遊休水利権と潅漑面積減少問題を委員会に意見書


2003.3.5 掲載

 3月5日、犀川水系河川整備検討委員会小委員(第2回)が開かれるため、本会がかねてから指摘している、金沢市が持つ遊休水利権と潅漑面積減少問題を、委員会の議論の俎上の載せてもらうため、意見書を提出した。以下は、その本文である。


犀川水系河川整備検討委員会委員長 玉井信行さま   2003.3.4
         専門部会委員長 辻本哲郎さま
                   ナギの会代表 渡辺 寛

【意見書】犀川ダム、内川ダムの未開発水利権と
漑面積減少と河川維持流量の検討について

前略、用件のみで失礼します。
 先の第1回犀川水系河川整備検討委員会専門部会の中で、県は計画洪水流量(計画高水)の説明部分で、「既設の治水施設を使って調整をした結果、200t/秒が基準点の流下能力を超える」と述べています。しかし既設の犀川ダムや内川ダムに含まれている「未利用水利権」の存在に触れていないのは、説明不十分であると言わざるを得ません。問題を率直に指摘させていただき、貴委員会が、検討に不可欠なこの問題の必要情報を入手され、県民すべてが納得できるご検討をお願いしたいと思い、以下の意見を提出します。

1)
「未利用水利権」は、将来も使われることがなければ遊休水利権であり、河川管理者の監督処分として、許可の取り消しや変更を行うことが河川法において要請されているものである。
 犀川ダムは、治水及び発電、潅漑、上水、工業用水を開発するため建設され、上水と工業用水は金沢市が水利権を取得している。

 工業用水は、昭和37年12月、石川県知事から許可されたもので、申請書によれば、取水口は金沢市上伝馬町1番(現片町2丁目)、終点は金沢市出雲町とし、配水先の工業団地造成地は金沢港周辺で、日量32,000m3(0.37t/秒)の水利権が設定されているものである。
 しかしこの工業団地計画は犀川ダム完成後10年の間に挫折し、市が昭和61年3月に作成した長期計画「金沢市基本計画21金沢まちづくり」から最終的に消え、工業用水導水路の終点になるはずの出雲浄水場も、既に近くの会社に売却されている(S59.12)。
 この工業団地計画予定地には、皮肉にも現県庁の新庁舎が建っている。これは河川法上、典型的な遊休水利権である。

2)
 また、上水についても、犀川ダム、内川ダム両ダムで開発した909万m3 は、使用量停滞で将来予測でも需要は伸びず、将来においても半分しか使われず、金沢市作成の水開発が計画と大きく乖離していることを示している。
 こうした未利用水利権を見直し、法と道理に基づいた適正な是正措置をとることで生まれる水量の規模は、県が計画している辰巳ダムが不要になるほど大きなものである。

3)
 こうした問題は、既に国土交通省や総務省も指摘していることである。
 国土交通省は、平成11年3月の河川審議会提言(「今後の水利行政のあり方について」)を受け、既存ダムの有効利用、水利権用途変更による河川水の有効活用を各地で行っている。石川県でも、1級河川・手取川ダムで発生している未利用水利権である工業用水を河川維持流量に転用している。これは、未利用水利権(遊休水利権)の河川法上の性質や問題とその解決方法を既に石川県でも入手していることを示しており、犀川水系河川整備検討委員会小委員会にこうした問題の所在を明らかにしない県の計画高水についての説明は不十分である。
 また、総務省は、平成11年度に行政監察局(現:総務省行政評価局)が実施した水資源に関する行政監察の結果を平成13年7月に公表し(「水資源に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」)、遊休水利権の用途変更を容易にするための制度をつくり、昨年から各地で実施しているようである。

4)
 河川維持流量を決定する上で看過できないのは、農業用水と取水量の問題である。
 犀川には、江戸時代から続いている犀川七カ用水といわれる7本の重要な用水がある。それぞれの取水量は、江戸期の慣行を元に「犀川通七カ用水配水取扱規約」(明治24年)により定められ、一部を除いて現在まで続いている。
 戦後作られた土地改良法(S24)により各用水は土地改良区に改組され、その用水管理計画書等で判明する当時の潅漑面積は約1,800haであるが、現在、資料で確認できる潅漑面積は、約600haと激減している。しかしこれは地区面積なる数字から読みとったものであるが、実数は恐らくその1/3、つまり200ha程度の潅漑面積であろうと思われる。これは、新県庁庁舎19階からも確認可能なものである。県庁の真下に広がる地域は、大野庄用水と鞍月用水からの取水で潅漑するド真ん中であるが、今後数年の間に、潅漑面積は限りなくゼロになる。
 この例が示すように、戦後から60年の間の農業面積は10%になっているにも関わらず、その用水に流れ込む流量は江戸時代のままである。慣行水利権であれ許可水利権であれ、潅漑用に必要な量以上の取水は根拠がなく、そのまま放置されれば違法となる性質のものである。
 河川管理者が法と事実に基づいて、適正に農業用水管理者と協議を行い解決へ向かうことは、河川維持流量を確定するためにも不可欠である。

 以上、貴委員会、貴部会への意見としてまとめたものである。
 なお、こうした問題は、この1〜2年、本会と県河川課の間で何度も議論を交わしてきたことであるが、データを元にした事実の一致はあるものの、解決に対しては、膠着した状況で推移してきたものである。今回の河川整備基本方針を定めるためにも不可欠な諸点であり、議論の俎上に載せていただきたく希望するものである。
 また、犀川ダムの工業用水の水利権について、本会では、金沢市に対して、監査請求を準備中で、却下された場合、裁判での提訴も考慮中であることを付記しておきます。
                         以 上

【参考資料】
 遊休水利権についての各種資料、潅漑面積減少についての資料