2002.10.29(2003.8.8改訂=政令を紹介した)
河川法第16条の変遷
明治河川法から平成河川法へ
治水から利水、河川環境保全へ
旧・工事実施基本計画から
新・河川整備基本方針・河川整備計画へ
明治29年の旧河川法(明治河川法)は昭和40年に廃止され、新河川法(昭和河川法)となった。
改正の理由は、治水中心から利水を考慮したもので、日本の高度成長を支えるための発電や工業用水開発のためであった。直接の動機は熊本・筑後川上流の「蜂の巣城の闘い」として有名な松原・下筌ダム反対闘争である。80件以上の裁判が提起され、明治河川法下の河川管理では到底対処できないことから、強力な政府・自民党の指導力のもとで昭和39年に新河川法として成立した。
全国知事会や全国の農業団体は、この改正に大反対した。農業用水との整合性が保障されないとの理由だった。政府は、慣行的な農業用水も「許可とみなす水利権」として認める条文(第87条、88条)を設け、成立した。
この河川法の特色の一つは、水系を一貫管理するという水系主義をとっていること。その象徴的な条文が第16条の河川整備計画の事前作成である。計画高水流量を基礎に、さまざまな河川工事を整合性あるものにしようとしたのだが、この工事実施基本計画は、事実上形骸化された。平成9年現在、2級河川で、この工事実施基本計画が存在していたのは、全国で2718河川のうち、702河川、25.8%であった(表を参照=整理中)。石川県では60河川のうち、たったの8河川である。
こうした河川法形骸化の中で長良川河口堰反対運動が高まり、92年の地球サミット以後、河川環境保全を考慮した河川法が、平成9年に改正された。これが現行の河川法(平成河川法)である。
水系一貫管理の基礎的保障が第16条であるが、昭和河川法の「工事実施基本計画」が、平成河川法では「河川整備基本方針」と「河川整備計画」の2段階の整備方針となっている。
この平成河川法もいろいろ細部が改正されている。平成11年には、この16条も改正されている。大きな改正点は、1級河川で「事前に河川審議会の意見を聴かなければならない」となっていたのだが、これが「社会資本整備審議会」の意見を聴くことに変更されている。これがどういう意味を持つか、興味がある。
これまで国土交通省河川審議会は、全国の河川破壊、ダム推進等の国側の庇護者であったのだが、一方、国に重要な提言を行ってきた。この河川審議会の提言に耳が痛くなった国土交通省が、河川管理に河川審議会を無視しようという意識が動いたのが、この改正かもしれない。国会の審議の様子などを議事録などで調べたいと思っている。
以下、河川法第16条の変遷を示す。(渡辺
寛@ナギの会)
昭和河川法の16条 1964年(昭和39年)成立
第十六条
1 河川管理者は、その管理する河川について、計画高水流量その他当該河川の河川工事の実施についての基本となるべき事項(以下「工事実施基本計画」という。)を定めておかなければならない。
2 工事実施基本計画は、水害発生の状況並びに水資源の利用の現況及び開発を考慮し、かつ、国土総合開発計画との調整を図つて、政令で定める準則に従い、水系ごとに、その水系に係る河川の総合的管理が確保できるように定められなければならない。
3 河川管理者は、工事実施基本計画を定めるに当たつては、降雨量、地形、地質その他の事情によりしばしば洪水による災害が発生している区域につき、災害の発生を防止し、又は災害を軽減するために必要な措置を講ずるように特に配慮しなければならない。
4 建設大臣は、工事実施基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、河川審議会の意見をきかなければならない。
平成河川法の第16条 1997年(平成9年)成立
第十六条
河川管理者は、その管理する河川について、計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持(次条において「河川の整備」という。)についての基本となるべき事項(以下「河川整備基本方針」という。)を定めておかなければならない。
2 河川整備基本方針は、水害発生の状況、水資源の利用の現況及び開発並びに河川環境の状況を考慮し、かつ、国土総合開発計画との調整を図つて、政令で定めるところにより、水系ごとに、その水系に係る河川の総合的管理が確保できるように定めなければならない。
3 建設大臣は、河川整備基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、河川審議会の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、河川整備基本方針を定めようとする場合において、当該都道府県知事が統括する都道府県に都道府県河川審議会が置かれているときは、あらかじめ、当該都道府県河川審議会の意見を聴かなければならない。
5 河川管理者は、河川整備基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前三項の規定は、河川整備基本方針の変更について準用する。
(河川整備計画)
第十六条の二
河川管理者は、河川整備基本方針に沿つて計画的に河川の整備を実施すべき区間について、当該河川の整備に関する計画(以下「河川整備計画」という。)を定めておかなければならない。
2 河川整備計画は、河川整備基本方針に即し、政令で定めるところにより、当該河川の総合的な管理が確保できるように定めなければならない。この場合において、河川管理者は、降雨量、地形、地質その他の事情によりしばしば洪水による災害が発生している区域につき、災害の発生を防止し、又は災害を軽減するために必要な措置を講ずるように特に配慮しなければならない。
3 河川管理者は、河川整備計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、河川に関し学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。
4 河川管理者は、前項に規定する場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
5 河川管理者は、河川整備計画を定めようとするときは、あらかじめ、政令で定めるところにより、関係都道府県知事又は関係市町村長の意見を聴かなければならない。
6 河川管理者は、河川整備計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
7 第三項から前項までの規定は、河川整備計画の変更について準用する。
改正された16条 1999年(平成11年)改正
第十六条
河川管理者は、その管理する河川について、計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持(次条において「河川の整備」という。)についての基本となるべき方針に関する事項(以下「河川整備基本方針」という。)を定めておかなければならない。
2 河川整備基本方針は、水害発生の状況、水資源の利用の現況及び開発並びに河川環境の状況を考慮し、かつ、国土総合開発計画及び環境基本計画との調整を図って、政令で定めるところにより、水系ごとに、その水系に係る河川の総合的管理が確保できるように定められなければならない。
3 国土交通大臣は、河川整備基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、社会資本整備審議会の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、河川整備基本方針を定めようとする場合において、当該都道府県知事が統括する都道府県に都道府県河川審議会が置かれているときは、あらかじめ、当該都道府県河川審議会の意見を聴かなければならない。
5 河川管理者派、河川整備基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前三項の規定は、河川整備基本方針の変更について準用する。
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2002.10.29(渡辺
寛@ナギの会)
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