2001年金沢市議会九月議会で質疑
法と道理に合わない市長答弁
自ら放棄した工業用水開発計画に固執
ナギの会や中登史紀さんの提起した工業用水の遊休水利権に関して金沢市議会で初めて質疑さ
れた。
以下、議会議事録を抜粋した。中見出しは渡辺。
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2001(H13)年9月19日(水曜日)金沢市議会質疑
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◆森尾嘉昭市議(共)質問
目的が変遷した辰巳ダム
犀川ダムが完成したのは1965年、内川ダムが完成したのは1974年です。いずれも洪水を教訓に建設され、内川ダムは、浅野川の上流にダム建設の適地がないとして、浅野川の水量を浅野川放水路を通じて犀川に流し、この水量を削減する対策として建設されました。当時内川ダムの建設によって、
100年に1回の洪水にも大丈夫と言っていたことから、このダムの完成を待たず打ち出された辰巳ダム建設の目的の第1は、犀川の清流を取り戻すため、犀川の流量を維持するというものでした。その後目的が変遷し、治水調整が建設目的の第一に掲げられてきました。しかし1961年以来40年、本川の堤防が決壊するような水害は一度もありません。
整合性のない辰巳ダム
犀川ダムと内川ダムの2つのダムを合計すると、2,005万トンの利水・治水計画が立てられています。洪水調整に
780万トン、流水の維持用水とかんがいに 109万トン、上水道に
909万トン、工業用水に207万トンとなっています。ところが、上水道は現在半分しか使われず、工業用水に至ってはダムが完成して以来、一度も使われてきませんでした。したがって、使われていない水量は
650万トンに及び、全体の32%に達しています。にもかかわらず辰巳ダム建設を進めようというのです。計画では、洪水調整
560万トン、流水の維持用水として 240万トン、合わせて
800万トンとなっています。既存の2つのダムで利用されない水量は
650万トンですから、これは辰巳ダム利水計画全体の81%に相当しています。しかもこの計画それ自体についても、過大な洪水量予測を前提に計画されているとして、専門家からも厳しい批判が寄せられています。したがって、既存の2つのダムを十分に活用すれば、辰巳ダム建設は必要ありません。
国土交通省の新河川方針に合わない
最近国土交通省は、新たなダム建設が環境面や予算面から困難になっていることから、2002年度から既存ダムを徹底活用する方針に転換し、複数ダム間で利水・治水の用途を変更したりして、ダム新設を不要にするのがねらいだとしています。市長、こうした国土交通省の見解をどのように受けとめますか。あなたが辰巳ダム建設について、犀川の総合的治水対策からぜひ必要だとの根拠は、崩れ去っています。辰巳ダム建設を中止し、犀川の総合的治水対策を見直すべきではありませんか。その見解を伺いたいと思います。
工業用水水利権は遊休水利権であり返上か目的変更すべき
さて、本市は犀川ダム建設の際、1日3万
2,000トンを工業用水に利用するとして、県と契約を交わしました。しかしこのダムが完成して以来35年間、一度も使われてきませんでした。その費用として、昨年県に
1,800万円を支出し、この間支払った額は総額3億円に達しています。こうした現状に対して、住民からも、法的にも遊休水利権に当たり、現状は違法状態であり、問題を解決するよう求められています。また、本来工業用水を企業に売却した収入で賄うべきで、市民の税金から支払うことは不当な支出だとして、監査請求が提出される事態となっています。市当局は、この工業用水は貴重な権利であり、維持すべきと述べています。これは全く根拠のないものであります。犀川ダムが完成した1965年当時、本市は徳田市長が打ち上げた60万都市構想に基づいて、金沢港周辺に臨港工業ニュータウン計画がありました。ところが江川市長時代の21世紀金沢未来像や、市長、あなたが手がけた金沢世界都市構想に基づくそれぞれの長期計画には、一言もありません。ありもしない工業団地計画のために、将来必要な水利権だとして市民の税金をつぎ込むことは、許されることではありません。法的にもこうした遊休水利権について権利を返上するか、他の目的に変更するよう明記しています。市長、潔く責任を認め、対処すべきです。市長の見解を伺いたいと思います。
◆市長答弁
国の方針に該当しないと県から説明
辰巳ダムのことでありますが、国土交通省の見解をどう受けとめているかということでありました。この見解は、既存ダムの徹底活用ということだと思っています。ただ、既に建設を進めております辰巳ダムの場合は、該当するものではないと、県から説明を受けています。
水利権は市民の貴重な権利
辰巳ダムに関連してでありますが、既設の犀川、内川ダムは、治水・利水等を考えた多目的ダムであることは、御承知のとおりであります。それぞれの水利権は市民の貴重な権利でございまして、維持すべきものであるというふうに考えています。利水、取水量の変更は考えておりません。
総合治水に辰巳ダムは必要
