金沢市環境基本計画への意見(1999.2.15)


2004.5.20 掲載


 石川県は、今年度から「ふるさと石川の環境を守り育てる条例」を施行する。いま県内で説明会が開かれている。5月22日、金沢市内では、生涯学習センターで開かれる。
 昔(1999年)、金沢市が環境基本計画を策定するとき、意見を提出したことがあり、その時の内容を紹介しておこう。 石川県のあたらしい条例に係る部分もあると思う。


「ふるさと石川の環境を守り育てる条例」
金沢市環境審議会 会長 藤 則雄 様            1999年2月15日

                                  提案者 渡辺 寛 

金沢市環境基本計画(素案)に関する意見を提案します。
項目のみで失礼します。

■その1
 「全員を満足させようとする計画は、1人も満足させられずに終わる」との言葉があるように、今回の素案は、内容が細かく、基本計画にそぐわないのではないかと感じます。
 基本だからもっとシンプルにし、様々な施策や目標は別途、「環境基本計画実施目標とシステム細則」といったものにまとめ、すべての項目を総チェックし、実行を前提に整理しなおし、それぞれのテーマ課題に対して、様々な角度から実施計画をつくる。
 一つの項目でもこの視点がないと、意味がないのです。複雑系の最たるものが環境問題への取り組みなのですから。

 ●時間的な解決(短期的、長期的課題に分ける)
 ●分野別解決(町づくり、自然環境、動植物、経済活動、人の生命、広域問題…など)
 ●役割分担(市民、企業、行政、専門家、男、女、教師、子ども、学校、職場、町内会、NGOなどそれぞれの役割を明らかにする)
 ●協働作業(異分野の人との連携でアイデアも出るし、活力も生まれます)
 ●費用分担(これを抜いては実現不可能でしょう。あらゆる実行細目を明らかにして解決、取り組みの費用を明らかにし、費用の徴収計画を作り訴える。基本は税金を使うことになるが、この細目を明らかにし、予算化する)
 ●県、隣接行政区との連携(金沢市地区だけで解決する問題は少ないでしょう。関係行政単位との共同作業のため、関係者とともに目標をつくる。
 ●国際的に(アジア諸国をはじめ、技術を持つ先進国との共同作業プランを作る)
 ●やらない計画を明確に(この計画では無理な項目もある。これらを明らかにします。この計画が夢でない計画だとの精神的な宣言になる)

■その2
 この計画が生きるも死ぬも、市民の付託を受けた公僕たる行政の「決意」にかかっています。この計画を夢物語ではなく真に実現させるための保障として、行政の側の決意を具体的に書き込まれる必要があると思います。

 計画の実行には、過去あるいは現在進行中や計画中の様々な行政施策とのぶつかりなどが当然想定されます。行政の各部署との連携、問題解決のシステムを行政自らが作り上げることが欠かせません。こうした一項目を追加していただきたい。

例:「本計画の実行のため、金沢市は市民から付託された公僕としての役割を自覚し、行政機構の刷新にとりくむ。そのために市長統轄の元に環境基本計画実施部署横断委員会を設置し、行政内部の調整を図り、過去の慣例にとらわれず、本計画が着実にすすめられるよう決意をここに明文化することによって表明する」

■その3
 計画遂行のためには、市民参加が不可欠です。この「参加」は、文字どおり政策立案から実施にいたるまでのすべての過程で必要です。

 これまでとかく「市民参加・自主運営・自主管理」などと称して行政から提案される施策は、言葉遊び、自己宣伝の域を出ておらないことが多く、参加した市民とのトラブルがたえません。長いこうした経験が行政への市民の不満と市民参加を妨げています。
 したがって、まず行政の公僕としての位置、調整役としての役割を自覚して、市民本位の立場を徹底的に追求していただきたい。

例:「本計画の実行にあたり、金沢市は市民参加、市民本位の立場から、過去の経験から決別した21世紀にふさわしい新しい市民参加のための金沢方式を提案する。その立案のために、あらゆる層の市民、諸団体が主体的に参加できる検討委員会を設置する」

■その4
 計画遂行には、その出発点に情報の把握、収集、公開がなければなりません。新しい情報に限らず、環境に関するあらゆる情報が様々な形で過去の行政の施策の中にありますし、この計画実施の過程で様々な調査活動から出てくる大量の情報を整理し、的確に計画に反映させ、生かすための仕組みを作り上げる必要があります。

 これは、単に「行政から情報を公開する」といったものではなく、行政や企業、市民など、すべての立場の人が共通の情報で議論し、共通の意志を作り上げる上で不可欠です。
 これは、近年科学技術の発達によってもたらされた様々な情報が国際的に共通のものとして提供され、今日の環境問題への行政の取り組み、市民の活動への参加、意識向上に果てしない役割を果たしていることをみても分かります。この情報が恣意的にゆがんで提供され隠されたりして、計画の最終実施段階で後年様々な紛争となることを防ぐことにもなりますし、「情報は市民のもの」という本来情報収集に果たす行政の役割でもあります。

例:「本計画の実施にあたり、過去から現在、将来にわたる環境に関する情報の収集と整理、提供は第一義的に重要なものであり、関係者は真摯な心で情報の収集と提供に努めなければならない。また本市においてもその趣旨に従って新しく取り扱いを市民参加のもとに決めるものとする」

■その5
 計画の期間を10年間とし、5年ごとの見直しをおこなうとしていますが、その前提に、実施状況を少なくとも2年ごとのモニタリングが欠かせないと思います。その機構、機関を設置する必要があります。

 これは、行政がチェックするというモニタリングではなく、市民参加型のものでなくてはならないでしょう。市民多数のモニタリングへの参加により、一層の市民参加による基本計画の実行が図られるはずです。

 少なくとも、本基本計画策定に参加している「懇話会?」のみなさん自身がモニタリング参加のシステムに組み込まれた「まとめた責任」を果たし、この先頭に立っていただきたい。またこのとりまとめにあたっている現・担当部署のみなさんが、個人の立場でこの作業に参加することを望みます。

■その6
 様々な人が「現場を踏む仕掛け」が必要です。環境問題への意識で、机上の空論もあり、科学的根拠のない初歩的誤りもあります。環境問題への取り組みには正確な科学的な知識が不可欠です。このための原点は「現場へ行こう」です。遊びでもいい、研究でもいい、調査でもいい、現場を知ることにより、狭い視野から見ていた環境問題の新しい視界が開かれます。正確な材料(情報)から正しい知識を学び、知恵を出し合う中で、正確な未来へのアプローチが可能です。

 この中身をきちんと整理しないと、時間と労働と経費の浪費だと思います。自然の中へは生態学の知識、企業の活動にはいわゆるグリーンGNPの視点、開発行為には「持続可能な開発」のテーマなどを。
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 以上、6項目をあげました。
 目標のあれこれは色々ありますが、基本的な取り組みの枠組みをこの基本計画であきらかにしないと、あまり意味がないと思って提案しませんでした。私が強く主張したいのは、「市は本気で取り組むのか?」ということです。文章表現で失礼の部分もありますが、本旨をくみ取っていただければ幸いです。