市長の弁明に対して反論書提出

「弁明書」にもどる「情報公開」にもどる

以下は、市長から審査会に出された「弁明書」に対する反論である。
これで、両者の「言い分」が出そろったことになり、審査会で審議される。
委員会審議に必要があれば、口頭での意見聴取などを行うこともある。

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             反  論  書
                      2001年(平成13年)8月17日

金沢市情報公開および個人情報保護審査会
  会長 鴨野 幸雄 様

                        渡辺 寛
                         金沢市北間町ハ7番地

平成13年(2001年)7月25日付「実施機関の弁明に対する反論書の提出について」
で求められたことにつき、次のとおり反論する。

■その1 非公開処分は「理由付記」の要件を欠き違法である。

 平成13年4月22日付で金沢市長より通知を受けた「過去の金沢市と石川県との間
で開かれた辰巳ダム問題の協議会内容のわかる資料(辰巳ダム連絡協議会報告書別
紙のとおり)」で、非公開となった一連の公文書は、非公開の箇所と理由が表で示
された。対象文書は次のものである。
 bP 平成4年11月10日の報告書
 bS 平成5年11月10日の報告書
 bT 平成7年 9月 8日の報告書
 bU 平成8年 3月 8日の報告書
 bX 平成9年 5月29日の報告書
 10 平成10年 7月15日の報告書
 共通する非公開理由として、条例第6条第1項、第4号ア(事業執行)、ウ(国
等協力関係)などを「別紙」に一覧に記してあるが、非公開部分がなぜ非公開なの
か、その理由をなんら説明していない。
 条例第6条で事業執行や国等協力関係に支障を与える可能性を考慮し非公開措置
を妥当とするのは一般的には理解できる。しかしこれらの情報は、公開されること
によって行政機関内部の不正や違法が明らかになる可能性が高い情報でもあり、行
政機関はこの公開によって直接の利害関係を持つものでもある。公開による社会的
公益性と行政機関が受ける不利益性の均衡が重要であるから、実施機関側の一方的
恣意的な措置によって、請求者の権利が侵害されないため、非公開処分には慎重か
つ客観的な理由が必要である。
 一般に非公開理由を明確にすることは「非開示の理由を開示請求者に知らせる事
によって不服申立てに便宜を与えるところにある」とされているものであって、こ
うした趣旨からすれば、非公開の理由を「別紙のとおり」と一覧表示するだけでは、
条例の趣旨からいっても、当処分が公正妥当とはいえず、恣意的情報隠しと言われ
てもしかたのないものである。
 弁明書においても、非公開についての説明は単なる言葉の言い換えであり、個々
具体的に理由を説明していない。
 開示請求者にとって、非開示処分がどういう理由によってなされたかを知り得な
いから、理由付記の要件を欠き違法である。

■その2 答弁書中「(2)条例の該当性の前提事項」への反論

 答弁書では、「辰巳ダム建設事業の事業主体は石川県であり、……本市が協力し
ている」と記しているが、「金沢市の協力」についての内容が不明である。「協力
内容」を明らかにしないと、一連の協議会で金沢市が石川県と協議を行う正当性を
説明できない。
 金沢市議会での市長答弁をみるかぎり、辰巳ダム建設に金沢市が協力する積極的
理由は「高畠地区など下流域の浸水被害の軽減」につきる。(資料1=議会議事録)
 市長答弁は、内水被害と外水被害の区別を理解せず、原因と対策を混同するもの
で、平成●年度石川県公共事業評価監視委員会が県に求めた「石川県と市民との意
見交換会」で辰巳ダム問題を巡って石川県と市民とで行われた「意見交換会」にお
いて市民から「辰巳ダムが完成しても高畠地区の水害はなくならない」と指摘され、
石川県も反論はできなかったことである。またこれは昨年の東海大洪水を振り返る
までもなく、治水のイロハである。(資料2=意見交換会内容)
 従って、金沢市の辰巳ダム建設計画への協力について合理的、妥当な説明のない
まま石川県との協議に応じ、その内容を示す資料をも非公開とするのは、情報公開
条例にも違反し違法である。
 また、「地元住民の理解と協力と得ることが極めて重要であり」「事業推進のた
め地元住民との多くの交渉が必要である」と記しているが、石川県のダム建設の目
的(治水)を考えると、ダム建設地域の住民の理解を得ることより以上に、下流地
域=金沢市内全体の市民への説明責任が不可欠であり、ことさら「地元の協力」を
強調することは、地方自治の本旨である「民主的、能率的、自治体の健全なる発達
の保障」を阻害することになり違法である。
 事業を進める石川県への批判は「兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する
会(辰巳の会)」などが反対運動をおこなっており(資料3=辰巳の会リーフレッ
ト)、この事業へ金沢市が協力を明らかにする以上、こうした辰巳の会などが行っ
ている批判点についても説明責任を果たす必要がある。情報開示は説明責任を果た
すための初歩であり、これをおこたった非開示処分は違法である。

