新潟・福井水害を考える――


2004.11..21 掲載


新潟(長岡市、中之島町、三条市等)へ行って来た

 今回の水害は、信濃川の2つの支川が氾濫を起こし、最近ではめずらしく「逃げ遅れて溺死」という「古典的水害犠牲者」を出した。それも多くは一人暮らしの老人だった。悲惨としか言いようがない。――合掌。
 8月31日、土木学会が北陸豪雨災害緊急調査団速報会を行うので、これを傍聴するのとあわせて、新潟の災害現場を視察するため、中 登史紀氏と共に行って来た。
 現地では、関係NPOの方々の道案内をいただき、決壊堤防〜上流ダム群まで効率的に見ることができた。
 現在、資料や写真などを整理中。堤防問題や河川整備、ダムと水害について問題を深めることができた。
 以下、新潟視察を終えた感想(後日、資料や写真と一緒にまとめたい)。

(1) 土木専門家への疑問
 
《解析結果について》
 調査団の速報会で、団長(玉井信行金沢大学教授)が、「栃尾市のアメダスのデータから解析すると、今回の降雨は 500年 に一度の大雨になる」と発言。たった1地点の24年間のデータからこう言う。解析誤差や1地点のデータから解析した意味について十分な説明なしに発表するから、案の定、翌日の新聞で、この数字が一人歩きしていた。毎日新聞では「763年に一度の大雨」とも報道。
 技術者ならば、複数の観測地点のデータも同時に解析し、流域全体の降雨を把握しなければいけないだろうし、河川へ流出する量との関係も明らかにすべきだったと思う。わずか一箇所のデータから推定して発表するなど、「解析マニア」の世界だなあと感じる。また、解析結果の数字はその誤差とともに別の反証(歴史資料等)を収集し、総合的判断が必要だと思うのだ。速報会とはいえ、専門家のデータの処理と発表の仕方に疑問が残る。相手は素人なのだ。

 《安全度について》
 氾濫河川の現状の整備水準(安全度)について質問が出た。団長の説明は曖昧模糊。不十分でよくわからない。今回の水害地域の上流に3つのダムがあり、治水安全度は全国水準にあってもおかしくない。それぞれのダム建設計画で治水安全度が記載されているにもかかわらず、はっきり言わない。たぶん行政からの聞き取りだけで、第一次資料を確認していないのではないだろうか。それともはっきり言えない事情があるのだろうか。
 現状の河川整備水準と出水量の比較が、今後の整備方針を作る上で欠かせないデータだと思うのだ。多くの「専門家」が現地を訪ね、速報会と銘打ったわりには、基礎データの収集がおろそかになっているのではと思った。

(2) 堤防について
 @ 聞き取りやデータを集めて確認できたことは、堤防の破壊は、越流が始まって3〜5分で起きていた。これまで堤防の越流前に破堤が起きたのではないかという疑問が出されていたが、現地で調べたかぎりは、越流のあと破堤が起きていた。
 A 刈谷田川の破堤は、新しい堤防が崩れている。連続した古い堤防は見るからに細く、民家側は空石で組んであったが安全で、その10mほど下流が破堤している。古来からの堤防の構造に興味がある。
 B 堤防は高くすればいい、ってものではない。堤防の規格は土盛り+提体材料は現地調達である。法面などの工夫はあるが、基本は土。高くすれば河道洗掘や堤防の根崩れ、パイピング、ボイリングなど様々な破堤原因を作るようである。
 C 堤防はその地域の治水についての歴史が刻まれている。広範囲に様々な形と構造があり、強弱様々である。洪水はその一番弱いところを突いてくる。

参考資料などを紹介しておきます。《順次掲載》
◆新潟の決壊堤防の上で考えた(資料・写真 整理中)
◆土木学会が北陸豪雨災害緊急調査団速報会
◆当日発表したパワーポイント資料
◆毎日新聞記事(763年に一度の大雨?)
◆東北大学災害制御研究センター(資料と写真など)
◆新潟・福井水害は原発が引き金だった?(なるほど納得!中さんのHP)
  ――原発が新潟・福井豪雨の原因か?(その1)
  ――原発が新潟・福井豪雨の原因か?(その2)

マスコミが伝えた新潟・福井水害
   【◆新潟日報の災害特集へ】  【◆福井新聞の水害特集へ】
新潟・岡本芳美先生からレポート「七・一三水害を考える」