2001年3月、新しく公開質問状提出
慣行水利権や許可水利権、工業用水の遊休水利権問題などを指摘
公文書請求した当初から、河川管理のためには、河川の上流から下流までの水路と流量を把握
しなければならないのではないかと考えてきた。
河川管理者である県河川課から話を聞いても、どうもそうした意識が感じられない。
自分で調べるしかない。まずそのためには、農業用水の水路を調べよう。
浅野川と犀川からのすべての水利権資料を請求した。
これらを調べながら、「水利権」という不思議な世界にはまってしまった。
新たな疑問が数々出てきたため、改めて公開質問。
これらの経過は、「辰巳用水と辰巳ダム」のコーナーにまとめた。
ナギの会の会報にも掲載した。
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石川県知事 谷本正憲さま 2001年3月21日
ナギの会用水研究部会代表 渡辺
寛
犀川の水利・用水についての公開質問
私ども、ナギの会の活動の一環として、これまで、辰巳ダムや辰巳用水について、行政の公文書を
入手し、様々な角度から検証してきました。
この度、犀川・浅野川に関わる水利権資料を検討する中で、いくつかの奇妙な事実が浮かび上がり
ました。これらは、私どもの私的研究の枠を越え、県民、市民の生活あるいは石川県政や金沢市政と
深く関わるという認識から、河川管理者である貴職に率直におたずね尋ねし、河川行政に生かされる
よう質問状としてまとめました。
なお、これらの内容は、昨今の地球温暖化と気象、水質問題ともからみ、金沢市の治水・利水にも
関係すると考えられるため、広く行政人、議会人、環境NGO、農業関係者にもお知らせしますので、
速やか(3月末日まで)に文書での回答をお願い致したく思います。
質問1 辰巳用水・二つの水利権について
辰巳用水土地改良区が得ている用水の申請及び許可資料を見ると、「灌漑期以外は兼六園への引用
水として取水する」とあり、この記述以外に兼六園等へ流入する水の権利関係を示す資料はありませ
ん。
そもそも、辰巳用水は兼六園・金沢城への取水のために建設された専用用水として300年以上使
われ、時代を経てもその目的は現在までも変わらず、兼六園の曲水や市内の用水として利用され、景
観・親水・観光などに大きな役割を果たしていることは、県民市民共通の認識です。
一方、辰巳用水土地改良区の水利権は、灌漑のための私的な農業水利権であり、歴史的に見ると本
来の殿様用水という専用水路からの余水使用権と考えられます。
したがって殿様用水と称されてきた辰巳用水の水利権は、慣行水利権として確定していると考える
のが水利権についての判例、学説からの結論です。つまり1本の辰巳用水には2つの水利権(土地改
良区の許可水利権と兼六園等への慣行水利権)が併存していると考えられます。
この問題についての河川管理者としての貴職の見解を伺いたい。
質問2 辰巳用水慣行水利権の水利台帳への記載について
現在石川県が管理する水利台帳調書には、辰巳用水について、土地改良区の農業用水の水利権だけ
が記載されていますが、質問1のとおり「慣行水利権としての辰巳用水」の記載が必要と考えられま
す。
慣行水利権は昭和39年の旧河川法成立により犀川が2級河川として指定されたとき速やかに届け
出ることが必要だったものですが、その当時、慣行水利権についての理解や、農業用水との関連につ
いての理解が不十分であったため届け出がされず、水利台帳に記載されなかったものと考えられます。
届け出がなくとも、現在も生きて使用されている水利権は慣行水利権であることは、法解釈において
も明解です。
届け出がない場合で水利台帳に記載された大野庄用水の例もありますので、兼六園へ流入する殿様
用水・辰巳用水を河川管理の上からも、水利台帳へ記載する必要があると考えられます。
過去の事跡の調査を含め貴職の見解を伺いたい。
質問3 辰巳用水土地改良区の水利権の許認可事務について
辰巳用水土地改良区による昭和42年1月23日の許可申請資料を見ると、形式上河川法第23、
24、26条に基づく申請となっているものの、実際の内容は、東岩取水口前の頭首工建設のための
許可を申請しているだけの書類です。その後の許可期間満了による更新申請と更新許可の内容は、混
