2002.9.1 掲載
「金沢の議論は、大が面倒みるという おごり」
単独行政をめざす内灘町の姿勢
以下は、内灘町町の岩本秀雄町長の市町村合併についての姿勢である。
田中祥次議員の「時代の流れを考え、市町村合併も視野に入れたらどうか」との質問に対する町長の答弁である。(2001年3月14日)
(議会の会議録から抜粋。かなり誤字・誤植が多いがそのまま掲載。中見出しは渡辺)
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◆合併の発想は、国の借金645兆円、地方の借金180兆円から
また、ご承知のとおり国政も地方行政も今大きな転換期を迎えておりまして、ご指摘のように石川県内でも市町村合併の動きが表面化してまいりましたが、私は内灘町長として町民の皆さんの熱い期待とその意思を尊重して、近い将来、豊かで個性のある市制施行を目指して全身全霊を傾注して町政運営に臨む所存であります。どうぞ議員各位並びに町民の皆様にはさらなるご協力、ご理解、ご支援を賜りたいと心からお願いを申し上げます。
また、今ほどこの中に今3,300の、ご指摘のように市町村が全国ございますが、自治省の考え方としてはこれは約3分の1の1,000ぐらいの市町村にまず統廃合、合併というものを求めているということは現実でございます。それと、合併に対する特例債というものも掲げてあります。
しかし、ご存じのようにこの合併の出どころというのは、もともと国が645兆円という非常に膨大な、1人当たり国民が500万からの借金財政に陥っておる、この我が国の財政基盤をどうするかというのが地方分権のまず一番最初の私は発想だと思うんです。
それに、やはり各自治体も地方債も非常に180兆余りの借金財政、こういったものをやはり今後、国も地方もそういう一つの地方時代という、分権の社会というものを構築しながら、そういう財政改革というものは裏に隠れた、私は大きないわゆる政策でなかろうかというふうに思うんです。
◆明治、昭和の大同合併を振り返る
ということは、やはりご存じのように昭和の30年代のこの大同合併、このときにも石川県でこの明治22年から村制がしかれて今日まで単独でやってこれたのは内灘なんです。内灘は、ご存じのように非常に貧しい一寒村として、出稼ぎで非常に貧乏な苦しい歴史があるんです。
それがちょうど漁師も、やはり出稼ぎができなくて、そしてそういう時代にちょうど接収反対闘争が、米軍試射場反対闘争が勃発して、そのときに初めてそういった一つの大きな内灘町の転換期を、まず第1の転換期を私は迎えたと思うんです。
その中で30年代の合併のときに、内灘はいいのか悪いのか考えると、貧しいから、あるいはそういう一つの過激な米軍の闘争というものがある町を嫌われたのかそれはわかりませんが、そういう今から考えるとやはり内灘単独で今日来れたのも我々の先人なり、そしておられる諸氏の皆さんの私はご協力、努力のたまものだと思うんです。
これは幾つか今、田中議員さんからどうだろうと、最後は内灘頑張っとたら、これは一番小さい町になるんないかいやというご指摘があるんですが、私はこの問題はしっかりやらなきゃいかんというのは、議会の皆さんの中でも議論をしていただきたいなというのが本当の気持ちなんです。
◆町長選挙の公約が「内灘町の単独市政」
これはやはり市町村合併というのは町民がやはり発議でもって決めていただく。その前段である、代表であるやはり議員の皆さんが議論をしていただくことが私は先決だと思うんです。
ただ、町長としてこの今回の選挙に向けて私の一つの大きな公約としては、単独市制をということの姿勢を打ち上げてまいりました。
◆合併に走るのは危険。内灘町は健全財政、福祉も充実
これは、幾つかの要素があるんです。先ほど申しあげたように昭和33年代の合併、今度は17年の3月までの第2次の大型合併、それから次がまたあると思うんです。それまで慌てて失速するような議論を、議論はいい方向の議論はいいと思うんですが、余りにもほかの状態も見ずして、この合併の方向に走っていくというのは非常に私は危険だというのは、町民の福祉向上が停滞する危険性が非常に大きい。これはまさしくご存じのように内灘町は9年、10年、11年、この財政指数のバランスを40市町村で見ましても、非常に平均して上位三、四番目の中にランクされております。非常に財政規模もいい。
◆合併で除雪費用は個人負担になる
今、ご指摘のように雪の除雪にしても、うちは1億2,000万近く、ご指摘のように大きなお金がかかりました。あんな大きな金沢が2億幾らなんです。これはどうかというと、金沢の方は幹線道路だけはしっかり除雪しますが、その小さいとこへ行きますと全部個人が負担しています、除雪に。全部個人が近くの業者にお願いをして、毎年負担をして除雪をしてもらう。金沢ともし合併と、こうなるとそういう問題が一ついきます。
◆合併で消雪負担も――
それからもう―つは、消雪の問題。これもうちは非常にほかから見ますと一部の負担もとっておりませんし、ほかの町は維持管理費取っております、各町民の受益者負担というのを。これもありません。
◆公共下水道投資は二重の負担
それから、大きな問題としてはやはり公共下水道。これは石川県内でうちは90%以上もう投資が進んでおるんです。そうすると、もその分を二重のコスト負担になってまいります。今までせっかく90%で、石川県で一番やったものが、今度ほかへ行くとその分また払ってやらないといかんという状態が生まれる可能性が出てきます。