辰巳ダムの建設を中止して、犀川の総合的な治水対策を見直しする必要があるのではなかろうかという御趣旨でありました。犀川の総合的な治水対策といたしまして、河川改修の整備促進、ダムの建設による洪水調節、ポンプ強制排水による内水排除対策、こうしたことが必要というふうに思っています。浸水実績区域図の公開による水防意識の向上あるいは河川データを即時に入手をして、洪水への対応を迅速に行うための河川情報システムの活用、こういうことも考えて活用も図っております。市民が安全に暮らせるためにも、総合的な治水対策が図られるべきであり、辰巳ダムの建設は必要であると、こう思っています。
許可を受けた必要な水利権
工業用水の水利権を返上したらという御趣旨でございました。工業用水道事業計画は、昭和36年の犀川総合開発計画に基づきまして、昭和37年から県の許可を受け、必要な水利権として確保しているものでございます。
◆森尾氏再質問
根拠を明らかにせよ
辰巳ダムの建設問題に関連して、2つのダムの利水・治水の現況からしても、辰巳ダムの建設は必要ないという具体的な数値も示して、この問題について見解を求めたところでございます。それは市長が議会等の答弁の中で、犀川の総合的な治水対策上必要だと、こう述べたことから、私はその根拠を改めて現況と照らし合わせて求めたものであります。したがって、既に建設そのものの根拠を私は失っているというふうに思っています。その点を、私は市長に具体的に示しましたので、私はどうこの現況を受けとめているかというのは、ぜひ答弁を求めておきたいというふうに思います。中でも工業用水の問題は、新たに問題が提起されたテーマです。答弁では全くこれについて触れておられなかったということですので、改めてこれは法的にも遊休水利権として措置をするべきだというふうになっていますし、現況は35年間一度も使ったことはありませんし、今後使う計画もないとしたならば、この問題については返上するなり、目的を変更するなり、処置が必要ではないかと、この点を指摘しましたので、私改めて答弁を求めておきたいというふうに思います。
◆市長再答弁
工業用水使用量は許可量を超えている
必要な水利権を県の許可を得て確保しておるというふうに、まずは申し上げておきます。そして、現実の工業用水の使用量は、許可水量をはるかに超えているということを、一つ御理解賜りたいと思います。
◆森尾氏再々質問
挫折した計画後の責任は市長にあり
市長、今の答弁は詭弁です。当時契約したときの具体的な目的は、皆さん方の根拠からしてもあったことは事実です。私指摘したように、金沢港周辺の工業ニュータウンのために、大野用水の隣から取り入れ口を設けて、何と、今ではない出雲にあった浄水場でこれを受け入れて、これを金沢港の新しくつくるニュータウンの工業団地に使おうということで、確かに根拠はありました。しかしこれは破綻をして、この計画もなくなった。じゃ、この工業用水はどのような形で、目的で使うかということが何かあるんですかといって、示していただきたいと言ったら、全く示す内容はないんですよ。皆さん方にも。計画にももう既に抹消されているんですから。こんな状況は、私は行政として、市長、長くあなたも行政に携わってきたんですから、あり得ないんです、こんなことは。あってはならない。行政は、必ず根拠、計画そして必要な財源を確保するという手順で市民に理解を示して、行政を執行するはずです。私は、これはとても現況から照らしても、市長の答弁はこれは言い逃れ、詭弁にすぎない。私は率直に現況を認めて改善をするべき。再度答弁を求めたいと思います。
◆市長再々答弁
工業用水は必要
工業用水は不要ということにはなりません。私は、今地盤沈下が現に憂慮されている、そういう実情も踏まえてほしい。逆に申し上げます。
◆升きよみ氏関連質問
無駄をやめよう。県と協議を
市長の方で、今工業用水は必要だということですが、先ほどからお話ありますように、県に、当時そういうお約束をして確保願うということであったかもわかりませんが、今日事情の状況変化の中になってきたとき、市長がかねがねむだはやめよう、そしてやはり本当に改めるべきところを改めようということをおっしゃっている言から言いますと、このようなお金を3億円も払い続けてきたことにつきまして、今事態が新たな問題として生じたこの状況の中で、県に対してきちんと申し入れする、こういったことを話し合いするということは当然のことではありませんか。このことについては、今森尾議員の答弁で言われたことについては、到底納得できるものではありません。だれが見ても、市民から見ても、こうした事態の問題が出たなら、そういうことについては悔い改めていくということでお話し合いを始めていってしかるべきだと思うんですが、この点をもう一度お聞きをしたいというふうに思います。
◆市長答弁
確信持てないから現状維持する
私は、将来にわたって工業用水は不要ということについて、確信は持てません。だから、県に申し上げる、そんなことは考えていません。
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以上は、議会議事録から抜粋したものである。
議事録本文は、金沢市議会議事録をご覧下さい。
http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/gikai/giji/H13_3/09190002.HTML
【関連資料】
中登史紀さんの住民監査請求関連
監査決定についてのナギの会コメント
遊休水利権とは何か
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