■その3 非公開箇所の「地元要望事項」について

 「その2」の後段で述べたとおり、地元要望事項の具体的内容を公開しないと、
全国で広く問題となっているように、関連事業と称して行われる事業本来の目的と
合致しない不要不急の支出が際限なく行われることになる。
 辰巳ダム建設関連で行われている「地元要望事項」を具体的に明らかにし、本市
の協力内容を公開することは、「ダム建設を推進する石川県に協力する」との本市
の行政執行上も必要不可欠である。
 関連して述べれば、犀川の辰巳地区から上流および周辺地区は、この数年、一見
するだけでも辰巳ダムとはなんら関係のない工事が数多くなされ、まさに環境は一
変した。こうしたことが「地元要望事項」に関連して行われていることが推察され
るため、地元各地区で具体的にどのような要望が出され、石川県や金沢市がどうし
た措置をとっているかを明らかにすることが必要不可欠である。
 こうした情報が公開され行政から説明責任が果たされないと、多くの金沢市民か
ら「辰巳地区住民の地元エゴ」と批判されるばかりでなく、辰巳ダム建設事業ある
いは「本市の協力」そのものにも障害となり、行政の公正をそこなう。
 異議申立書にも記したが、こうした地元の要望については、当情報公開条例の請
求によって過去に公開をうけ入手済みであり、今回非開示とする理由はない(資料
4=地元要望書)。理由付記の要件を欠き違法である。

■その4 非公開理由の「市政執行情報」について

 そもそも、この協議会は、石川県職員と金沢市職員双方が職務上行った協議であ
り、この中で協議され資料に残されている情報は、本来すべて開示される必要があ
るものである。これは情報公開条例の趣旨にてらせば明らかである。この情報が非
開示とするには、単に「市政執行に関する情報」であるからという理由だけでは不
十分で、「非開示が相当」という具体的積極的理由が示されなければならない。理
由付記の要件を欠き違法である。

■その5 非開示箇所「行程」「上水道敷設の課題」について

 平成5年9月30日の辰巳ダム建設関連協議別添資料で、「行程」および「上水道
敷設の課題」は、意思形成過程情報として非公開となっている。
 これらの事項は、行政執行上の初歩的情報であり、なんら非公開するべき理由と
ならない。逆に積極的に開示をおこない、金沢市民あるいは地元住民に説明し、協
力を要請すべき事項である。よって非開示処分は理由付記の要件を欠き違法である。

■その6 非公開箇所「意見交換」について

 同上文書中、「(5)意見交換」部分は、前段で市道の整備について石川県から
の要請や課題で協議をおこなっており、その中で出された担当職員間の意見交換は、
なんら隠されることではなく、逆に開示をおこなうことによって、事業執行を円滑
に達するのであって、なんら非公開とする理由は見あたらない。理由付記の要件を
欠き違法である。

■その7 非公開箇所「県からの進捗状況報告」について

 平成7年9月8日付の文書中、「県からの進捗状況報告」が非公開処分とされた。
 辰巳ダム事業の進捗状況は県から常に報道各社あるいは地元町内会などに説明さ
れ、新聞等で知ることができる。こうした県からの職務上おこなっている進捗状況
説明を、職務上参加してまとめた担当者の記録を非開示とするのは、まさに信じら
れないことである。なんら非公開とする理由は見あたらず、理由付記の要件を欠き
違法である。

