茶番! 土地収用法適用へ事業説明会

掲載 2006.3.25

説明会に参加した中さんのレポート
【辰巳ダム日誌】2005.11.25より 整理転載

石川県の土地収用法に基づく辰巳ダム事業説明会へ参加。

石川県は土地収用法に基づく「犀川辰巳治水ダム建設 事業説明会」の開催。

 この説明会は、法に基づいた単なるセレモニーで、会が成立しようがしまいが、事業者が説明しようがしまいが、答えようが答えまいが開けばそれで法手続を踏んだということになり、合法ということらしい。こんな説明会をまじめに聞いているのも馬鹿馬鹿しいと思ったので野次りとばそうなどと不埒なことを前日まで考えていたが、柄でもないので止めることにした。当日、仲間から「勝手に作戦変更して困るなあ」と苦情を言われた(^_^;)

 朝から、あれこれ考え、筆者の主張のポイントである、「基本高水ピーク流量」に焦点をあてて、問題提起文にまとめ、チラシを作ることにした。これを参加者に配り理解してもらい、県に対しては、その主張を質疑の時間に投げかけることにした。
 午前から午後と文をまとめ、100枚ほどチラシを作った。物静かな日でしたが、夜は騒々しい一日で終わった。

 七時の開催予定で早かったが、一連の作業が終わったのでそうそうにでかけた。五時ころ、会場の文教会館に着いたが、すでに県の職員の連中が大勢、会館内外に配置されていた。やけに物々しい警備体制で、この土地収用法という「おどろおどろしい」法律の性格を反映し、行政が一大事と考えている様子がうかがえた。
 中でチラシを配ろうとすると、「会場で配るな、玄関ホールならいい」と言っていたのが、「会館の敷地内で配るな、警備上の問題がある」とか、やけにうるさい。
 もらった入場券にも留意事項が山のように書いてある。後からじっくり読んでみると、全文、「するな」と書いてなくて、「ご協力ください」としか書いてなかった。どうりで、会場では野次や怒号などが飛び交ったが退場処分はなかった。

 参加者は、地権者等は40人ほども集まったのであろうか。報道関係がこれと同じくらい。主催者の行政の方は、この数倍、担当者、係員、警備員が総計 100人ほどもいたであろうか。お客さんよりも接待者の方が多いという、とてももてなしの行き届いた行事ではありました(^_^;)

 二時間の予定で、最初の一時間は県の説明、後の一時間は質疑。最初は異様な光景でスタートした。開会が宣言されると同時に、「辰巳の会」の碇山事務局長が、前日、土木部長を通じて、知事へ提出した「要求書」に対する返答を求めた。知事が要望書の内容を確認した上でもさらに土地収用法を冠した事業説明会を開催すると意志決定したのかどうか、確認するためである。これに対して全く、返答することなく、無視する形で続けられようとした。何度も碇山事務局長が返答を求めたが主催者は無視した。以後、30分ほど、野次と怒号が交錯したが、無視して主催者の説明は続いた。壇上の主催者の表情が面白かった。冷静さを装い、無表情を演出した。一見茶番劇である。

 けれど、冷静に考えれば、事業の内容如何にかかわらず、法手続きを踏めば、法を背景に、強権を発動できる。しかも、選挙で審判を受けるわけではなく、役人の身分は保障されている。元来、住民のしもべ、公僕であるはずの役人が強権的な行為を行っても安泰というのは問題である。

 つらつら考えてみるに、警備員まで言い方が権力指向に傾きかかった気配がないでもない。動員された、若い、感性、理性の素朴な職員だけが何でこんなことをやらないかんのかと感じたに違いない。事業が必要で、公益性のあるものであれば、なぜ、こんな反対があるのだろう、どうしてこんな物々しい警備の片棒を担がなければならないのだろうか?と。

 一時間の退屈な説明の後、質疑に入った。

 まず最初に質問に立った。
 治水の議論のすべては、基本高水ピーク流量の議論に集約される。辰巳ダムは治水のためのダムである。辰巳ダムを議論することは基本高水ピーク流量を議論することである。県は1750m3/秒としたが、過去の洪水の検証、隣接の流域の比較による検証では、それぞれ800-900m3/秒、1200m3/秒である。基本高水ピーク流量は過大であり、辰巳ダム事業は不要であることを前置きでのべ、
 この1750m3/秒という数値の信頼性はどれほどか、この信頼度は過去の洪水の実績などと比較検証して初めて、その信頼性が確認できる。様々な検証全てにおいて信頼性が確認できない。信頼性はどのように考えているのかという主旨の質問を行った。
 これに対しての答えは、
 高野課長「これは全国的に一般的に行われている方法であり、妥当なものと認められているものである。専門家の先生方の審議も受け、了解を受けているので間違いないものである。」という主旨の返答であった。いつもの回答である。
中 「先生方は納得していないぞ、議事録では、非常に説明力に乏しい、説明するのが難しい基本高水流量になっているとあるぞ。」
 高野課長「議事録の一部を都合良く取り上げているだけだ」
 などというやりとりが少し続いた。

 いずれ、県は聞く耳をもたないのはわかっていたが、参加者に基本高水ピーク流量は、1/100確率で900前後、手取川など隣接の水系の水準にあわせると1200m3/秒程度、1750m3/秒は異常に大きいということが伝わればよかったが、伝わっただろうか?

 基本高水ピーク流量を初めとして、環境調査、現地の自然環境、生態系の破壊、用地取得や交渉に係わること、水利権、地崩れ、知事の意志決定にかかること、土地収用法にかかることなど、質疑が行われ、県も多くの質問には回答した。内容はほとんど、中身がなく、どうでもいい食べ滓のようなものであったが、回答する姿勢は見せた。

 一時間の侃々諤々があって、主催者は時間きっかりに閉会した。一応、みんないいたいことを言って幕を閉じたという気配であった。碇山事務局長は大勢の報道に囲まれて弁舌をふるっていた。主催者の高野課長は、マスコミを振り切って裏口は退散したようだ。ある意味、先輩が先鞭をつけ、やり残した無理難題を押しつけられた、気の毒な人かもしれない。
 平成13年に土地収用法が変わって、強制収用が簡単になったらしい。行政が行う、公益性のある事業が一部の反対があるからと言って実施できないのは不合理である、社会全体にとって有益な事業であれば容易に進めることができるようにするべきであるというのが、改正の背景だったらしい。事業に公益性があればである。
 辰巳ダムのように、調べれば調べるほど、必要性に疑問のある事業に公益性があるわけはない。全く、240億円の国費の無駄使い、国富の消耗である。正論は正論として発言し続けなければならない。土地収用法が適用されようが、されまいが、どの段階でも県の説明責任を問うていかなければならない。
 いずれにしても、碇山教授の言う、憲法で保障された、個人の財産権を奪うということはこういうことか、ということを認識した一日でした。
 関係者のみなさん、おつかれさまでした!(-_-;)


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