以下のものは、「かなざわ森づくり学校中級」(金沢市民芸術村エコライフ工房1998)
修了にあたって報告したものである。
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河北潟湿地回復計画 1998.7.22(渡辺 寛@ナギの会)
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1)提案のためのキーワード
 @湿地をめぐる働きと保護運動
  諌早湾の「ギロチン執行」で湿地の持つ深い意味が広く理解された。これに対し、
  32年前の河北潟干拓事業の絶対的損失の確認をしておく必要がある。
  湖沼の再生の課題は、水質浄化だけでなく、特性に適合した生態系の回復である。
  「沿岸域の修復にはまずは本来の湖盆形態へ近づけることが必要であり、結果とし
  て水生植物帯が回復し、水生生物の再生産の場が復活する。最初からあるはずのな
  い場所にヨシを植えたり、人為的に先走った工事をしても本物の沿岸帯を再生する
  ことはできないことを認識する必要がある。」(沖野外輝夫,湖沼の損傷と再生,環
  境と公害,1993)

  ex1.イタリアのポーデルタ地方の湿地回復計画(干拓地の復元:碇山・井上調査)
  ex2.アメリカフロリダ州湿地再生計画(蛇行型の河川改修、堤防を取り除き復元)
    (※某研究所がホテイアオイで河北潟の水質浄化実験をしているが論外である)

 Aビオトープと湿地の賢明な利用(ワイズユース)
  ラムサール条約で国際的に湿地の保護を求めている。
  英  国:53カ所
  イタリア:46カ所
  オーストラリア:40カ所
  ●2ケタ以上指定している国が18カ国ある。日本は7カ所。
   (※資料:ラムサール条約参照)

 B新河川法の成立
  同法第1条に、治水、および利水など河川の適正な利用とともに、河川環境の整備
  と保全が明確に法の目的として明記された。
  また、堤防沿いの河畔林や湖畔林を河川施設と位置づけたり、河川整備計画の決定
  に住民の意見反映を義務づけた。
  ◆川と河畔林、湖沼と湖畔林は一体の物もの。
   《湖畔林 → ヤブ → ヤナギ → スゲ → ヨシ帯 → 浮葉・沈水植物群》
   立体的な堤防を考慮する必要がある。現在は直角のコンクリート護岸。

 C絶滅危惧植物の保護と湿地性植物
  レッドデータブック資料(1989)によると、絶滅種〜現状不明種併せて895種。
  県内でのリストは45種。原因は開発と採集。
  ◆絶滅とされている種:マツバラン、カザグルマ、オニバス、オオアカバナ、ヒシ
             モドキ、ヒメミミカキグサ
  ◆絶滅寸前と指摘される種:ヒナラン、エチゼンダイモンジソウ、フジバカマ
  ●これらの種の生育環境は圧倒的に、河川、湖沼など湿地性のものである。

 D生態系と低草木の意味
  金沢城址整備で本丸跡で低草木が昨年伐採された。その中で春先に実をつけるニワ
  トコ95本が5本となり、小型の鳥(メジロなど)の繁殖に致命的打撃を与えた(
  巣立ち直後の幼鳥に必須)。
  環境整備には低草木の保全が欠かせない。中州などの「雑草の伐採」にも問題があ
  る。
  見てくれのいいだけの整備ではなく、生態系をふまえた整備が望まれる。

 E盛り土による農地整備より輪中の復活を
  干陸式(干しあげ干拓)の干拓は、地盤沈下を起こす。
  現河北潟は干拓後、最大170センチもの地盤沈下を起こしている(写真)。
  東部での農地整備は盛り土方式。広大な農地を延々と1m50pほど盛っている。
  浸水、冠水対策に輪中の復活で低予算で可能ではないか。

2)以上の視点から提案のコンセプト
 @河北潟の自然の保護保全を図る。
 A河北潟干拓の反省、総括を行う。
 B河北潟のワイズユース(賢明な利用)として。
 C河北潟の新しい多様な資源利用を体系化する。
 D河北潟をキーワードに新しい地域づくり。

