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河川審議会答申を学び
都市計画に治水対策を
――都市計画審議会へ意見――
金沢市高畠地区の浸水被害をみるまでもなく、都市郊外が都市化していくとき
治水は考慮されず、工場地化や宅地化がすすむ。
農地だったものが市街化調整区域に編入され、都市計画が固まると同時に工業
地や宅地へと変更されていくのだ。
治水対策のための遊水池確保など、行政が土地を先行取得する手はあるはずな
のだが、都市計画の土地用途は住宅地へと、どんどん変更されていく。
都市問題や環境問題、自然保護を考えるとき、こうした都市計画変更について
日頃より目を光らせていないと、「後の祭り」ということになりかねない。
2000年秋、新しい都市計画変更案について、市民からの意見発表者を公募して
いたので、勇気をふるって申し込んだ。
以下、2000年12月25日に開かれた会場での意見陳述である。
「要旨」は、陳述申し込み書につけたもの。
「本論」は、当日陳述したもの。
で、この意見がその後どうなったか?
翌年開かれた都市計画審議会で、どのように扱われたか?
審議会の議事録にどう記録されたか?
それがどう報道されたか?
これらは、別ファイルで紹介する。
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要 旨
@ 都市水害に備える視点が欠落している。
イ 最近建設大臣に提出された「建設省河川審議会の中間答申」で、都市計画の
あり方の転換を求めた。今後、河川管理、都市計画が大転換する。この観点が
欠落している。
ロ 県は、平成13年度中に犀川、浅野川について、新河川法が要請する河川整
備基本方針、河川整備計画を策定する計画であり、この計画との整合性をとる
ためにも、急ぐべきではない。
ハ 浅野川や犀川、河北潟、それに注ぐ河川域は、内水氾濫=都市型水害の常襲
地帯が多く、安易に市街化区域に編入すべきでなく、内水氾濫に備えた遊水池
としての多面的・重層的な活用をこそ考えるべきである。
A 今回の都市計画区域の線引き変更箇所のいずれもが、基本理念や土地利用の方
針、交通体系整備方針など変更理由との関連を具体的に説明していない。
B 自然環境との調和ある保全計画を阻害する。
今回市街化区域に編入する一部は、絶滅したとされるオニバスのかつての自生
地で、地中に種子が休眠している。都市化で永久に再発生の可能性はなくなる。
C 今回の措置が引き金になって、都市周辺を急速に都市化させる。金沢都心部の
空洞化を促進し、金沢市が制定している環境保全計画と矛盾する。
以 上
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本 論 意見陳述者 渡辺
寛
この度の、都市計画変更について、都市と治水について絞り、区域の線引きのあ
り方、河川整備方針について意見を述べたいと思います。
今年2月4日、建設大臣は河川審議会に対して「流域での対応を含む効果的な治
水のあり方について」という諮問を致しました。これを受けて河川審議会は、9月
の東海地方の大水害の経験を踏まえて、中間答申をまとめ、去る12月19日、建
設大臣に報告をいたしました。
この報告は、新聞等でも大きく、河川整備の大転換と報じられました。
この報告を子細に見ると、現在検討されている金沢都市計画の中にある、河川整
備や治水、あるいは用途区域の線引きに対する考えと大きな隔たりがあります。
平成7年度に成立した現行河川法が、河川審議会の答申に基づいて成立したこと
を考えると、この中間報告から考えられるこれからの河川整備のあり方は、都市河
川2本を持つ金沢中心部の治水と都市計画に大きな影響を与えるのはあきらかで、
こうした国家レベルの理念を先取りして、都市計画を描くことが重要だと思います。
河川審議会の中間報告を見ると、流域の特性を明らかにして、その特性ごとの課
題に言及しています。
たとえば、雨水の流出域として、総合治水の観点から一定規模以上の開発に対し
て、これまでの小規模な調整池から、流域全体を考慮した調整池の設置を求めてい
ます。
また、洪水の氾濫域には、古来からの工法である霞提や遊水地区を設けること。
それに、都市水害対策域に対しては、東海水害を例に、河川と下水道の連携、内
水排除と外水氾濫の関連と区別を明確にして、都市の土地利用そのもののあり方の
見直しを求めています。浸水被害のおそれのある地域には、輪中や宅地の嵩上げ、
内水排除などの対策をとるなど、これまでの都市での治水計画の根本的な転換を要
請しています。
雨が降ることと、水害とは本来別のことです。
私は先日、今回の用途変更区域を回ってきました。その一例を写真で紹介します。
これは、森下川上流の一角です。この森下川の下流には木越町や八田町、大場町
があり、これらの地域は常に浸水被害が頻発し、浸水常襲地帯と言われています。
まさに、この写真のような場所にこそ遊水池としての整備が必要で、下流への浸水
被害を最小限に抑えることが可能です。
いま申しました木越町や八田、大場町などは、広い農村地帯に小規模にまとまっ
た集落となっています。こうした集落ごとに輪中提を設けて集落を囲うことにより、
浸水から守ることができます。
こうした日本古来の治水対策である輪中提を採用することで、現在まったく対策
が採られていない河北潟周辺の浸水被害は防ぐことができます。
また、浸水常襲地帯の一つ、高畠地区に出向いて一昨年の水害の様子も聞いてき
