―――意見書と公開質問―――
農業用水と鞍月用水堰について


2004.6.12 掲載


 14日に開かれる犀川水系流域委員会第3回総合部会にあわせ、数々の疑問が出されている二つの問題にしぼって、意見書と知事への公開質問状を提出してきました。
 これまで、委員会への意見書は、委員長がいう「委員会に意見があれば、いつでも文書で提出して下さい」という紳士的なお言葉とは裏腹に、全くなしのつぶて。これらの意見書が、どう扱われたか議題に載せるのか、載せないのか、まったく無反応で脳死状態。
 事務局の河川課に訊ねると、「すべて委員長に提出しています。どう扱うかは委員長の意志です。」と素っ気ない。

鞍月用水堰の文化財的価値も指摘
 今回の二つのテーマは、
(1) 県の「農業用水の水を減らす」という方針を水利権から考えると、「そんなに簡単に言えるの?やれるの?」という問題提起。
(2) もうひとつは、鞍月用水堰上流の整備について、県は堰を撤去して流下能力を高めるというのだが、左岸側にある公園などの公有地を無視している。元々河川敷だった公有地を活用すれば、堰を壊すことなく、流下能力は確保できる。そんな常識的な議論をしてくれよ、というものだ。
(3) 新たに、江戸時代に確定された鞍月用水堰の斜め堰は歴史的文化財的な価値があるのではないか、という指摘もおこなった。

 過去の委員会の議論を傍聴していると、そんな議論などはほとんどない。なにしろ辰巳ダム建設事業費の中で運営されている流域委員会の限界であるのだが、事務局(河川課)は、辰巳ダム建設が職務の面々。辰巳ダムなしの計画など作れるはずがないし、長年関わってきた(株)アイエヌエーなど建設コンサルタントなどはこうした県庁の中身はお見通しである。いわば癒着構造で進められてきている。
 すくなくとも、こうした疑念を解明するのが専門家と称する人たちの役割であろう。一緒になって後押ししていては、行政の下請けと変わらない。委員会が下請けなら、委員長さんは元請けってことになるのかな?

 以下、意見書と公開質問状を紹介。



犀川水系流域委員会 委員長、            2004年6月11日
各部会長 及びすべての委員 あて

                        ナギの会 渡 辺  寛     

流 域 委 員 会 へ の 意 見 書


1 農業用水の適正取水と水利権について

 検討案では、犀川から取水される農業用水について、環境用水、灌漑用水の利水状況により適正な取水量を設定するとあるが、水利権が密接に絡んでおり、以下の点を明確にし、議論を進める必要がある。

 (1) 県の「農業水系用水実態調査業務委託報告書」(平成13年度2002/3) には、大きな誤りや錯誤(灌漑面積など実数や調査時期での錯誤)などがあり、この報告書をもとにした委員会の議論は行うべきではなく、委員会独自の調査(簡単な観測で可能)を行うなどを行い、県に対して再調査を求めるべきである。

 (2) 許可水利権の農業用水に対しては、次期更新時に取水量の適正削減の変更許可が必要であるが、河川管理者である県の明確な意志の確認を行うこと。

 (3) 慣行水利権の農業用水には、取水口の狭小化等、適正な流量減少の措置が必要となるため、前例の調査などを県に求めるべきである。

 (4) 用水の流量には、兼六園の水利用をはじめ潅漑や環境あるいは融雪や親水など様々な要素の水利用の権利が含まれているが、それぞれの水利権について明確にする必要があり、現状報告を県に求めるべきである。

 (5) これらは、国交省や農水省、総務省などの通牒・通達・通知、あるいは諸判例でも原則は明確になっているが「現場」では改善されていない。これを適正に変更するには、水利権そのものについて委員会の中での深い議論と利害関係者や一般市民との広い対話が必要であること。

 (5) これらの解決には、政治的・経済的な諸利権から離れた、市民県民の理解と支持がなければ進まない。この議論なしに「水量の適正規模」と言っても絵に描いた餅である。この問題は、無数に存在する慣行水利権の「適正な慣行」の意味やあり方を明確にすることと同義であり、県の意志の確認が必要であり、困難さを委員会の中でリアルに議論すべきであること。