3)具体的な施策と予算
 @現調整池の水面を10年計画で倍加する。将来は湖面の完全回復。(150億円)
 A逆水門を開放し、汽水湖への回帰(将来は全面撤去)         (無料)
 B徹底した近自然工法による湿地回復              (200億円)
 C河北潟の古名・蓮湖にあるようにオニバスの復活再生(復活水面利用)(1億円)
 D潟津地区のオニバス自生地の復元とビオトープ公園の造成      (5億円)
 E使用エネルギーは風力発電。数10機の風力発電基地建設     (70億円)
 F農業、漁業の回復                       (10億円)
 G新しい海洋・親水レジャーの拠点とする              (5億円)
 H現競馬場の廃止。湖面化(次善の策として競艇も考慮)      (50億円)
 I輪中建設など防災と農業復活                 (200億円)
 J日本を代表するビオトープ湿地回復実験地として国家事業として行う。
                 (おおよその予算。691億円と格安である。)

4)この計画のメリット
 @日本初の本格的湿地回復計画として国際的な評価を得る。
 A多くの自然派の観光客を招く。
 B周辺に自然派・エコ産業のネットワークの拠点として期待される。
 C能登への玄関として波及効果が期待できる。
 D特産品の開発、観光、レクリエーション開発。国際交流。歴史民俗の発掘。
 E植生の多様化により研究機関やビジターセンターの設立が期待される。
 F新しい土地利用の活性化。
                                   以上。
【水面倍加計画図面/解説】
  拡大図面/解説
  地図をクリックすると解説と拡大図面が出てきます。

【関連資料】
・汽水湖干拓・淡水化問題の経済的分析(中間報告)−河北潟干拓問題を事例として
  
宮本憲一,汽水湖研究,1991
河北潟問題解決のための予備的考察
  碇山洋,汽水湖研究,1994
・ラムサール条約


●報道にみる自然回復への動き
06/27 17:16 共同通信ニュース速報----------------------------------------------
水循環政策大綱を作成へ 利水と環境の両立目指す

 河川の上流から下流、海岸、地下水を含めた水循環を保全し水量を回復するため、環
境庁は二十七日までに、政府一体となった総合的な「水循環政策大綱」を作成する方針
を固め建設、農水、国土など関係省庁との調整を始めた。本年度内に準備会合を開き、
一九九九年度での閣議決定を目指す方針だ。
 河川水を水道や農業用水などに使う利水と自然保護のバランスをどう保つかが最大の
課題。建設省なども作成には前向きだが、中央省庁再編も絡み省庁間で水行政の主導権
争いも活発化しそうだ。

 環境庁は「都市化が進み増え過ぎた水需要を賄うのに、環境への影響の大きいダムや
河口堰(ぜき)などを新たに建設する事態を避けるため、その地域の河川が持つ水の量
に合わせ都市化などを制約する必要がある」(水質保全局)と、自然保護と両立できる
利水を求めていく考えだ。
 具体的には、土地の利用計画や環境影響評価(アセスメント)に水循環の視点を取り
入れる。流域を単位とした森林保全や河川上下流での保全費用の負担、都市部での雨水
の地下浸透の回復などを大綱に盛り込むことを検討している。
 一方、建設省も河川審議会で雨水の地下浸透や下水処理水の再利用など水循環の推進
を検討しているが、「河川には自然保護だけではなく利水、治水の役割もある」(河川
局)とし、環境庁主導でなく国土庁など利水省庁も含めた形での大綱作成を働き掛ける
方針だ。
 水循環をめぐっては、九四年に策定された環境基本計画を点検している環境庁の中央
環境審議会企画政策部会が(1)都市化や森林・水田の減少などで自然の水循環が損な
われ、河川流量の不安定や生態系の劣化など障害が発生している(2)循環の視点がな
く、縦割り行政で進められ、施策が体系化されていない―などの問題点を指摘した報告
を七月にまとめる予定。
 環境庁は水循環政策大綱を、六月十九日にまとまった「地球温暖化対策推進大綱」と
同様、環境基本計画を具体化する手段として位置付ける方針だ。 [1998-06-27-17:16]

06/20 12:00 共同通信速報----------------------------------------------
トンボや鳥がすむ工業団地 国内最大の自然環境復元 高知県

