがあ
  るもの又は当該事業若しくは将来同種の事務事業の公正かつ適正な執行に著しい支
  障が生ずるおそれがあるものとは認められず、同項第4号アの規定には該当しない
  と判断される。
   よって、その余の部分は、公開すべきである。

(11)「辰巳ダム建設事業関連地元要望事項」について(2(2)ケ及びコの文書)
   この部分には、地元の要望事項が記載されている。この部分についても、(1O)で
  述べたとおり、特定の個人が識別される情報及び特定の個人が識別され得る情報が
  記載されている別表の番号4及び5に記載した部分以外は公開すべきである。

(12)「理由付記」について
   本件の非公開の理由については、根拠条項とその名称を示すだけではなく、ある
  程度具体的な理由の付記をすべきものであったと思料される。

(13) まとめ
   以上により、実施機関が別表に記載した部分を非公開とした決定は妥当であるが、
  その余の部分は公開すべきであると判断され、「1審査会の結論」のとおり結論す
  るものである。

別表
 番号  文書  ぺージ     非公開とすべき部分
 1  2(2)ア  4  上から2行目から21行目まで
 2  2(2)オ  3  「1県から進捗状況報告」の上から3行目
 3  2(2)カ  3  下から15行目の「〜」と「約」の間の文字
             下から14行目の「〜」と「約」の間の文字
 4  2(2)ケ  4  下から7行目の「(」と「まで」の間の文字
 5  2(2)コ  4  下から7行目の「(」と「まで」の間の文字

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