土地収用委員会へ意見書提出

掲載更新 2008.9.16


以下のような意見書を石川県土地収用委員会へ提出した。


2008年9月3日  

〒920-8580 石川県金沢市鞍月1丁目1番地
石川県収用委員会 御中


                意 見 書

                                     渡 辺   寛

以下のとおり、国が行った事業認定に重大かつ明白な瑕疵があり、土地収用についての裁決申請、明渡裁決申立ての却下を求める。

1.交渉について
辰巳ダム建設事務所から2度職員の来訪があった。一度は「犀川の河川計画に協力してくれ」というもので、2度目は半年以上たった後で「土地を提供してくれ」というものだった。以前より辰巳ダム計画について様々な疑問を県に申し入れてきたが、県からほとんど説明がなかったため、来訪した職員にこれまでの経過を説明し、いくつかの論点について質問したが、「私らの知らないことばかりで、すぐに説明はできない。」と言われるばかりだった。したがって今後の交渉にあたって、広範囲なテーマでは時間もかかるだろうからと、争点(論点)を絞って、双方確認のうえ交渉を行うことを確認した。
しかし争点のつきあわせ作業を行う前に県は土地収用法に基づく事業認定の申請を行い、その後、県からの来訪はなく、交渉は行われていない。

2.農業用水と河川維持用水について
私は、事業認定に対する公聴会で「農業用水と河川維持流量」について意見を述べたが、事業認定庁は、意見対照表によれば、「起業者は農業用水について実態調査を行い、これに基づき既得用水の必要水利流量を適切に設定しており、妥当なものと認められる。」とある。しかしこの認定庁の理解は起業者からの情報を鵜呑みにした間違いである。
辰巳ダム計画に関する県の資料に既得水利権として「鞍月用水=1.51t/秒、大野庄用水=2.95t/秒、中村高畠用水=1.154t/秒」と書かれているが、これは間違い。県の水利台帳や各用水の慣行水利権届出書などからみてもわかる。本来、河川法23条で許可(見なしを含む)された水利権水量は「鞍月用水=0.76t/秒、大野庄用水=0.84t/秒、中村高畠用水=0.59t/秒」である。
つまり、本来の水利権量を超えて利用されている流量はいわゆる「盗水」であり、河川管理者がその権限に基づき適正に是正する措置をとるだけで、本川の必要とされる河川維持流量 1.19t/秒 は確保されるから、辰巳ダムは必要がない。なお、金沢市内の観光用水量については、金沢市の調査によれば、それぞれ0.2〜0.3t/秒 程度であり、農業用水に含まれる水量で十分足りる。こうしたことについて認定庁はまったく無理解で、事業認定に瑕疵がある。

3.辰巳ダムの穴と流木・土砂(石)について
辰巳ダムは治水専用の穴あきダムとして計画されている。この種のダムの欠陥として土石や流木が穴を閉塞させることが従来から指摘されている。しかも上流に複数の大規模な地すべり地(鴛原、寺津)があることから、流木や土砂(石)から辰巳ダムが閉塞されない証明が必要であるが、事業認定庁の意見対照表をみても、その証明はない。
意見対照表に次のように書かれている。
「水理模型実験により、洪水時にダムに流入する流木については、常用洪水吐きにスクリーンを設置することにより洪水調整機能を維持できることが確認されている。また、通常想定される土砂については、洪水時に土砂の一部が一時的に貯水池上流部端に堆積するが、洪水末期には常用洪水吐きを通過して下流へ排出されることが確認されていることから、流木及び流砂による影響はないと考えられる。」
「近傍の犀川ダムの流木処理実績、樹木調査などに基づき流木の量、形状を見積もったうえで水理模型実験を行っている。」
認定庁は水理模型実験の詳細を確認せず起業者の説明だけを信用しているに過ぎない。私は、これらの資料を入手して確認しているが、「樹木調査などに基づき流木の量、形状を見積もった」とはまったく異なった実験である。最初の実験は丸太を想定した鉛筆状の100本の木片を流しただけであり、デザイン検討委員会で「流木には根も葉もついている」と委員から指摘されたことで、二度目の実験では100本の「鉛筆」の片側におもりを付け、半ば沈めた状態で流しているに過ぎない。
こうした実験の詳細をみれば、認定庁の認識は起業者の主張に沿ったきわめてノー天気な希望でしかない。
先の浅野川洪水(2008.7.28)で大量の土砂と流木が発生した。数千トンの流木、1万立方メートルの土砂(石)が下流に散乱・堆積したが、これらは集中豪雨によって短時間に発生したことを考えると、水理模型実験で鉛筆状の棒を100本流して穴の閉塞がなかったという起業者の説明をそのまま是認した事業認定庁の判断の間違いは明らかである。
辰巳ダム上流部に開けられた 2.9×2.9m の二つの穴に数千トンの流木、1万立方メートルの土砂(石)が押し寄せたとき何が起きるか、常識の目を持ってすれば明瞭である。
万一こうしたことが発生したとき、辰巳ダムは常用吐口のない湛水ダムに変わり、その水位は次第に上昇し、非常吐口から河川水が土砂まじりとなって自然放流となる。水深50m下の流木、土砂(石)の除去も重い課題になり、長期間にわたって犀川は異常な河川となる。起業者が口癖のようにいう「穴あきダムは環境に優しい」とは似ても似つかぬもので「危険な穴あきダム」と変貌する。ちなみに島根県に完成している益田川ダムについて、島根県は「環境に優しい」という解説はまったく行っていない。
穴あきダムが本質的に持っている欠陥や危険性を検討していない辰巳ダム計画は、撤回以外あり得ない。

4.超大規模地すべり地と辰巳ダムの費用について
辰巳ダムデザイン検討委員会で、穴あきダムと流木が議論になり、玉井委員長は「上流での対策を検討すべき」と答えている。前項でも指摘したが、流木、土砂(石)の発生の危険性は避けられず、斜面整備や地すべり対策費用はかなりの高額となる。
意見対照表によれば、認定庁は「本件事業案は、必要と判断された地すべり対策、流木対策に要する費用が計上されたうえで複数の代替案と比較検討されており、社会的、技術的、経済的な面を総合的に勘案した結果、本件事業案が最も合理的であると認められる。」と述べているが、地滑りについての起業者の資料をみると、「必要と判断された地すべり対策、流木対策に要する費用」以外の部分こそが必要な対策である。つまり先の浅野川洪水では想定を越えて発生した土砂(石)、流木の発生に対して石川県は特に集中豪雨を念頭に水害対策を見直すことを表明していることから、今回の辰巳ダム事業で決められた費用以外のものが辰巳ダム建設費用と不可分のものとして上乗せされる。こうして考えると、辰巳ダムの工事費は今後、追加が繰り返され、2倍とか3倍、それ以上になる可能性がある。
したがって「辰巳ダム建設が一番安上がりだ」として計画を諮問した委員会、また計画を決定した県の判断に重大な過失があると認められる。

                                            以  上


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