「工業団地を造成して自然を壊した見返りに」と高知県はこのほど、十市・水分地区流
通団地(高知市、南国市)の一部約三ヘクタールを動植物のための人工の湿地にした。
完成は来年三月で進出企業は未定だが、湿地に県はトンボやフナ、サギなどを“誘致”
企業や環境保護団体などが見学に訪れている。
 杉山恵一静岡大教授(生物学)は「自然環境を人工で復元したビオトープ(野生動物
のための生育空間)としては日本最大。種の保存を考えると、こうした区画が各地にで
きることが望ましい」としている。
 人工湿地は公園部分を除いて完成済みで、団地全体(約二十三・五ヘクタール)の造
成費は約八十七億円。
 中央に池があり周囲にショウブやセリなどが植えられた湿地には、既にフナがすみ、
水面から頭を出した流木の上でカメが日なたぼっこ。トンボが舞い、時々サギが羽を休
めている。県は、カブトムシのための腐葉土を詰めた穴や、ハチのために竹筒を積み重
ねた「住宅団地」も用意した。
 湿地は遊水池として大雨に備える目的もある。県企業立地課は「田舎ならありふれた
自然だが、都市化が進む高知市では貴重。市民の憩いの場のほか、学校の自然環境教育
などにも使ってほしい」としている。
 「ビオトープ」は一九七○年代にドイツなど欧州で本格的な取り組みが始まった。ホ
タルなどシンボル的な単一の種ではなく、多様な種の保全を目的にしている。日本では
九○年、埼玉県が公共事業で取り入れたのがきっかけで大都市圏を中心に各地に広がっ
ている。[1998-06-20-12:00]

7/04 14:59 時事通信ニュース速報----------------------------------------------
温暖化防止へ「平成の森」構想
=大都市に市民の植林で−建設省方針=

 建設省は四日、地球温暖化防止対策の一環として、三大都市圏に「平成の森」を造成
する方針を固めた。東京の明治神宮の森を手本に、市民の協力で植林して十ヘクタール
規模の森林を育て、温室効果ガスの二酸化炭素(CO 2)の吸収を狙う。年内に整備方
法を決め一九九九年度に事業着手する考えだ。
 構想では、住宅や企業などが集中し、CO 2を大量に発生する都市部で、自治体が選
んだ地域を植林などで森林に変え、市民の憩いの場としても活用する。
 森づくりは、市民に、CO 2を吸収する森の役割を理解し温暖化防止意識を培っても
らうため、市民参加で進める。建設省は関連経費を助成したり、市民や市民団体に植林
のノウハウを助言するなど全面的に支援する。
 平成に入って、地球環境への国民の関心が高まり、地球温暖化防止京都会議などで
樹木の効用が国際的に認知されたのにちなんで「平成の森」と名付ける。
 明治神宮の森は一五年に造成を始めた人工林。「平成の森」も五十年後には自然林
に匹敵する森に育てたい意向だ。
[1998-07-04-14:59]

7/02 11:19 朝日新聞ニュース速報----------------------------------------------
こども葉っぱ判定士募集、植物の二酸化炭素吸収量調査

 「こども葉っぱ判定士になりませんか」。夏休みを前に環境庁が、樹木の調査をして
植物の二酸化炭素の吸収量を調べる小中学校の子供たちを募集している。樹木は地球温
暖化をもたらす二酸化炭素を吸収する重要な役割を担っており、調査を通じて環境問題
に関心を高めてもらうのが狙いだ。
 樹木の蒸散作用と量を小枝を切って調べたり、樹木の葉一平方メートル、一年当たり
の二酸化炭素の吸収量を、資料をもとに計算したりする。例えばクスノキの二酸化炭素
吸収量は一平方メートル、一年当たり二・三キログラムある。さらに家や学校の庭にあ
る樹木の吸収量の調べ方や、他のエネルギー消費と比べる方法なども示している。
 調査結果を環境庁に送った子供たちには認定証が発行される。
 調査資料は、都道府県を通じて参加を希望する小中学校に配られる。問い合わせは、
環境庁大気保全局大気生活環境室
(03・3581・3351、内線6541、6546)   [1998-07-02-11:19]

06/23 06:02 時事通信ニュース速報----------------------------------------------
大沼など124湖沼で窒素規制=生活排水流入で富栄養化−環境庁=

 環境庁は二十二日、北海道の大沼など全国百二十四カ所の湖や沼を、水質汚濁防止法
に基づく窒素規制対象に指定すると発表した。二十三日に告示し、八月一日から施行す
る。
 富栄養化の指標となる窒素とリンの濃度が上昇したためで、前回告示(一九八九年七
月)段階の七十八湖沼から大幅に増えることになり、環境庁は「開発の進行で、生活排
水の流入が増えた」としている。
 このほか、ダム湖など新しくできた百三十六湖沼がリン規制対象に指定された。窒素
規制対象も含めた計二百六十湖沼の追加指定により、上流の旅館や飲食店など計四百八
十三事業場に国の排水基準(リン濃度が一リットル当たり十六ミリグラムなど)が適用
される。
[1998-06-23-06:02]