2 鞍月用水堰上流の河道整備について

 犀川最大の重要なネックである鞍月用水堰〜雪見橋間の河道整備について、委員会で、転倒堰案や床止落差工案などを検討し、最終的に堰を撤去し流下能力を確保する案を検討しているが、常識的な撤去案以外の案もあり、以下のとおり意見を述べる。

 (1) 左岸公有地の利用について
  この区間の左岸には、元河道内であった公園など広大な公有地がある。右岸堤防の補強改善と公有地の有効利用が、常識的な改善策である。県に対して具体化の案の提出を求めるべきである。これまで一度も検討もされないのは、委員会が県からの提案に縛られているためで、委員各位の狭量さを示すものとして将来必ずや禍根を残す。

 (2) 堰の所有権について
  鞍月用水堰の撤去には、この堰の所有権を明確にする必要がある。議論の大前提となるこの問題を抜きにした議論は全く説得力に欠けている。撤去には民法や河川法、土地改良法からの法的瑕疵が発生することを明確にすること。

 (3) 堰の文化財的側面について
  鞍月用水は、ほぼ1000年の歴史を有し、現況の堰は江戸時代からの斜め堰を元に昭和40年前後に改築されたものであるが、金沢の歴史、町並や河川景観とも密接につながっており、文化財的な価値を有している。こうした面からの検討も行う必要があり、軽々に撤去などを言うべきではない。


以 上  



 石川県知事 谷本正憲さま           2004年6月11日

                   ナギの会 渡 辺  寛    


農業用水と鞍月用水堰上流整備についての公開質問


標記につき、以下の点について質問します。流域委員会の議論と密接に関係した問題である、6月30までに文書にて回答をお願いします。

1 農業用水の適正取水と水利権について

 (1) 県の「農業水系用水実態調査業務委託報告書」(平成13年度2002/3) には、灌漑面積の実数に大きな誤りがあり、また流量調査には調査時(8月)に疑問があります。河川管理には現況あるいは将来の見通しの数字を元にすべきであり、委員会への説明を訂正し、また再調査を行う必要があると思いますが、どう考えているのか伺います。

(2) 許可水利権の農業用水に対しては、次期更新時に取水量の適正削減の変更許可が必要となりますが、更新時に許可量の削減をするかどうか伺います。

 (3) 慣行水利権の農業用水には、現在の取水口の狭小化等、適正な流量減少の措置が必要となります。どのように行うのか。また過去に前例があるかどうかなどの調査をおこない公表すべきであると思われるが、どう考えているか伺います。

 (4) 用水の流量には、兼六園の水利用をはじめ潅漑や環境あるいは融雪や親水など様々な要素の水利用の権利が含まれています。それぞれの水利権について明確にする必要があり、 こうしたことについて調査し公表すべきではないか。

 (5) これらは、国交省や農水省、総務省などの通牒・通達・通知で改善を指示していることであり、諸判例でも原則は明確になっている。しかし、適正に変更するには、水利権そのものについて一般市民や農業関係者との広い対話をもとにした合意をつくる必要があるが、県としてシンポジウムや講演会などを行う考えはないか。


◆鞍月用水堰上流の河道整備について

 (1) 左岸公有地の利用について
  この区間の左岸には、元河道内であった公園など広大な公有地がある。右岸堤防の補強・改善と公有地の有効利用が常識的な改善策である。県は公有地の利用状況を公表し、委員会にも代替案の提示を行う必要がある。委員会で一度も検討もされないのは、県が代替案を提示ないためで、公共事業計画策定の初歩を踏み外している。
 早急に代替案を委員会に提示すべきであると思われるが、どう考えているか伺います。

 (2) 堰の所有権について
  鞍月用水堰の撤去には、この堰の所有権を明確にする必要がある。議論の大前提となるこの問題を抜きにした議論は全く説得力に欠けている。前提の議論をせず撤去だけが進められると民法や河川法、土地改良法からの逸脱や違法などが考えられます。こうした法的側面からも委員会に問題の所在を提示すべきであると思われるがどう考えているか伺います。

 (3) 堰の文化財的側面について
  鞍月用水は、ほぼ1000年の歴史を有し、現況の堰は江戸時代からの木造・斜め堰を元に昭和40年前後に改築されたものであるが、金沢の歴史、町並や河川景観とも密接につながっており、文化財的な価値を有している。こうした面からの検討のため、教育委員長に対して文化財保護審議会への諮問提案を行うべきであると考えられるがその意志を伺います。

以 上