愛知県河川堤防緊急強化検討会報告書

第4編 その他破堤箇所の復旧方針


2004.8.29 掲載


第4編 その他破堤箇所の復旧方針


1.復旧方針

 平成12年9月11日から12日の豪雨により愛知県管理河川において破堤した箇所は、新川の西区以外にも9カ所を数え、その内訳は新川、新地蔵川でそれぞれ1箇所、境川水系の右支川で5箇所、矢作川水系の支川で2所であった。これらの破堤箇所は、総雨量で500mm以上降った庄内川の上流部から名古屋の東部から知多半島のつけ根に当たる地域に多く分布している。いずれも西区新川の破堤箇所に比べその破堤延長も小さく、外水による氾濫はあったものの、その被害は小規模であった。

 従って新川のように河川激甚災害対策特別事業による一連の区間の改修でなく、通常災害の原型復旧を目的とする災害復旧事業や改良復旧を目的とする災害関連事業により、局所的な短い区間の改修を実施する。また、既往の改修事業を促進中であった河川については、改修計画にあわせた事業を実施する。

 堤防強化の工法は、個所によって異なるが、構造物等の影響があった個所については、全面被覆により補強を行い、その他の個所においても護岸等強化を計る予定である。堤防の破堤機構については、必ずしも究明できていないが、工事施工時の堤防状況など、今後さらに資料の収集に努めて改修計画に反映していくこととする。


2.被災状況と復旧工法

 ここでは西区新川以外の破堤箇所の状況、改修経過、復旧工法等を以下にまとめる(表4−1)。これらの破堤箇所については近傍に雨量・水位観測所が存在なく、しかも、破堤状況の証言も少なく、またボーリング調査が実施されていないのでその破堤機構を深く追求することはできない箇所もある。

(1)庄内川水系
 新川は河口から21.05km上流で破堤している(図4−1)。新川は全川総合治水により年降雨確率5分の1の規模で改修中であり、新川の最上流部に当たるこの区間は、遊水地計画がある。破堤箇所の直下流川表側には鉄塔、川裏側には落合排水路の流末があり、これが樋管により新地蔵川のほうへ流入している。被災状況ははっきりしないが、洗堰からの洪水流が鉄塔等の障害物で乱され、土羽の堤防川表側が侵食を受けた可能性もある。天端は舗装してなかった。今後の復旧としては、前面にブロック張を実施する予定である。

 新地蔵川は、新川合流地点から50m上流右岸が破堤している(図4−1)。川表は昭和30年代に施工された5分勾配のブロック積低水護岸、その上部は2割勾配の土羽で、天端の舗装がなく、川裏は土羽であった。護岸より上部の土羽部分の堤防が破堤したが、破堤の状況は証言もなくはっきりしない。今後の復旧としては、前面にブロック張を実施する予定である。

(2)境川水系
 境川水系では下流から、石ケ瀬川、正戸川、皆瀬川、井堰川の右支川4河川5箇所で破堤している。

 石ケ瀬川は境川合流点から1.5km上流で2箇所破堤している(図4−2)。この地点では石ケ瀬川改修計画にあわせてJR武豊貨物線橋梁を改築工事中であった。そのため橋台、橋脚設置のため鋼矢板による仮締め切り中であったが、従前の流下能力相当は確保できるよう工事を実施していたところ、今回計画を上回るような流量の洪水が流れてきた。 橋梁の下流左岸と上流右岸と、2カ所で破堤しているが、このうち下流左岸は越水により破堤、上流左岸は次に述べる大池川、石ガ瀬川上流部の破堤による氾濫水湛水のため、堤内地側から破堤したものと考えられる。復旧工事については、橋梁改築にあわせて改修計画どおり護岸工を実施する。

 石ガ瀬川ではもう1箇所、境川合流地点から2.2km上流の右岸が破堤している(図4−3)。
 この地点は直上流右岸で普通河川大池川が合流するとともに河道が左に大きく湾曲している水衝部で、もともと計画断面以上の川幅が確保できている区間であり、越水することなく高水の前面土羽部分が侵食されて破堤している。復旧工法については、築堤とブロック張の護岸工を実施する。なお右岸支川大池川は、石ケ瀬川合流点直上流で石ケ瀬川より先に破堤している。

 皆瀬川は境川の合流点から2.8キロの上流左岸で破堤している(図4−4)。国道23号線と主要地方道の瀬戸大府東海線を結ぶランプの橋梁がある部分である。川表前面には護岸等があったが、越水し堤防が侵食されて破堤したのではないかと推定される。復旧工法は築堤と表裏ともブロック張護岸を実施する。

 正戸川は境川の合流点から上流1.45km右岸が破堤している(図4−4)。越水により堤防が侵食されたのではないかと推定される。復旧工法については環境保全型ブロック積護岸を実施する予定である。この区間の断面は計画に比べ広く、境川背水区間で堤防高も高いが、前後の区間が水衝部でさらに広い河積が確保されている区間の中間地点である。

 井堰川は境川の合流部から850m上流で破堤している(図4−5)。境川背水区間で井堰川左岸堤が低く、いわゆる霞堤で、境川の右岸堤防との挟まれた区間が遊水地的機能を有している。この越流堤は護岸も舗装もなかったが、復旧は全面的に被覆して対応する。

(3)矢作川水系
 矢作川水系の広田川は安藤川合流点から11.2km上流の右岸で越水により堤防が侵食されて破堤している(図4−6)。河川改修の予定があるが、まだ未改修の地点である。5分の1の120トンのおよそ3分の1しか能力がなかった。また直下流では菱池の遊水地計画等もある。
 復旧工法としては、川表側はコンクリートブロック張、川裏側はコンクリートマットを使用する。

 次に、矢作川水系の籠川は矢作川の合流点から6.7km上流右岸で破堤している(図4−7)。5.8kmまでは改修済、その上流である破堤箇所は未改修で川表は土羽であった。水衝部が侵食され、破堤している。復旧工法として環境保全型ブロック積を実施する。この破堤箇所を含めて約600mの長い区間で水衝部を中心に侵食を受けているので、原型復旧事業ではなく改修計画に合わせて復旧する災害関連事業を投入し3カ年で改修し、下流部の改修区間と繋げる。



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