第5編 まとめ
1.県内河川の現状
水害発生の原因は異常な豪雨にあることはもちろんであるが、雨水の流出形態の変化や暮らしの場の変化も水害の発生を起因するものとなっている。すなわち、都市化にともない流域の貯留浸透機能が低下し、短期間に洪水が集中するという現象が起こっている。また県内には濃尾平野を始めとして、地下水の過剰揚水を原因とした地盤沈下により、排水しにくい地域が多数、存在している。これら、低平地等への社会経済基盤の進出や都市化は、高潮や洪水による災害に対する潜在的な危険性を高いものにしている。
県内の河川がひとたび氾濫すればその想定氾濫区域は県土の4分の1にも及び、その区域内には約300万人の人々が住むとともに30兆円を超える資産が集中している。氾濫区域内では、工場等生産活動を支える企業が低平地に集積し、地下街・地下鉄など地下利用も進み、ライフラインが集中していて、高度な都市的土地利用が進展しているが、その一方、水害に対する備えは万全とはいえない状況となっている。
愛知県が管理している中小河川は303河川、延長は約1,900kmある。そのうち計画的改修が必要な主要河川1,300kmについて、時間雨量50mm計画〈概ね5年に1回相当の降雨〉に基づき、河川の排水能力を評価すると、完成された河道の割合は約半分にすぎない状況になっている。
2.堤防強化の基本的考え方
中小河川は、大河川に比べて計画規模が小さく整備途上である河川が多いため、洪水の氾濫する危険性が非常に高い。したがって、これらの中小河川改修については、洪水に対して粘り強い堤体構造とするために、堤防強化を考慮すべきである。すでに大河川で適用されつつある浸透・侵食・越水に耐えうるような安全性を確保する必要がある。
しかし、堤防強化は財政に限りがあるため、過去の洪水災害、整備状況、背後地の土地利用状況を踏まえて、効率的に実施する必要がある。
3.堤防強化の検討
今回の東海豪雨で甚大な被害を受けた新川、天白川などの河川については、浸透・侵食・越水について検討を行い、所要の安全水準が確保できるよう一連の区間において堤防を強化する。すなわち、新川においては、降雨や河川水を浸透させない、そして浸透水を速やかに排出し、万が一越水しても急激に壊れない堤防構造として、復旧・補強する。また、天白川においては降雨や河川水を浸透させない、そして浸透水を速やかに排出する堤防構造として、河道拡幅に伴い築堤する。
その他の破堤あるいは被災した河川については、災害復旧事業等で強化工法が実施されることとなるが、採択基準から局所的な限られた区間にとどまるものが多い。改修計画があり、今後事業化が計られる河川については強化工法を採用できるが、改修計画のない河川についても、何らかの手法で粘り強い堤防とすることが重要である。例えば、堤防天端の舗装など浸透しにくくし、降雨時・越水時の堤防の弱体化を防ぐ対策を実施する必要がある。
4.その他の取組
堤防強化については、これまで記述したように粘り強い堤防を目指すが、当然完璧なものは期待できない。そこで、堤防強化などの治水対策とともに水防活動などの危機管理の取り組みも堤防を守るための支援策として有効であり、そのために水防情報の提供に努める。
あわせて、住民の避難時に役立つような情報提供をより積極的に行うべきである。
さらに、下水道などの内水対策と連携をとり、流域での総合的な治水計画をより強力に推し進めるべきである。
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