いいね金沢??? 「いや〜ね金沢」


「西の雲」から考える
「まちなか彫刻設置委員会」のこと


 この「西の雲」という作品が、この公園に設置されるのが決まった資料をみて疑問に思った点――。

 資料に「市役所・犀川緑地にて開催された現代彫刻展'99において優秀作品とされたものである。」という記述がある。しかし、この作品は、その2年前の「第17回現代日本彫刻展(1997)」で公募入選したものである。開催地が宇部市で、作者は次のようにコメントしている。
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 「西の雲」は宇部の街にかかる雲、あるいは宇部の街からはるばる僕の住む街、金沢までやってきた雲が雨を地にふらしている情景を構成しました。作品設置の日まで一度も訪れることのなかった宇部の風景を、あれこれと思い描きながら制作を続けました。瀬戸内の海と島々、青い空に浮かぶ雲、中国地方の山がちな地形と屋並、この美しい風景の中に僕の作品がとけこんでいけたらと思います。
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 「現代彫刻展'99」が、公募展なのか一般展示会なのかよくわからないのだが、「市役所・犀川緑地で開催」とあるから、石川県か金沢市の主催だったのかもしれない。
 普通、既に公募展で入選した作品を別の公募展に「応募」することはないだろうから、「優秀作品として評価された」という記事に違和感がある。(小生、この世界は全く知らない。こういうこともあるのだろうか?)

【参考
  第17回 現代日本彫刻展 1997(H9)
  会 期 1997年10月1日〜11月10日
  会 場 宇部市野外彫刻美術館(山口県宇部市常盤公園内)
  テーマ  煌(きらめく)
  入賞
   ■作 者 土井 宏二
   ■作品名 西の雲
   ■素 材 ブロンズ
   ■サイズ 180×250×165 cm
   ■重 量 1,500 kg
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 この作品が金沢市泉ヶ丘おあしす公園に設置された経緯をメモしておく。

その1――――――――――――――――――――
 「まちなか彫刻設置委員会」というものが金沢市にあり、この委員会の検討を経て、市内の公共的場所(公園や校庭)に設置される。
 この委員会が金沢市内のあちこちにある銅像やモニュメントの発信元のようだ。委員会でどのような議論が行われているのか? おそらくこうした内部資料が公開されるのは初めてであろう。

委員の名簿(平成11年当時)
・小松 暁一
 金沢美術工芸大学名誉教授・環境デザイン専攻(通算就任年数5年9カ月)
・石田 康夫
 元金沢美術工芸大学教授・彫刻専攻(同4年)
・清水 良治
 金沢美術工芸大学教授・彫刻専攻(同5年9カ月)
・佐子田 正(委員長) 金沢市助役(同4年)
・山本文男 金沢市建設部長(新任)

その2――――――――――――――――――――
 経過を紹介
 平成11年度第1回まちなか彫刻設置委員会について
                     H11.12 緑と花の課
 1 開催日時 12月10日(金)(略=以下詳細略)

 2 場 所   本庁(略)

 3 出席者 佐古田委員長、小松委員、石田委員、清水委員、山本委員(建設部長)、幹事3課長(まちなみ対策・用水みち筋・生活道路)、事務局(緑と花の課)水野課長、笠野主査、次郎間主事

 4 審議事項
  (1)平成9年に設置した作品(2年間リース)3体の取扱い。
  【抽象彫刻】
  1 つながれた石part2(略)
  2 通点       (略)
  3 Colony   (略)
  (2)平成11年度現代彫刻展の作品購入について
  【抽象彫刻】
   1 森に生きる(人)(略)
   2 西の雲    (略)

 5 会議内容 (議事録)
事務局(水野課長)
 ・冒頭 事務局及び幹事挨拶
  審議事項(1)について説明。この12月一杯でリース期間が切れるのでその後の取扱いについてお諮りしたい。
清水委員
  ・このまま置いておくことに何か不都合があるのか?
事務局
  ・苦情等もなく、その場所に馴染んできたと考えている。
小松委員
  ・作者で返してくれというものがいるのか?
清水委員
  ・それは大丈夫だ。
小松委員
  ・出来れば買い上げてそのまま設置の方向でお願いしたい。
佐古田委員長
  ・製作費等でだいぶお金がかかっているとは思うが、ご本人の了承を得て買い上げるという事でいきましょう。
事務局
  ・審議事項(2)について説明
清水委員
  ・提案の2作品について説明
   長谷川作 彫刻の会の入賞作品で彼にとって記念すべきもの。黒御影石1本から掘り出した力作。
   土井氏  全国規模の展覧会の入選作品。金沢市街とその上にわき上がる雲と雨を表した金沢に思い入れのある作品。
   どちらも全国レベルの購入に値する作品である。
事務局
  ・設置候補地の説明
佐古田委員長
  ・木倉町広場は少し狭いな。
事務局
  ・町名になじむよう木材をあしらいたいと思っている。
清水委員
  ・片町広場は、場所柄もあり(メンテナンスの楽な)石の作品のほうが良いのではないか。
小松委員
  ・あんまり後ろでは作品が引き立たない。中程の憩いのスペースが良いのではないか。
清水委員
  ・そうですね。そこのほうが良いですね。そしてブロンズの土井氏の作品は泉ヶ丘広場に合うと思う。
小松委員
  ・泉ヶ丘広場での設置場所はどこを考えているのか。
事務局
  ・道路からも見えて、かつ、広場内に読書スペースがあるので、その付近を考えている。
小松委員
  ・もう少し奥の方が良い。設置する際は作者に作品の向き等を確認するようにして欲しい。
佐古田委員長
  ・小松委員の意見でよろしいですか。
石田、清水委員
  ・それで良い。
佐古田委員長
  ・それでは長谷川氏の作品は片町広場に、土井氏の作品は泉ヶ丘広場にそれぞれ指示のあった位置に設置するという事でまとめたいと思います。
事務局
  ・ありがとうございました。清水委員には購入作品の仲介等よろしくお願いします。本日の審議事項は終了しましたが、委員でお気づきの点がありましたらお聞かせください。
清水委員
  ・以前、天神橋を渡った川岸園に彫刻を設置する話があったが立ち消えになった。良い場所なので是非考えて欲しい。出来れば美大の学生のコンペティションにして活動の場を与えて欲しい。その場所にあった作品が出来ると思う。

その3――――――――――――――――――――
◆随意契約について
   記
1 購入彫刻 西の雲
2 購入費 4000000円(消費税及び地方消費税は別)
3 契約相手先 土井宏二(彫刻作者・作家暦添付)
4 根拠法令 地方自治方施行令第167条の2第1項第2号
5 随意契約(購入)理由
 当該彫刻は市役所・犀川緑地にて開催された現代彫刻展'99において優秀作品とされたものである。今回、まちなか彫刻設置委員会(要綱及び委員名簿添付)の答申を受け、泉ヶ丘広場に設置することに決定したものである(委員会報告添付)。また当該彫刻は1体のみ存在するもので、所有権は作者が有しており、購入にあたっては作者との随意契約となる。

◆検査調書(物品用)
 物件名等 緑と花の課 西の雲  (略)
 契約業者名 (略)
 契約金額 4,200,000
 納入期限(略)
 納入期日(略)
 検査年月日(略)
 検査場所 緑ケ丘広場
 (その他 略)


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