辰巳ダム湛水池周辺の地すべり

2006.4.20更新 (◆立体地図と現地写真を掲載

危ない穴あきダム
水位の変動が湛水池斜面の地すべりを誘発する


水渕〜駒帰一帯の崖崩れ、地すべり危険箇所の図(クリックで拡大図)



上の拡大図(クリックで拡大図)

資料は、石川県「土砂災害情報システム・SABOあい」より

この問題は、犀川流域委員会でも穴あきダムの大きな問題だと指摘されている。
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◆第1回総合部会(03.12.26)議事録要旨より
(委員)一番の懸念は、溜水時の残留間隙水圧上昇による法面崩壊である。貯水池付近について、地形等の調査をすべきではないか?
(事務局)当方では、貯水池周辺の現地調査を行い、地滑り等が予見される箇所は調査を行っている。今後は専門家等のご指導を仰ぎたい。
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◆第2回総合部会(03.4.27)議事録より(部会長:玉井信行金大教授)
(委員)新しいダムによる植物への影響は?
(部会長)それについては湛水時間が一番きくと思うがどのくらいか計算しているのか。
(事務局)2年確率で洪水が上がって下がるまでい6〜7時間ぐらい、100年確率で14〜15時間くらいの湛水時間になる。
(委員)試験湛水の時が一番のネックだろう。
(事務局)試験湛水は非洪水期に入ってからで10月中頃から5月いっぱいぐらい。サーチャージ水位は1,2日だが、低いところでは4〜5ヶ月ぐらいかかる。
(委員)多目的ダムから治水専用ダムに計画変更して常時は湛水しないことから、環境のミチゲーションとしては有効な考え方と思う。
(委員)14〜15時間でも何か影響があるかもしれない。
(委員)何らかの形でデータを集めないと答えは出ないと思う。
(部会長)環境へのインパクトの量自体はずっと少なくなった。
(委員)河原の中の植物はすぐ更新されるが、斜面林については問題があるのではないか?
(委員)土質の点からいくと、急激な水位の上下変動は、残留間隙水圧がたまるため斜面の安定としては非常に危険である。
(部会長)特に斜面の植生に対しての影響、湛水の長さとか水位が変わるときの安定の問題と、このあたりについての情報をしっかりまとめないといけない。
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県の事業説明会(05/11/25)で、河川課山本室長との質疑を紹介する。
◆私の質問
 もう一つは崖崩れの問題です。今の説明の中で、崖崩れの問題がほとんど触れられていませんでしたけど、これは検討委員会の中で先生達が言っていたことですが、治水専用ダム、穴あきだと言うわけですけど、ある時には、5年とか、10年とか、20年とかのスパンで見ると何度も湛水しては引き、湛水しては引くと、(水位が)かなり上下するわけで、それがダム湖周辺、城力とかいくつかの集落がありますけれど、その法面に対してダメージを与えると、それが崖崩れを引き起こすと。
 というような懸念が表明されておりました。
 県からの説明では、その時になって考えましょうと(「なんだこりゃ」の声)、そういう説明がありました。これは山本さん(ダム建設室長)が言っておりましたが、そういうことはやはり許されないと思います。ざっと見れば分かりますけど、あの周辺ではかなり竹林がでっぱっているところがいろいろあります。それは地崩れにできたでっぱりなんですよ。周辺を回ればすぐわかりますけど、その点をきちんと説明しないと、辰巳ダムをつくったこと(そのもの)が危険であるということになるかと思います。この基礎資料については全国の防災研究所あたりからの資料では、この周辺の崖崩れの資料などが結構出てきているんですけど、肝心の石川県の方からはそういう資料、データが出てこないんですよね。だから意図的に石川県の情報が、崖崩れの情報が隠されているのではないかと私は考えております。

山本ダム建設室長の答弁
 2番目の崖崩れについての話がありました。私が検討委員会の中で、その時になって考えるというふうに言ったと(「そうです。そう言いました」との声)いうことなんですが、私はそういう言葉ではなくてですね、洪水調節ダムは新しいダムだと、前例がないと。
 今後ですね、国の研究機関などとも相談したい、ということだったと思っておるんですけど。今も国の機関とも相談しておりましてですね、同じ洪水調節ダムといたしましては島根県で1件、完成間近というものもございます。その中でいろいろ検討されていますので、今の洪水調節ダムであってもですね、崖崩れ等を起こさないということで万全にしたいと考えております。また崖崩れの調査は別途詳細調査をしておりまして、そのデータに基づいて必要な対策を行うということを考えております。   



ダム問題で避けられない地すべり問題
 ダムと地すべり、法面崩壊で有名なのは、奈良県の大滝ダム。紀ノ川上流の支川に完成(2003)。試験湛水を始めた直後(50%の水位)で、白屋地区の道路や宅地で地割れが発生。大問題になっている。
 地すべりや法面崩壊問題は、ダム建設で不可避。調べると実に多くの例がある。事件が発生すればその対策に膨大な費用が投下される。ダム建設費用が予算の2倍以上になることも珍しくないという。
 辰巳ダムではこの問題は本格的に調査されてこなかった。膨大な費用がかかるとすれば辰巳ダム建設が安上がりだと結論づけた流域委員会での議論は水泡の如く消える。

◆奈良県大滝ダムのダム地すべり災害報告(国土研 2005年6月)
玉川峡(紀伊丹生川)を守る会会報(2003年)
◆紀の川ダム統合管理事務所/白屋地区地の状況
◆大滝ダムと白屋地区の位置(中央下。地図センター:1/2500地図)

◆参考(「防災基礎講座」より=(独)防災科学技術研究所
  1997年澄川地すべりの写真
  斜面崩壊の機構(「防災基礎講座」)
  この講座の中のまとめに、次の指摘がある。
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 地すべりの運動開始の主要な誘因は地下水の増加です.このため,主な発生時期は梅雨期と融雪期です.また,道路建設による地すべり土塊先端の切り取り,地すべり地内を通る道路の建設による集水・浸透条件の変化,ダム貯水による地下水位上昇などによって,再発することがあります.大きな滑動の前には,山腹や道路に亀裂が生じる,湧水がなかったところから水が湧き出す,地鳴りがする,木が傾く,などの前兆がみられるので,住家や集落の裏山にこのような異常が認められたら,避難の準備をしておく必要があります.
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