■その8 非公開箇所「上水道関連(企業局建設改良課から報告)」について

 同文書中、「上水道関連(企業局建設改良課から報告)」の非開示部分について
も、なんら非公開とする理由は見あたらない。理由付記の要件を欠き違法である。

■その9 非公開箇所「農村環境整備報告」について

 同文書中、「農村環境整備報告」も同様、なんら非公開とする理由は見あたらな
い。理由付記の要件を欠き違法である。

■その10 非公開箇所「上流4町の地元要望について」について

 同文書中、「上流4町の地元要望について」も、「その3」に述べたことと同じ
く、なんら非公開とする理由は見あたらない。理由付記の要件を欠き違法である。

■その11 混乱する公開事務(その@)

 今回、異議申立てした6件の文書の一部非公開処分と同時に公開された文書は以
下に示す4件ある。
 bQ 平成5年 1月12日 辰巳ダム連絡協議会報告書(資料5)
 bR 平成5年 3月19日 辰巳ダム連絡協議会報告書(資料6)
 bV 平成8年 6月11日 辰巳ダム連絡協議会報告書(資料7)
 bW 平成8年11月29日 辰巳ダム連絡協議会報告書(資料8)
               (――いずれも文書第1ページのみを示す)
 これらの文書はいずれも取扱区分で「非公開文書」とされ、非公開理由は「意思
形成過程」あるいは「国等協力関係」としている。各々の文書には非公開とする客
観的な根拠は見い出せず、取り扱い区分を「非公開」とするのは不当なものである
が、これを仮に受認したとしても、今回これらの文書が公開されている事実は、金
沢市の文書取り扱いが、混乱を極めていることを示している。なお、これらの文書
は公開されたものの、極めて簡単な文書であり、付属資料などもなく、取り扱い区
分を「非公開」としていることを見ても、保存文書のすべてであるとは到底思えな
いものである。
 こうした事実から、今回の非公開処分をうけた6件は、いずれも客観的な根拠が
なく、金沢市の場当たり的で、事務担当者の感覚的な公開事務を示しており、なん
ら客観的合理性をもたず「恣意的情報隠し」と言われても仕方がないものである。
条例の趣旨に反しており違法である。

■その12 混乱する公開事務(そのA)

 「その3」にもふれたが、今回の請求に先立つ平成11年10月21日、今回と同趣旨
の請求を行い、同年11月12日に一連の文書が公開決定された。この時に公開(一部
非公開)された資料と比較すると、非公開部分に著しい相違が見られる。(資料9
=過去の開示文書)
 例記すると例えば次のとおりである。
 平成4年11月10日文書2〜4ページ 今回は全63行中5行が非開示
                  前回はすべて非開示
 平成5年1月12日文書2ページ   今回はすべて開示
                  前回はすべて非開示
 平成8年3月8日文書2〜3ページ 今回は62行中32行が非開示
                  前回はすべて非開示
 平成8年11月29日文書2ページ   今回は全部開示
                  前回は全部非開示
 平成9年5月29日文書2ページ   今回は全部開示
                  前回は30行が非開示
      同    地元要望事項 今回は30行程度非開示
                  前回は文書そのものがない
 平成10年7月15日文書2ページ   今回は全部開示
                  前回は26行が非開示
 これらの事実は、「その11」でも指摘したように、公開処分そのものの杜撰さを
示しており、請求者の権利を著しく侵害しており、違法である。
 また、今回開示された文書は「その11」で指摘したとおり、いずれも取扱区分で
「非公開文書」とされた文書である。本来「非公開文書」を公開するには、「取扱
区分」を部内の管理規定で「公開文書」あるいは「一部非公開文書」と取り扱いを
変更する必要のあるもので、こうした区分の変更もなしに公開するのは、文書管理
上、違法性の高いものと推察されるものである。

■結論

 今回の資料請求に対して金沢市長がおこなった非開示処分、弁明書での説明は、
いずれも情報公開条例、地方自治法の趣旨に違反しており違法である。よって全面
的に公開を求めるものである。
 また、地方自治法と情報公開条例の趣旨に従った厳正公正な文書管理と公開事務
を求めるものである。
                               以 上
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