「忘れられた河北潟」県議会で初質疑(1993年12月)

1992年の地球サミット以後も、県内で行政や企業などの自然回復や環境問題に対する動きはほとんどな
く、当時でも県議会の河北潟についての議論は、「農業の救済策」がテーマだった。
そうした中、1993年12月議会で、河北潟を環境問題の視点から初めて質問がされ、県の態度が明らかに
なった。質問者は、紐野義昭議員(自)。
この質問が、地球サミット以後では初の県議会での問題提起となった。

●平成5(1993)年12月議会 12/13(議会議事録より)
紐野義昭議員(自)質問―――――――――――――――――――――
 次に、ことし北海道で開かれましたラムサール条約加盟国における会議で、加賀市の鴨池が登録をさ
れ、野鳥の保護、湿地の保護が前進したことを高く評価をいたしたいと思います。
 ところで、湿地、野鳥と言えば県内ではすぐに思い出すのが邑知潟と河北潟であります。本来ならば
鴨池以上に価値の高い地点であったと思いますけれども、いかんせん、世論の問題意識や時期の悪さも
手伝い、現在のような姿であります。河北潟を昔に戻すのは不可能であります。そこで生活、生計を立
てている多くの人たちがおられますので、新しい自然と人間との共生の立場から知恵を出し合うことが
必要と思われます。こうした湿地や野鳥保護に立っての調査、研究の状況をお聞きしたいと思います。
 湖沼の水質汚濁についてでありますけれども、小松の木場潟は全国でも最も汚濁の進んだ湖沼として
名高く、不名誉なことであります。今までさまざまな対策をとられているようでありますけれども、改
善は進んでいるのでありましょうか。
 また、河北潟は二十本以上の河川水路が流入し、県の環境白書のデータでは基準値をかなり超えてい
るのでありますけれども、このまま放置すれば汚濁は一層進むことと思います。対策はどうされるのか
お伺いをいたします。特に河北潟については、多くの自治体が隣接するのでありますし、県が主導権を
持っていかない限り実効性ある施策はとられないと思うのであります。どうぞよろしくお願いをいたし
ます。

斉藤晴彦環境部長答弁だが、現状認識が間違っている=渡辺――――――
 次に、邑知潟、河北潟におきます湿地環境の調査についての御質問がございましたが、邑知潟は近年、
白鳥等の飛来が増加をしておりますが、現段階では国際的な登録湿地認定基準には及ばないと思われま
すし、また河北潟はワシタカ類やカモ類が多く飛来する地域ではございますが、周辺近隣地一帯が本県
の基幹的農業生産地域でもございまして、カモ類等によります通年の農作物被害状況を勘案いたします
と、大変登録湿地の可能性というものは難しいのではないかと思われます。
 ただ、河北潟、邑知潟につきましては、県では鳥獣保護区に設定しまして生息環境の保全に努めてき
たところでございますが、今後とも生息環境や生息状況調査を実施するなど、自然と人間との共生を基
本にしまして、その保全に努めてまいりたいと考えております。
 それから、木場潟、河北潟の水質汚濁の状況と対策についてお尋ねがございました。平成四年度の木
場潟、河北潟の水質測定結果によりますと、有機性の汚濁物質でありますCODを代表して見てまいり
ますと、目標といたします環境基準値を大幅に上回っておりまして、この傾向は数年横ばいでござい
ます。
汚濁の主たる原因が生活排水でありますので、県では木場潟につきましては今年度、水質汚濁防
止法に基づきます生活排水対策重点地域の指定を行ったところでございまして、現在所管の小松市では
具体的な対策を織り込みました生活排水対策推進計画を策定中でございます。この計画が着実に推進さ
れますように小松市に対しまして技術的な支援を行ってまいりたいと考えております。また河北潟につ
きましては、これまで汚濁負荷量の調査を実施してきたところでございます。今後、専門家によります
対策委員会を開催いたしまして、河北潟に適した水質改善対策の検討を行いたいと考えております。
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【解説】
グラフが示す右上がりの汚濁進行
このデータが行政を動かした

 環境部長が答弁した、水質汚濁について「この傾向は数年横這いでございます」(赤字部分)との答弁
は明らかに間違っている。
 質問者も不思議に思ったのであろう。紐野氏から問い合わせがあった。私は、河北潟の10年来のデ
ータをグラフにして、右上がり傾向を説明した(資料参照)。
 その後知った話であるが、このグラフが議会の特別委員会で議題に上り、県が河北潟の水質浄化へ取り
組むきっかけになったといわれた。データが行政を動かした好例であろう。
 この紐野氏の質問を最初にして、次々に党派を超えた、河北潟の水質改善をテーマにした質問が続いた。
 こうした経過は、議会議事録を整理すると、市民活動が始まる前と後の質疑内容を読むとよくわかる。
                                     (渡辺 寛@ナギの会)

【資料】@グラフ「右上がりの水質悪化」
      

      (当時作成した水質データのグラフ。データは県環境白書より。EXSELの表を画像処理)
       (新しいデータをもとにしたグラフは、河北潟を考える会の活動のページで紹介)

     A議会の河北潟質疑/議会議事録抜粋
       その1 市民活動が始まる前の県会質疑
       その2 市民活動が反映した議会質疑
       その3 河北潟問題/最近の議会質疑

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