乱を極め、同時期の他の水利権許認可書類と比べても、順当な手続きを経たとは考えられないもので
す。
これらは、申請者と認可担当者それぞれが、水利権について不十分な理解の上で手続きを進めたも
のとしか考えられものです。
河川管理者・水利権許可者として、これらの調査に着手し、県民が納得できるうる説明を伺いたい。
質問4 犀川上流部の犀川ダムや上寺津ダムの運用について
辰巳用水の水利権は、昭和42年以前の慣行水利権をベースにしたものであり、既得水利権として
保護されなければなりません。これは、犀川ダムや上寺津ダムの特定水利権申請書類にも金沢市と石
川県の協定で「既存の水利権に支障なきよう運用すること」とあるように明らかです。
また、質問1のとおり慣行水利権に係る水量を考慮すると、年間を通して必要充分な流量確保が保
証されなければなりません。これらは辰巳用水取水口より上流に既設されているダムの放流で十分可
能であり、しかもこうした措置は河川法上の義務と考えられます。現在の辰巳用水への水不足は、東
岩取水口より下流にある上辰巳発電所へ水を落としていることに主原因があります。
こうした発電の特定水利権許可の際の協定を遵守することで辰巳用水への流量は確保され、農業用
水や兼六園への渇水問題は解決されます。
貴職の見解及び運用の改善について見解を伺いたい。
質問5 金沢市の工業用水道の水利権について
石川県と金沢市の共同事業・犀川ダム建設時、金沢市は工業用水の水利権として0.46t/秒の取
水権を得ています。しかしこの水は認可以来36年間取水されたことがありません。この認可は駅西
地区・港地区の工業団地開発のために許可されたものですが、将来にわたっても工業用水として利用
される事のない河川法上、典型的な遊休水利権と考えられます。
遊休水利権は、「逐条河川法」(建設省新河川法研究会)によっても「水利権を実行しない者は、権
利の上に眠る者であるばかりでなく、その遊休水利権が他の緊急かつ有用な水利権の成立の障害とな
り、河川の有効な利用を妨げる可能性が大である…」と厳しく戒められるものです。よって金沢市の
工業用水の水利権の存続は犀川全体の水利の整合性に混乱を与えるばかりでなく、違法に近いものと
考えられます。
即刻調査いただき、少なくとも次回更新時において廃棄処分されなければなりません。河川管理者
としての貴職の見解を伺いたい。
質問6 金沢市の工業用水水利権の破棄で河川環境改善を
昭和40年完成の犀川ダムは、金沢市の工業用水を確保するため、総量207万トンの水を開発し、
0.46t/秒の流量が犀川ダムから排水され続けていると考えられます。この流量は辰巳ダム建設の
目的の一つである「河川維持流量」の大半をしめるほどの膨大な流量です。
こうした問題は、かつて議論の俎上に登ったことがなく、犀川ダムで排出される流量と金沢市の工
業用水の関係、及び他の多くの水利権との関連を明確にする必要があります。また、こうした遊休水
利権の廃棄によりダム完成により既に開発された水の使用目的転用や運用改善により、新しい視点か
ら犀川の河川改善に役立てることが必要だと考えられます。
貴職のご判断、見解を伺いたい。
質問7 犀川ダム建設収支を明らかにし県民市民への負担軽減を
犀川ダム建設時に費用分担(アロケーション)をしているが、建設後の収支を明らかにし、金沢市
の工業用水開発に係る費用負担がどのようになっているかの説明をお願いしたい。また、本来、工業
用水の利用者から使用料として徴収されるはずの費用が反故になっているため、建設費用が市民・県
民へ転嫁されている恐れがありますが、どのような内容になっているか説明をお願いいたします。
金沢市とともに共同責任のある貴職の見解を伺いたい。
質問8 厳正なる許認可事務について
ある用水で更新許可ごとに次のような記述があります。
取水量:0.034t/秒(初年度の許可量)
0.034t/分(51年10月更新)
0.034t/日(61年3月更新)
単位が違うことにより、現在の取水量は初年度に比べ86400分の1になっています。これは、
許認可事務のミスと推察されますが、こうした水利権という物権にかかわる許認可事務において許さ
れるべきことではありません。
貴職の見解及び対策を伺いたい。
以 上
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