金沢市入札制度評価委員会 って何?


2005.4.17 掲載
(06.2.21監理課資料へのリンク更新)

 金沢市には「入札制度の改善」のために「入札制度評価委員会」なるものがある。「金沢市契約規則」(平成15年3月4日施行)で設置。
 金沢市には、こうした制度(委員会、審議会等々)はたくさんあるが、多くは役に立っていないのが現実だ(市民参画推進条例の時に検討したが)。
 この「入札制度評価委員会」が趣旨どおりに機能していればいいのだが、どうもそうではなさそうだ(やっぱり…!)。以下、ちょっと紹介する。

◆不思議な 《 金沢市入札制度評価委員会 》
 委員会のメンバーは次の「先生方」。
 委員長 鴨野 幸雄(金沢大学名誉教授)
 委 員 春成  保(公認会計士)
 委 員 川村 國夫(金沢工業大学教授)

 この委員会は、6カ月ごとに開催し、過去に実施された入札状況を評価し、市長に提出することになっている。
 入札の数が多いので、全部見ることは不可能。だから入札した事例を「抽出」して検討する。 ……と、ここまでは理屈としては、素人でも理解が可能だ。
 ところが、実際の評価の内容を見ると、理解不能となる……! この制度が趣旨と全く逆転するような、不思議な世界が現れる。

 金沢市が発注したJR金沢駅東広場の植栽工事で、談合が発覚したのは、平成16年(2004年)10月のこと。入札に参加した13の業者から市は事情を聴き、1社が談合の事実を認めた。関係14社が入札停止処分を受けた。委員会では、当然この事件を審議すべきだろう。委員会はどう扱ったか?

談合入札を検討しない「入札制度評価委員会」
 平成16年度第2回金沢市入札制度評価委員会の審議概要を見ると、平成17年(2005年)2月22日に開催。
 全部で7件の入札を検討しているのだが、「植裁工事」が入っていない。
 おかしい。入札制度を評価するには、直前に発覚した談合入札を検討するのが絶対に必要なのに、検討していない。なぜか? じつはカラクリがある。検討する事例は「抽出」されている(無作為抽出だと職員は言うのだが…)。仮にそうだったとしても、設置の規則をみると、委員会や委員が指定した工事も対象にできる。
 なのに、直前の談合事件を対象にしていない。
 そして「概ね適正に行われていると判断する。」と市長に報告している。
 委員の先生方は、どういう「御用」を仰せつかっているのだろうか?

 常識では考えられない。まったく不思議な世界である。委員会や委員が抽出や指定する工事ということが建前だが、実際は「事務局」なる市の職員が選んだ工事の一覧を、委員会に提出する。委員会の独立性など保障されていないし、ただおしゃべりするだけの世界なのだろう。当然、日当が出る。どう考えても委員になられた先生方の研究者としての経歴に傷がつくと思うのだが……。

◆参考:「金沢市契約規則」より

(委員会の審議事項等)
第58条
 委員会は、次に掲げる事項について審議するほか、工事の請負契約に係る入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性の確保に関し必要な事項について市長に意見を述べることができる。
(1) 工事の請負契約に係る入札及び契約の手続の運用状況等に関すること。
(2) 委員会又はその委員が抽出し、又は指定した工事の請負契約に係る一般競争入札に参加する者に必要な資格の設定の経緯又は指名競争入札に係る指名の経緯等に関すること。
(3) 前2号に掲げる事項に関し不適切な点又は改善すべき点があると認めた場合における必要な改善事項等に関すること。

詳細は市のホームページに掲載あり↓
 【監理課の「お知らせ」】
 【評価委員会の報告/ PDFファイル】

金沢市では、談合事件が後を絶たない。
 全国的に有名になった「下水工事談合」がある。実に265社に排除勧告が出た。これは過去、全国最高の数字で、平成10年(1998年)4月に起きた。ちょうど我が家の家の前の道路が下水道工事の真っ最中。現場監督に聞いた話がある。監督曰く 「談合に参加していないのは、まともな会社じゃない。まあ仕方がないねえ」 だとのこと。
 ついでに我が町の話。
 近くに小学校がある。大正2年に建てられた木造の学校で、二宮金次郎の銅像が似合う趣のある建物だった。この校舎が鉄筋コンクリート製に変わった(1983年)が、この工事でも談合が発覚している。

 工事関係者に知人も多い。聞くと 「談合は当たり前」と話す。選挙でも集票マシンとしてフル回転する。社会のあらゆる層に深く浸透し、習慣のようになっている。土木工事だけではない。あらゆる分野の公共発注の仕事に渡っている。談合で高くされたお金は、金沢という社会の隅々を潤してきた。公平に分配され流通していれば、それなりの効用があるかもしれないが、公平に分配されるものなら、談合をする必要はない。特権的に得をするものが登場するからややこしい。特権的な者に回される金は、経費に参入されないから、値段のつり上げが必要になる。談合発生の原因がここにある。まわり回って浄化されたものが「先生」と呼ばれる人に届けられる。浄化されないと事件になる。これは歳暮や中元に似た慣習になっているのかもしれない。
 公共事業費の圧縮の中、談合の仕掛けはより巧妙になっていくだろうと思う。河川整備、ダム関連の入札結果を見ても、落札率は軒並み95%を超えている。
 慣習にメスを入れるのは大変なことである。評価委員会の先生方、知るや知らずや?

◆全国の入札制度改善の動き――
 全国の自治体では、入札制度をどう改善しようとしているのか? 例を示す。

倉敷市では――
 「倉敷市建設工事高落札率入札調査要綱」では、落札率が95%になった時、入札調査を行う。

第3条  高落札率入札調査は,当該入札における落札率が95%以上となった場合に行うものとする。

(調査班の設置)
第4条  高落札率入札調査を行うため,倉敷市建設工事高落札率入札調査班(以下「調査班」という。)を設置する。

和歌山市では――
 「和歌山市建設工事等入札談合情報に関する対応基準」(pdfファイル)

(5) その他必要と認められる対応
2 委員会は,前項各号に規定するもののほか,最低入札価格が予定価格の概ね90パ−セント以上であったときは,事情聴取対象者又はその一部の者を告発することの適否について審議しなければならない。

横須賀市では――
 横須賀市入札制度改革のためのプロジェクトを立ち上げ、実効をあげている。
落札率が95.7% → 85.7% となってる。

横須賀市入札制度改革(pdfファイル)より
・平成11年に工事請負の入札に「条件付き一般競争入札」を導入した後、平成15年には業務委託、物件供給についても「条件付き一般競争入札」を導入しました。
 これにより、競争性が増し、工事請負については次のように劇的な効果が現れました。
 落札率  95.7%(平成9年度)→85.7%(平成11年度)
 入札差金 13億円(平成9年度)→ 32億円(平成11年度)
 この落札率については、平成12年度以降も同じような数字で推移しています。
 また、談合情報についても、入札制度改革後はほぼなくなったことから、談合ができないような入札制度となったということが言えます。


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