ました。
この地区は元々低地帯を宅地開発したため、雨水が周辺地域から集まる典型的な
都市水害をもたらす地域です。一昨年の台風7号での浸水では、肝心の内水排除の
ためのポンプが動かず、犀川に内水排除が出来ず、浸水被害となりました。
もともと低地帯ですから、雨水が集まるのは常識で、これを前提にした土地利用
を考えれば被害は出ません。
駅西地区の若宮町西の一角も、遊水池として有効活用こそ新しい治水対策として
金沢市全体に寄与するものと考えます。
今触れました地区は、いずれも下流域ですが、浸水被害をもたらす場所は、上流
地域にもあります。
たとえば、高橋川上流の碇川周辺の地区。町名で言えば大額、額乙丸、しじま台
の一角。ここは金沢の水害で報道されることはあまりありません。都市部の河川の
上流域にあたっていますから、雨の降り始めに碇川があふれ一帯が浸水します。そ
のうち下流域の水害がひどくなって、報道などでは高畠地区や河北潟周辺の水害が
大きくクローズアップされてしまいます。
この上流の地域も周辺の都市化で、本来田んぼが持っていた氾濫調整機能が失わ
れ、狭い1〜3mほどの河川が雨水を流しきれずに氾濫しています。
この周辺の用地利用が治水対策なしの例であると考えられます。こうしたことは、
金沢のいたるところで見られ、金沢のこれまでの都市計画、土地利用のありかたが
間違っていたことを裏付けていると思います。
また、中間答申では、河川管理者が、氾濫シミュレーション結果を住民に提供し、
浸水予想であるハザードマップを作成公表することも求めています。これもごく当
たり前のことでありますが、金沢市ではこれを発表していません。作成しているか
どうか不明です。過去の水害被害をデータ化していることは聞いていますが、これ
にしても公表はしていません。
このように、河川審議会は、都市を水害から守るために、土地利用のあり方を含
め根本的に見直し、これまでの治水の核に据えられていたダムや堤防で水を閉じこ
め海に流すという、河川管理からの脱却を唱っていることです。
しかし今回の都市計画変更では、重点的に整備すべき施設として、辰巳ダム建設
を概ね5年以内に実施することを予定しています。
この辰巳ダム計画は、長年反対運動がつづいて来ました。
この辰巳ダムは、旧河川法16条で義務づけている水系一貫管理の基本となる工
事実施計画なしに計画着工されました。また金沢市民にとってかけがえのない文化
遺産である辰巳用水を破壊することになりますが、昭和55年当時、県文化財保護
審議会は教育委員長の諮問もないまま、辰巳用水についての文化財の価値について
の審議一度もせず、当時の河川開発課の担当者の話を聞くだけの会議に参加する中
で、辰巳ダム建設を容認する結論を出すなど、本来の審議会のすべき職務からの越
権行為を行ったことも明らかになっております。
こうしたことは、私が県の情報公開条例によって公開を受けた公文書をつぶさに
検討した結果あきらかになったもので、極めて違法性の高いダム計画の推進でした。
また、100年に一度の洪水に対処するといわれた昭和40年完成の犀川ダムや、
現在においても旧河川法第16条が義務づける工事実施基本計画のないままの浅野
川の治水計画との整合性を説明しないまま、計画を進めている辰巳ダムです。
こうしたことが昨年、30数時間にわたって行われた辰巳ダムに関する市民と県
との意見交換会を通じて明らかになり、石川県公共事業評価監視委員会は、「消極
的賛成」という川島委員長の言葉に端的に表現されているように、辰巳ダム計画に
ついて、5つの条件を付けました。その第1項目に、浅野川と犀川一体とした治水
計画をつくることをあげています。
浅野川の治水計画は、大野川水系の一部であり、河川法の要請からいっても、河
北潟を含む数10本の河川を一体とした整備基本方針と実施計画をつくらなければ
なりません。
こうした計画の中に、冒頭るる述べました河川審議会の中間答申を反映が反映さ
せなければなりません。このために、各河川ごとの雨量データの集積と解析をもと
に、土地利用の条件を組み入れなければなりませんから、どう考えても一朝一夕に
出来るものではありません。
関連して付け加えますが、この大野川周辺の一角が今回の都市計画の線引き変更
の中に含まれていますが、この地域は、日本で絶滅寸前と言われる水性植物のオニ
バスの自生地でした。ここが都市化することで、現在地中に休眠しているオニバス
のタネが永久に再生できないことが考えられます。こうした自然環境保全の視点も
見逃せないことです。
また、今回の宅地化を前提にした都市計画の変更は、金沢市内中心部の空洞化を
より以上促進させ、魅力のない町に変えてしまいます。この10年来、兼六園を訪
れる観光客の減少は、そうした事への警鐘であろうと思います。金沢という地名で、
一度は訪れるが、リピーターがこない。来年の都市緑化フェアのような一過性のイ
ベントを誘致しても、都市そのものに魅力がなければなりません。小京都とか、杜
の都とか、いろいろに呼ばれている金沢ではありますが、すでに都市の持つ面影は、
金沢という地名のもつイメージとかけ離れたものになっています。
以上述べましたように、今回の都市計画の変更は、こうした客観的な状況を見て
も、急ぐべきではなく、様々な河川管理、土地利用計画、都市計画の根本的な見直
しと条件整備にこそ力を注ぐべきであると思います。
以上で私の意見を終わります。
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