04/21 10:29 毎日新聞ニュース速報----------------------------------------------
<ゴールドマン環境賞>授賞式 山下日本湿地ネットワーク代表

【サンフランシスコ20日吉田弘之】
 草の根環境保護活動家らに与えられる第9回ゴールドマン環境賞の授賞式は20日夕
(日本時間21日午前)、サンフランシスコで行われ、約25年間にわたって長崎県・
諌早湾の干拓計画に対する反対運動を続けてきた「日本湿地ネットワーク」代表、山下
弘文氏(64)ら世界各国の6人の環境活動家が表彰された。日本人が国内の環境問題
で受賞するのは初めて。
 授賞式に先立ち同日午前、受賞者の記者会見が行われた。会見では、諫早湾干拓の問
題点や反対運動の歴史に関するビデオが上映された後、山下氏が「日本の環境問題への
取り組みは、先進国と思われているが、そうではない」としたうえで「日本は公共事業
の名の下に全国の45%の干潟を消滅させた」と行政を厳しく批判。昨年4月19日、
同湾の水門が閉め切られた瞬間から国内最大の問題になったと指摘し、その後、少しず
つ干潟が消滅している現状を説明した。
 また「今回の受賞は、日本政府、長崎県に対して大きな影響を持つものになると考え
ている」と話した。
 受賞者には10万ドルの賞金が与えられるが、山下氏は「今のプレハブの諌早干潟緊
急救済本部の補修や、念願だった有明海干潟研究所の設立資金に使いたい」と語った。
 今回のゴールドマン環境賞では、山下氏のほか、米国で9歳のころから産業廃棄物問
題で活動を続けている10代の女性や、ハンターから渡り鳥を守る活動を続けているイ
タリアの女性らが受賞した。
 山下さんらは22日にワシントンで、世界最大の科学教育団体である米国地理学協会
で講演を行う。  [1998-04-21-10:29]

4/08 08:24 共同通信経済ニュース速報----------------------------------------------
湖沼や湿地の生態系保全へ 来月4日から締約国会議

 河川や湖沼、湿地、干潟といった「内水域」の生態系を守るための計画づくりを今年
から国際的に進めることが8日までに固まった。5月4日からスロバキアのブラチスラ
バで開かれる生物多様性条約の第4回締約国会議で正式に決議を採択する。
 水質汚染や開発による生息地の破壊で淡水魚や水鳥が絶滅の危機にひんするなど、内
水域の生態系破壊は世界的に深刻化しているが、総合的な保全の取り組みはほとんど行
われてこなかった。
 諫早湾(長崎県)の干拓や藤前干潟(愛知県)の埋め立て、ダム建設など、日本国内
の開発計画に影響を与える可能性もありそうだ。
 条約事務局(カナダ・モントリオール)によると、干潟などの内海のほか、湿地や湖
沼、河川、地下水まで含めた淡水域の生態系が保全計画の対象。
 2005年ごろまでに生物の種や数の調査を実施。ダム建設、河川改修などの開発行
為や、漁業、有害化学物質や土砂の流入がこれらの生態系に与える影響の調査研究を国
際的に進める。
 日本各地で問題になっている魚のブラックバスやコクチバスのように、海外から持ち
込まれた移入種が、もともとの生態系に与える影響についても調査する。
 これらの研究成果を基に、各国内や国際レベルで、内水域の生態系を守り、将来にわ
たって持続的に利用するための行動計画をまとめる。
 内水域には、世界の魚の40%が生息。食糧生産や飲料水の供給、レクリエーション
の場などとしても人間生活に大きな役割を果たしている。だが、人口増加や開発などに
よって環境破壊が進み、世界の淡水魚の2割が絶滅の危機にあるといわれている。
 日本でも、京都府などにいたミナミトミヨと秋田県田沢湖のクニマスが既に絶滅。タ
ナゴの仲間を中心に15種類以上の魚が絶滅の可能性が高いとされている。 (了)
[1998-04-08-08:24]

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