◆公民館、スポーツ、文化活動も――
それから、公民館活動。これはまさにこれからの地域のいわゆる生涯学習、そういった少子・高齢化に向かって地域の振興、あるいはそういったものの文化活動あるいはスポーツ活動、あるいは地域の住民活動の中でやはりこれからの潤いのある活動をやっていく、この拠点になる公民館。これも各町会に一つずつあります。金沢はありません。どこもありません。そして建てるとすると半分が地元の町会負担で、中へ人れるものも町会負担。これ新聞に出ておるんです。これ全部うちは、全部全額今までは町が負担をし、またそこに一人一人の主事を配置しておる。こういうところは1カ所もない。
◆福祉も――
それからもう一つ、大きく言うと福祉の問題ですけども、おふろの問題。60歳以上64歳まで100円、65歳からゼロ。これだけでも大体これを換算して三百六十何円でしたか、もし仮想、入浴料としてもらった場合に、これはまさに無料でやっておるのが四千五、六百万、これを福祉としてお返しをしておるんです。それにバスがあり、維持費があり、まさに七、八千万の金をお年寄りに、目に見えない形で福祉として還元をしてあります。これも石川県にはありません。
◆学童保育も――
それからもう一つは、やはり学童保育。これも160名です。160名の5カ所で学童保育をご存じのようにやっておりますが、これもまさにほかにはない。
ないもの、本当に私はこれも先人や議員の皆さんが鋭意努力をされた、町民の最もすぐれた町だというふうに思うんです。
◆文化面でも――
それと文化です。これも先般も「内灘愁歌」が出ました。これは五木寛之先生が内灘を愛していただきまして、「内灘愁歌」、内灘の町の歌を森進一、尾崎紀世彦に今度発売、そういったものをうち町の非常にいいメロディーで内灘の砂丘とアカシアと、そういう何万年とはぐくまれた砂丘を歌ってある。
◆内灘という全国的ブランド名が消える
これは、皆さんもご承知だと思うんですが、私は名刺を持って建設省なりいろんなところへ行って陳情します。そのとき石川県と言いません。「内灘です」とこう言います。「ああ、きれいな名刺ですね。ああ、砂丘ですか」「闘争の町です」、いろんな評価がある。ブランド商品なんです。どこへ行っても内灘は全国の名前なんです。
これがもし合併すると消えてしまいます。短絡的にその一期間の歴史でそれを切るという議論は、私は非常に危険だと。やはり、そういう議論をやる前に、そういった議論を積み重ねて、そしてどうやるんだということ。
◆合併は失速する意見。サービス低下を招く
例えば、広島にも広島市の中に町が真ん中にあって、市に入れないんです。入らない。なぜ入らんか。そういう大きいとこへ入ってサービスが低下すると、こういうことなんです。
今、野々市もそうなんです。昭和20年代から金沢とこうやっておる。押野が一遍入ったけど、全沢へ入ったけど、いや、だめやと出ていった。あるいはまた北部の方にも40年たつ。いまにきりああいう裏へ行くと、全く整備がなされていない。こういう実態をよく議論をして、よく見ることが私は大事だと。
ここの時点で、合併という失速する意見に向かって走るということは、非常に私はいわゆる町民サービスの低下を招くおそれが非常にある。そういう懸念を私はしております。
そこで、やはり今こういう時期ですから、田中さんもおっしゃるように、やはり議論をしていくことは私は大事だと思う。今申し上げたような議論をされた方がいい。どこがいいのかどこが悪いのか。
◆魅力度調査で内灘町は金沢の上。合併は金沢市のおごり
そこにまた平成9年に産能大学というものが金沢市とうちと魅力度というものを調査しまして、北国新聞に大きく出ました。金沢が100%の生活全般230項目にわたってやられた。そのときに、内灘が105ポイントで5ポイントいいんですよと言っていました。それから、金沢から内灘合併という話が消えました。そりゃそうでしょう。そういういいものを自分のおごりで、大きいから面倒見てやるわという話じゃ私はおかしいと思うし。
◆内灘町は単独行政でいい
今、私は思うのは、この今回の合併は私は単独行政でいいと思うんです。なぜかというと、大きな橋がかかります。その橋の中で、それができることによって北部の白帆台ができます。そうすると、隣接する行政区域がだんだんそういう意見が私は出てくると思うんです。好むと好まざると必ず出てくると思う。で、県庁が来ます。人口がふえます。白帆台が来ます。橋ができます。そうすると若い人が、やはり内灘の非常にランドマークとして観光の名所として集う、私はやはり議員の皆さんと一緒にここまで頑張ってこられたわけですから、そういうことも視野に入れて、今ここにどうあるべきかということの議論はいいんですが、入っていこうという議論は、私は非常に危険だというふうに思います。
そこで、そういったことを今、田中議員さんからもご指示をいただいておるんですが、そういう田中さんおっしゃる議論は、私は当然していただくべきだと思います。
(平成13年内灘町議会会議録第1回定例会 20〜22ページ)
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