慣行水利権を考えるきっかけの一つになった水無川の水争い
その昔、水無川という川があった。
川の勾配はきつく、上流の流域も小さい。一帯は砂礫の複合的扇状地を形成していて、川はよく枯れた。人々は上流に向かって新田開発をすすめ、溜池灌漑を発達させたが、集落のあいだで水を巡って争いが絶えず、死者を出すことも珍しくなかった。集落が違えば交流はなく、互いは農耕を妨害する敵であった。
水争いは鎌倉時代から室町時代を経て、秀吉の登場まで、実に300年。調停に六波羅探題、鎌倉幕府、朝廷をも巻き込んだ、中世でも例外的な大紛争で、日本の潅漑史研究に欠かせない地域である。
ここは紀州和歌山、紀ノ川の支流。水無川は今では名手川と名を変えている。近代に入り、水はけの良さを利用した柑橘類栽培が発達し、今ではミカンなどの産地となっている。
さて、この川の両岸にある、かつての敵同士の集落で生まれ育った二人、世が世であればロミオとジュリエット物語になったであろう団塊世代がゴールイン。互いが「敵同士」だと知ったのも地域史を学んだ結果。インターネットを利用した産地直送の柑橘農園を経営している。時々東京などのデパートで産地直売セールにも精をだしている。
●観音山フルーツガーデン http://www.wakayamanet.or.jp/kodama/
ロミオ:児玉典男(ふみお)さん / ジュリエット:美恵子さん
←こちら太郎くん
筆者が慣行水利権の歴史を調べていて、たまたまインターネットを通して知り合ったのがこの農園を経営されている児玉さんご夫婦。
明治から5代目の柑橘栽培農家であるが、これまでの「農家→農協→市場」という流通に農業の限界を感じ、インターネットを活用した直接販売にシフト。「販売先全国制覇」を目指して、ホームページにも力を入れている。数少ない国産レモンの生産農家でもある。とりあえずホームページを訪問して、ご賞味あれ。
なおロミオとジュリエットとは、筆者が勝手に二人をそう呼んでいる。
◆フルーツガーデン/360度パノラマ
年平均気温が15.7℃。「水無川」から紀ノ川本流への地勢がよくわかります。
なんと典男さんが、今年1月8日、FM石川 「Natty Times」 に登場。元気な声で農園の様子を語っていました。
◆ジュリエット美恵子さんのプログ
きれいな写真がいっぱい
◆水争いの様子 《服部英雄先生のページ》
名手・粉河の山と水《水利秩序はなぜ形成されなかったのか》
◆紀ノ川の昔 / 和歌山河川国道事務所
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